2013 Fiscal Year Annual Research Report
緩和ケアの新たな展望へ向けた研究:診療ガイドラインと患者の価値観・QOLの課題
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24390128
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 貴久子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70464229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 健夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70217933)
鈴鴨 よしみ 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60362472)
下妻 晃二郎 立命館大学, 生命科学部, 教授 (00248254)
大住 省三 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター), その他部局等, その他 (20416473)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 緩和医療(ケア) / QOL / 患者中心の医療 / 診療ガイドライン / ランダム化比較試験 / EORTC QLQ-C15-PAL / インタビュー調査 / 患者の価値観 |
Research Abstract |
緩和ケアは、がんの診断時から終末期まで必要である。本研究では、通常のがん治療の段階から終末期まで、患者の価値観を尊重する緩和ケア的な視点で、次の課題に量的・質的研究方法を用いてアプローチしている。 1.大腸がんステージIVで化学療法中の患者を対象にインタビュー調査を実施し、32名分のデータを収集した。今後これ以上インタビューを続けても新たな知見は見つからない(理論的飽和)と考えらえる。継続比較法を用いて分析中である。本調査によって、分子標的薬などの開発による患者の長期生存に伴った生活上の問題点抽出と、その対策を具体的に検討する。 2.各種がんの診療ガイドラインは、患者中心の医療を実現するのに十分な情報をどの程度含んでいるのか、文献調査中である。質的データ支援ソフトを用いた内容分析を実施している。緩和ケア患者が必要としている情報のあり方を検討する。 3.がん治療診療ガイドライン作成に関わる問題点について、作成者へのインタビューを継続している。 4.緩和ケアは患者のQOLをどの程度改善しえるのかについて、多施設共同臨床研究を実施する。終末期の倦怠感治療にステロイドが有効であるのか、「進行がん患者に対するステロイド投与の倦怠感とQOLへの影響に関する多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化臨床試験無作為抽出臨床試験」のプロトコル作成した(UMIN000011913 )。 本研究の参加者は終末期患者であるため、倫理委員会を協議を重ね、登録の妥当性を諮る体制を整えた。データセンターと事務局の機能を整え、試験薬の準備を終えた。今後、施設ごとの倫理委員会から承認を得た病院から調査を開始する。緩和ケア用に開発されたQOL評価票(EORTC QLQ-C15-PAL)を用いる。本研究の実施により、わが国で緩和ケアを受けずに死亡する患者たちにも、倦怠感治療を可能にする質の高いエビデンスを提供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
終末期患者を対象とした臨床研究であることから、倫理委員会の協力を得て問題点を慎重に協議した結果、当初の予定より進捗がやや遅れている。 通常のランダム化比較試験では、試験の質担保のため設置される独立データモニタリング委員会がある。本研究では、その独立データモニタリング委員会に加えて、患者登録の適格性を担保する目的で「独立登録監査委員会」を設置することとした。緩和ケア臨床研究では本研究が独自に考案したシステムである。現在、その連絡方法等の運用システムをテスト中である。このシステムが有効であれば、副次的にではあるが、今後の緩和ケア患者を対象とした臨床研究のモデルとなることが期待される。 ほか、大腸がん患者のインタビュー調査は、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸がんインタビュー調査は、データ収集を終了した。継続比較法を用いて分析の精度を上げ、トライアンギュレーション(結果について、分析者と研究関係者を交えた、分析過程と結果についての検討)を実施する。 多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化臨床試験無作為抽出臨床試験は、参加者への保護を倫理面から検討する。通常のRCT(ランダム化臨床試験)より倫理的配慮をさらに充実しつつも、いかに的確にデータを収集するかについて継続的に検討を進める。協力病院施設の倫理員会から承認後、調査を実施する。調査開始後も定期的に「独立登録監査委員会」のあり方、有用性とその運用方法を、倫理委員会の協力を得て見直すこととする。 診療ガイドラインに関する調査は、計画通りに内容分析とインタビュー調査を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臨床研究を当初の計画より、エビデンスレベルをより高い研究デザインに変更し、多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化臨床試験無作為抽出臨床試験とした。そのことから、終末期患者の自律的な参加の適切性を担保する必要が生じ、前述のように新たな体制(独立登録監査委員会)を構築する必要が生じた。研究計画がやや遅れ、20施設での研究実施にともなう経費が次年度以降へ積算されたことで、助成金が繰り越された。 臨床研究が開始すると同時に、データセンター運営費用、事務局運用費用、会議費、試験薬の送料、独立登録監査委員会の連絡費が必要となる。
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Research Products
(9 results)