2013 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者による医療の選択と意思決定を支える体制の構築に関する研究
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24390135
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
高橋 龍太郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 副所長 (20150881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
会田 薫子 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (40507810)
鶴若 麻理 聖路加国際大学, 看護学部, 准教授 (90386665)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 事前ケア計画 / 自己決定 / 終末期医療・ケア / 高齢者医療 |
Research Abstract |
平成24年に実施した外来患者調査(N=968)では、93.9%が「延命を希望しない」と回答したが、その背景要因は多様である可能性が示唆された。二者択一で残された「終末期医療の希望」を実践的に生かすには限界があると考察できた。同じ調査で、終末期医療の希望を家族や友人と会話したことがある人は49.0%、記録として残している人は13.4%であった。「会話有り記録無し」よりも、「会話記録あり」の方が、終末期の代理決定者を決めている割合が高かった(オッズ比2.41)。終末期医療の希望を書き残す行為は、認知機能が低下した時に「望む生活をしたい」という主体性の主張より、「迷惑をかけたくない」という重要他者への配慮が強く働いている可能性を示したと考える。 これらの傾向を踏まえ、我々は「ライフデザインノート」を作成し、希望を反映した終末期医療やケアを提供するための仕組みづくりに向けた実践的介入研究を行った。地域医師会会員の外来患者114名を対象とし、ライフデザインノートを配布する介入群(53名)、配布しない統制群(61名:倫理的配慮により、研究終了後ノートを配布した)とに割り付け、前後で参加者の認識を比較した。介入群では16名が脱落し、研究完了者は37名、統制群では59名となった。介入群において、脱落16名と完了37名とを比較すると、脱落者で、低学歴、終末期に関する家族との会話回避が強く表れていた。これらが研究中断に関連した可能性が示唆された。脱落者が多かったため、介入群と統制群をそれぞれ前後の変化を比較した。介入群の結果をみると、家族との会話に対する認識は否定的な方向に変化し、伝達の困難感を高める結果となった(p<0.05)。7割が「終末期の希望の整理に有用」と評価したものの、終末期医療の希望を実際に記入したのは半数に留まり、検討項目をノートによって示すことによる記録促進の限界が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、ライフデザインノートを用いた実践的介入研究の遂行が中心であり、参加者への影響評価については、おおむね達成できた。今後残されている課題は以下の通りである。 まず、地域医療におけるAdvance Care Planning定着に向けた仕組みづくりである。そのためには、記入する側と活用する側の両者の視点からの分析が必要である。記入者側の視点として、ライフデザインノート記入に伴う障壁を明らかにする必要がある。事前に希望を書き残すための書式を提示するだけでは、記録を促すのに不十分ということが明らかになった。記録促進要因の明確化、記録以外の伝達方法の活用の検討が必要とされる。 活用する側の視点として、医療者の現状認識について情報収集が必要である。問題意識を共有できる可能性の高いと考えられるライフデザインノート研究参加者募集に協力した17機関(全会員数379機関)から、活用の必要性や有効活用するための困難等について情報収集が必要と考える。 また、緩和ケア病棟におけるAdvance Care Planning導入に向けた取り組みである。現在、緩和ケア病棟スタッフによる事例検討を継続している。本人や家族の希望を聞き取り、希望を反映したケア実現に向けた取り組みについて、個別事例で検討している。その中から、入院病棟で可能なAdvance Care Planningを導入する体制について検討することが必要と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、残された課題を検討するため、①研究参加者を対象としたインタビュー調査、②研究協力医師を対象としたインタビュー調査、③緩和ケア病棟入院患者に関する事例検討の3点に焦点を当て、取り組む。 ①については、研究参加者の中からインタビュー協力同意者を募集する。個別インタビューは、調査者2名がインタビューガイドに沿って、ライフデザインノートを記入するにあたり感じたこと、書き残すことについての思いなどを語ってもらう(約1時間)。グループインタビューは、調査者2名、参加者6名程度を1グループとし、同様の内容で語ってもらう(約2時間)。グループダイナミクスによる相互作用を活用して、課題を焦点化させる目的で行う。これらの結果から、「思いを記述する」ことに伴う障壁を明らかにし、仕組みづくりへと反映させる。 ②については、研究参加者募集に協力した医師の中から、インタビュー協力同意者を募集する。調査者2名が訪問し、インタビューガイドに沿って、地域医療におけるAdvance Care Planning活用の可能性と課題について語ってもらう。この結果から、ライフデザインノート活用の仕組みづくりに反映させると共に、地域医療への実践的活用に向けた取り組みに発展させたい。 ③については、これまで同様、個別事例の検討を通じ、入院医療における体制上のAdvance Care Planningの導入の仕組みを考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に実施した介入研究において、ライフデザインノートへの記録には心理的障壁の存在が示唆された。記録を躊躇させる要因を探索するため、個別インタビューを追加した。今回の参加者からインタビュー参加者を募集し、実施する。インタビュー記録から、ノート未記入の背景要因分析によって、ノート記入への障壁を逓減させ、将来の終末期医療の方針決定に自ら関与することの意義を実感することができるプログラム内容を検討する。 インタビューテープ起こし委託費(40名分×2時間)、インタビュー準備と運営等人件費(\9600×120人日)、インタビュー実施のための諸経費(通信費等)、印刷費、研究会会議費用、研究協力謝金、研究成果発表のための海外旅費・学会参加費
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Research Products
(5 results)