2013 Fiscal Year Annual Research Report
難治性がん疼痛の概日変動メカニズムを基盤にした鎮痛標的分子の探索
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24390149
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小柳 悟 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60330932)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生体リズム / 概日時計 / 神経障害疼痛 / アストロサイト |
Research Abstract |
前年度(平成24年度)までの研究において、神経障害痛の概日リズムは神経およびグリア細胞レベルにおいて生じていることを明らかとし、その制御因子として副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)が重要な役割を担っていることを見出していた。また、マイクロアレイによる解析の結果、グルココルチコイドによる神経障害痛の概日リズム制御はステロイド応答性のリン酸化酵素を介して引き起こされていることを明らかにし、本リン酸化酵素活性を阻害することで神経障害痛の概日変動がなくなることを示唆する所見を得た。そこで、当該年度は以下の2項目を達成するための検討を進めた。 (1)標的分子の活性を阻害するシーズ化合物の同定 (2)標的分子の阻害剤を疼痛患部へ集積させるDDSの開発 データベースを検索した結果、神経障害痛の概日リズム形成を担うステロイド応答性リン酸化酵素には既存の阻害剤が存在することが分かった。そこで、本阻害剤を神経障害痛が発症したマウスに投与したところ、疼痛の一時的な緩和が認められた。また、脊髄後角を対象として免疫組織染色によって、本酵素は神経細胞よりもアストロサイトに高発現していることが明らかになった。一方、平成24年度における研究成果から「同定したステロイド応答性のリン酸化酵素が神経障害痛に関わるどの分子をリン酸化しているのか」という新たな課題も出現していた。そこで、上記検討項目に加え、質量分析法によって「ステロイド応答性のリン酸化酵素の基質タンパク質の同定」も試みたが、その基質は同定できたものの、神経障害痛と関連あるタンパクの同定には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、平成24年度まで以下の項目(1)~(3)を、平成25~26年度までに項目(4)~(5)の実施を計画しており、平成25年度においては、項目(4)~(5)を達成するための基盤となるデータを得ることができた。 (1) がんによる神経障害痛の概日リズム形成部位・細胞の特定 (2) 体内時計(時計遺伝子)と神経障害痛をつなぐ分子を同定 (3) 上記分子の治療標的としての評価 (4) 標的分子の活性を阻害するシーズ化合物の同定 (5) 標的分子の阻害剤を疼痛患部へ集積させるDDSの開発.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度(平成25年)までの研究によって、神経障害痛の概日リズムは脊髄アストロサイトに発現するグルココルチコイド応答性リン酸化酵素を介して引き起こされることを明らかにしたが、本酵素の活性を充分に阻害できる有効な低分子化合物の同定までには至ってない。従って、平成26年度も引き続き標的分子の活性を阻害する化合物の同定を行っていくとともに、アストロサイトへの薬物の移行を促すドラックデリバリーシステム(DDS)の開発にも取り組む予定である。 低分子化合物の同定については、標的分子の活性を定量化できるin vitro評価系を構築し、化合物ライブラリーを利用することで、より広範な化合物のスクリーニングを行う。また、アストロサイトに対するDDSの開発については、細胞膜上に発現する分子を選択的に認識できるペプチドまたは抗体を探索・作成し、リポソームの表面に標識した輸送担体の作成を試みる。最終的には同定した低分子化合物を作成したアストロサイトを標的とするリポソーム製剤内に封入し、神経障害疼痛を発症したマウスに投与することで、その効果を検証する。 一方、平成25年度までの研究において、グルココルチコイド応答性リン酸化酵素の活性化はアストロサイトから疼痛を誘発する生理活性物質の遊離を促進することを見出した。そこで、メタボローム解析によって本低分子の同定を行い、アストロサイトから遊離における概日変動と障害を受けた神経細胞に対する作用機序についても検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度実地予定であった標的分子の阻害剤のスクリーニングが、データベースを検索することで簡便に行えたことから、実験試薬・器具の使用を削減することができた。その分の予算をアストロサイトから遊離される発痛物質の同定に割り振り、メタボローム解析を行った。本解析が受託機関に委託して行っているが予備検討に時間を要し、年度内で完了していない状況である(現在も実施中)。 次年度使用額として約100万円の予算が生じた。この使用計画としては、化合物ライブラリーを利用した標的分子の阻害剤のスクリーニングのため、ハイスループットが可能な評価系の確立とそれに必要な試薬・器具の購入を行う(約60万円)。また、メタボローム解析の委託費用として40万円を予定している。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] The intrinsic microglial molecular clock controls synaptic strength via the circadian expression of cathepsin S2013
Author(s)
Hayashi Y, Koyanagi S, Kusunose N, Okada R, Wu Z, Tozaki-Saitoh H, Ukai K, Kohsaka S, Inoue K, Ohdo S, Nakanishi H
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 3:2774
Pages: 1-7
DOI
Peer Reviewed
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