2014 Fiscal Year Annual Research Report
新しい血圧脈波検査を用いた末梢動脈疾患に関する疫学研究
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24390171
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
若林 一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70220829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東山 綾 独立行政法人国立循環器病研究センター・研究開発基盤センター, 医学部, 室長 (20533003)
丸茂 幹雄 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40333950)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 末梢動脈疾患 / 動脈硬化 / 糖尿病 / 血中脂質異常 / 疫学 / リスク要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は4年計画で実施する末梢動脈疾患に関する疫学研究であり、その3年目である今年度には、継続して兵庫県篠山市における疫学調査を行い、平成26年度には808名が参加した。本研究におけるこれまでの調査結果では、ankle brachial systolic pressure index (ABI) の測定により診断した末梢動脈疾患 (ABI: 0.9未満) の有病率は0.5%で、境界域患者 (ABI: 0.9以上1.0未満) の割合は5.0%であった。そして、運動負荷前には正常であったABIが運動負荷により1.0未満を示した、いわゆる潜在性末梢動脈疾患の患者割合は9.9%であった。一方、昨年度に末梢動脈疾患の予知因子として報告したLAP (lipid accumulation product) に代わる新しい予知因子として、今年度の研究によりCMI (cardiometabolic index) を提唱した(Clin Chim Acta 2015; 438: 274-278)。これは腹囲-身長比と中性脂肪-HDLコレステロール比との積で計算される。そこで、昨年度から山形済生病院の協力のもとで開始した臨床疫学研究において、末梢動脈疾患患者を対象にCMIとABIとの関連性を検討した。CMIはトレッドミルによる運動負荷後のABIの低下率や頸動脈の内膜中膜肥厚度と有意な関連性を示し、この関係は年齢、性、飲酒歴、喫煙歴、糖尿病の有無とは独立して認められた。一方、LAPとトレッドミルによる運動負荷後のABI低下率や頸動脈の内膜中膜肥厚度との関連性はCMIの場合に比べて弱かった(Clin Chim Acta 印刷中)。そこで、今回我々が提唱した新しい動脈硬化指標であるCMIは末梢動脈疾患患者の予知因子として有用であることが期待される。今後、一般住民対象にした疫学研究および糖尿病患者を対象にした臨床研究においてCMIの有用性をさらに検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心となる一般住民を対象にした疫学調査は今年度で3年目を無事終了し、住民に返却する基本データについてはすでに測定を終えてデータベース化されている。今年度には新たな動脈硬化の予知マーカーであるCMIを考案し、末梢動脈疾患での運動負荷時の下肢血流低下率との関連性を検討したところ、有意な関連性を認め、前年度に報告したLAPよりも優れたマーカーと考えられた。このように新規のマーカーを開発できた意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、今年度に提案した動脈硬化進展度の予知因子であるCMIについて、一般住民および糖尿病患者における末梢動脈疾患との関連性を検討する。さらに、これまでに蓄積した血液検体を用いて、末梢動脈硬化疾患と関連する他の分子マーカーを探索する。次年度は本研究の最終年度にあたり、これまで一般住民対象に実施してきた疫学調査のデータを総括する予定である。
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Causes of Carryover |
一般に疫学研究では対象者の血液・尿検体を採取後ただちに凍結保存する。対象者や患者に結果を速やかに返却すべき特定検査項目以外の研究用の特殊検査項目については、検体を継続的に採取・保存し、それらをまとめて同時に測定する。そのため、想定していたよりも測定回数が少なくなり、次年度使用額が生じた。これは測定間誤差を少なくするために必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究では異なる3つのコホートを用いて研究を進めているが、末梢動脈疾患の予知因子候補の分子マーカーについては、これまでに蓄積した研究対象者の検体を次年度に一括して測定する予定である。
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Research Products
(3 results)