2015 Fiscal Year Annual Research Report
血小板細胞の構成論的理解による心筋梗塞発症メカニズムの理解と制御法の開発
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24390202
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
後藤 信哉 東海大学, 医学部, 教授 (50225653)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血小板 / 心筋梗塞 / 血栓 / 抗血小板薬 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には、von Willebrand因子(VWF)と血小板膜糖蛋白GPIbαの結合構造予測計算が進展した。両分子はリストセチンの存在下など特殊な条件においてのみ安定するため、X線構造解析などの手法では結合構造の予測は困難であった。平成27年度には水分子存在下のVWF/GPIbα wild-typeの接着構造を予測した。さらに、臨床的にvon Willebrand病として表現型の知られているVWFのG561A, C509R, R552A mutantとGPIbαの接着構造を動的、三次元的に予測した。また、血小板型von Willebrand病として知られるGPIbαのG233V mutantとVWFの接着構造予測にも成功した。両分子の重心間距離を固定してもG233V mutantでは、計算時間の延長とともに両分子が解離した。von Willebrand病の分子を用いて水溶性構造と接着構造を予測する計算は予定通りに遂行した。 血小板細胞と凝固系の相互作用の流体モデルに線溶系を組み込んだ。8ノードのスーパーコンピューターを用いて、血流、血小板細胞活性化速度、凝固系の活性化速度、線溶速度などのパラメーターを変化させた計算を施行した。血栓のサイズを規定する因子として血流の寄与が大きいことを示した。血流速度が遅い条件では血栓のサイズは線溶速度に依存することを示した。 Flow chamberを用いた実証的研究により、血小板細胞の活性化を阻害した条件では、VWFに接着した血小板細胞は流体力により受動的に変形し、偽足を形成することを示した。偽足長と流速の間には正の相関関係があることを示した。 エネルギー代謝とシグナル伝達を組み込んだ血小板細胞の周囲の流体条件を移流拡散として組み込んだ。活性化した血小板細胞の下流の血小板細胞における活性化の増強を構成論的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度には、スーパーコンピューターを用いたvon Willebrand因子(VWF)と血小板膜糖蛋白GPIbαの結合構造予測計算を、臨床的にvon Willebrand病として知られているVWFのG561A, C509R, R552A mutantおよび血小板型von Willebrand病として知られるGPIbαのG233V mutantとVWFの接着構造予測にも成功した。VWFとGPIbαの接着構造に関する計算予測は当初の予定通りに進展した。本計算に加えて、血小板細胞活性化後の接着に重要な役割を演じる血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIaとリガンドの結合構造予測にも、われわれのCHARMM22とNAMDを用いた分子動力学計算を応用し、予備的な結果を得た。分子動力学計算において、当初の計画以上の成果をあげることが可能であった。 従来、パーソナルコンピューターにて施行していた血小板細胞と凝固系の連携計算モデルを、8ノードのスパコンに移植することに成功した。同時にモデルに線溶系を組み込んだ。当初、血小板と凝固系の相互作用を表現するモデルとしてスタートした本プロジェクトに線溶系を取り込むことに成功した部分が予想外の進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では血小板細胞の構成論的理解による心筋梗塞発症メカニズムの理解と制御法の開発を目指す。血小板細胞の整理機能のうち、流体下の接着にはvon Willebrand因子(VWF)と血小板膜糖蛋白GPIbαの相互作用が必須の役割を演じることを既に生物学的には明らかにして来た。本研究では、VWFとGPIbαの接着部位のアミノ酸配列と各アミノ酸を構成する原子の力学的性質から構成論的に単一のVWF分子と単一のGPIbα原子の接着力の理解を可能とした。VWFに接着する血小板細胞の形態に着目し、血小板細胞の活性化を阻害した条件における偽足を介した血小板細胞接着モデルも作成したので、今後の研究により単一の血小板細胞を支える分子数を明らかにすることを目指す。 心筋梗塞の発症はアスピリン、クロピドグレルなどの抗血小板薬により予防が可能である。アスピリンはシクロオキシゲナーゼ-1、クロピドグレルはP2Y12 ADP受容体の選択的阻害薬である。血小板細胞活性化阻害と心筋梗塞発症予防を直結させる論理は確立されていない。GPIIb/IIIa受容体阻害薬など一部の抗血小板薬では出血リスクとのバランスを見出せなかった。血栓形成の数理モデルを出血モデル、血栓モデルの両者として今後作成する必要がある。 血小板細胞活性化は、血小板細胞の形態変化、生理活性物質の局所放出、膜糖蛋白GPIIb/IIIaの構造変、細胞膜の脂質構成の変化などに還元できる。血小板細胞活性化を分子スケールから細胞スケールに再構成する論理を確立できれば、分子への介入の細胞スケールにおける結果として予想できる。生理現象を定量化し、各ステップを数理モデル化する方向性も必要である。
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Causes of Carryover |
研究においては常に効率性を追求している。消耗品などの購入にあたって冗費の節減に努力した。今後も最小限の経費にて効率的な研究遂行を考えたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度を迎えるので論文の公表を積極化したい。
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[Journal Article] Ischaemic risk and efficacy of ticagrelor in relation to time from P2Y12 inhibitor withdrawal in patients with prior myocardial infarction: insights from PEGASUS-TIMI 542015
Author(s)
Bonaca, M. P. Bhatt, D. L. Steg, P. G. Storey, R. F. Cohen, M. Im, K. Oude Ophuis, T. Budaj, A. Goto, S. Lopez-Sendon, J. Diaz, R. Dalby, A. Van de Werf, F. Ardissino, D. Montalescot, G. Aylward, P. Magnani, G. Jensen, E. C. Held, P. Braunwald, E. Sabatine, M. S.
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Journal Title
Eur Heart J
Volume: in press
Pages: in pres
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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