2013 Fiscal Year Annual Research Report
再生不良性貧血におけるゲノム異常を利用した造血抑制因子の同定
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24390243
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 教授 (70217660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤塚 美樹 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (70333391)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生不良性貧血 / SLIT1 / CD109 / HLA-B*40:02 / 細胞傷害性T細胞 / HLA-Aアレル欠失血球 |
Research Abstract |
平成25年度の研究により以下の研究成果が得られるとともに問題点が明らかになった。 ①SLIT1変異蛋白の作製と造血系への影響 再生不良性貧血(再不貧)患者の顆粒球で同定されたSLIT1の体細胞変異配列に基づき、変異配列を持つcDNAをCHO細胞に導入し、変異蛋白を分泌するtransfectantを作製した。ただ、分泌効率が低いため、K562細胞に対する影響をみるために必要な蛋白の入手には至っていない。現在Hela細胞などの他の細胞での変異蛋白産生を試みている。 ②CD109ノックアウト(KO)マウスにおけるTGF-βの造血への影響の検討 名古屋大学よりCD109KOマウスの凍結胚を受領し、融解・移植によりヘテロの生体を得た。現在交配によるKOマウスを作製中である。予備実験として、CD109ヘテロ接合体B6マウス骨髄を対象に造血前駆細胞サブセットの解析を開始している。 ③HLA-B*40:02陽性造血幹細胞を特異的に傷害する細胞傷害性T細胞(CTL)の単離 研究分担者の藤田保健衛生大学赤塚准教授との共同研究により、HLA-B*40:02領域のLOHを来している再不貧患者のT細胞から、HLA-B*40:02導入K562細胞を特異的に傷害するCTLを単離した。 ④新規再不貧患者におけるHLA-Aアレル欠失血球の検出頻度と血球系統の分布 凍結・解凍した単球を対象としてHLA-Aアレル血球を高感度で検出する系を確立し、これを用いて200例以上の再不貧患者をスクリーニングすることにより、診断時の再不貧症例の約20%、未治療例の30%にHLA-Aアレル血球が検出されることを明らかにした。また、HLA-Aアレル欠失血球を認める血球は必ずしも造血細胞ではないことから、CTLは再不貧の発症に関与してはいるものの、造血を抑制する直接なエフェクターではないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.SLIT変異配列を持つ変異蛋白の作製に成功し、機能解析を準備している。 2.CD109ノックアウトマウス(ヘテロ接合体)の移譲を受け、ホモ接合体の準備が進んでいる。 3.HLA-B*40:02導入K562細胞に特異的なCTLクローンを、HLA-B*40:02欠失血球を有する再生不良性貧血患者の末梢血から単離することに成功した。 4.少数のHLA-Aアレル欠失血球を検出できるフローサイトメトリー法を確立し、診断時の再生不良性貧血におけるHLA-Aアレル欠失血球陽性例の割合を決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.変異Slit1蛋白を効率よく産生する系を確立し、Slit1で本来みられるK562の抑制作用が変異Slit1蛋白では減弱・消失していることを証明する。 2 CD109KOマウスにおける骨髄造血前駆細胞のフェノタイプを野生型と比較すると共に、TGF-βのin vivo投与の影響を検討する。 3.K562 cDNAとHLA-B*40:02を導入したCOS7を標的としてCTLクローンをスクリーニングすることにより、CTLの標的抗原を同定する。 4.診断後間もない再生不良性貧血症例をさらに解析し、HLA-Aアレル欠失血球と免疫抑制療法に対する反応性との関係を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、再生不良性患者から得られたHLA-B*40:02拘束性に造血幹細胞を傷害するCTLをクローン化後、これをプローブにしてcDNAライブラリをスクリーニングし、造血幹細胞抗原を同定することを目標としている。2012年度にすでにこの様なCTLのクローン化に成功していたが、長期にわたって免疫抑制剤を服用していた患者から得られたリンパ球であったため増殖が不良で、ライブラリのスクリーニングを完遂するのに必要な細胞数が得られなかった。このため2013年度は別の症例から同じくB*40:02拘束性のCTLをクローニングすることに徹し、必要経費として計上したcDNAライブラリ作成キット(有効期限が短い)の購入を見送らざるを得なかった。 予定額の執行ができなかった未使用金は、次年度にライブラリ作成、スクリーニング費用として執行する。
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