2013 Fiscal Year Annual Research Report
自己抗体産生を抑制するEgr2発現制御性T細胞のマウス,ヒト双方向性の解析
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24390252
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤尾 圭志 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70401114)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / 免疫抑制療法 / サイトカイン / 自己反応性B細胞 |
Research Abstract |
本研究ではCD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞(LAG3Treg)に関して、(1) LAG3Treg機能に重要なEgr2誘導機構、(2) LAG3Tregの抗体産生抑制機構、(3) ヒトLAG3Tregの機能、の解析を目的としている。今年度は LAG3Tregの抗体産生抑制機構を担う抑制性サイトカインTGF-beta3を同定することができた。これまでB細胞を抑制するサイトカインとしてはTGF-beta1がほぼ唯一知られていた。しかしTGF-beta1の産生細胞CD4陽性CD25陽性制御性T細胞(CD25Treg)は中等量のTGF-beta1しか産生せず、CD25TregによるB細胞機能抑制時にはTGF-beta1はあまり関与しておらず、TGF-beta1とB細胞抑制の関連ははっきりしていなかった。我々は、LAG3Tregが大量のTGF-beta3を産生し、TGF-beta3が強力にB細胞の分裂、活性化、抗体産生を抑制することを見出した。TGF-beta3はB細胞シグナルにおいて、Syk, STAT6, NF-kBのリン酸化を阻害した。またLAG3Tregによる生体内の抗体産生や、SLEモデルマウスの治療効果は抗TGF-beta3抗体によって阻害された。この結果は従来知られていたTGF-beta1以外に、TGF-beta3が強力なB細胞抑制能を発揮することを示し、LAG3TregがCD25TregよりもB細胞抑制能が強いことを説明する結果である。TGF-beta1は線維化を促進してしまう性質があり、このことが治療応用を妨げていたが、TGF-beta3は線維化抑制作用があり、TGF-beta1よりも治療応用しやすい可能性がある。今後LAG3TregのTGF-beta3産生機構を解明することで、自己抗体を介する自己免疫疾患の治療戦略が構築できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、B細胞を抑制するT細胞由来のサイトカインとして、これまで知られていなかったTGF-beta3を同定することができた。TGF-beta3のB細胞抑制能は非常に強力であり、この同定は自己抗体産生機構の解明に大きな手掛かりとなると考えられる。TGF-beta1はB細胞機能を抑制する一方で線維化を促進してしまう性質があり、このことが治療応用を妨げていた。ラット気道に投与した場合、TGF-beta1は肺線維化を誘導するのに対しTGF-beta3は線維化を誘導しないことが報告されている。またリコンビナントTGF-beta3の投与により皮膚の線維化が抑制できるなどの知見もあり、TGF-beta3に線維化抑制作用があることによりTGF-beta1よりも治療応用しやすい可能性がある。今後LAG3TregのTGF-beta3産生機構を解明すること、またTGF-beat3そのものの機能解析により、自己抗体を介する自己免疫疾患の治療戦略が構築できる可能性がある。従来TGF-betaファミリー分子の中で、TGF-beta1がT細胞が産生する優位なサイトカインだと考えられてきたが、今回の知見は実際にはTGF-beta3が有意である可能性を示唆している。このことは今後T細胞・B細胞の免疫応答を考える際にTGF-beat3を考慮することの重要性を示しており、適応免疫研究に与える影響は大きいことが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はLAG3TregによるTGF-beta3産生の分子機構を解明する。これまでの解析ではEgr2とFasがLAG3Tregの抗体産生抑制能に必須であり、Egr2とFasのTGF-beta3産生への関与を検討する。またLAG3Tregで発現量の高い転写因子の中から、TGF-beta3の転写そのものをコントロールしている転写因子の同定を試みる。これらの研究は生体内でTGF-beta3の産生を誘導する治療戦略の確立につながると考えられる。またTGF-beta3そのものによるSLEモデルマウスの治療が可能かどうか検討する。具体的にはMRL/lprマウスにTGF-beta3を発現するpCAGGSベクターを投与し、TGF-beta1と比較して治療効果を検討しつつ臓器の線維化が誘導されるかどうかについても評価する。さらにサイトカインそのものは半減期が短く治療応用しにくいことから、TGF-beat3をB細胞を標的として半減期が長くなるように修飾することによる創薬の妥当性を、マウスモデルで検討する。 すでにヒトにおいてもLAG3陽性で抗体産生を抑制する細胞集団を同定しているが、この細胞集団がTGF-beta3を産生するかどうか、産生するとすればその分子機構がマウスと同様かどうかを検討する。またヒトB細胞に対するヒトTGF-beat3の効果がマウスと同様かについても細胞内シグナルを含め評価する。
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[Journal Article] Transcription factor early growth response 3 is associated with the TGF-β1 expression and the regulatory activity of CD4-positive T cells in vivo.2013
Author(s)
Sumitomo S, Fujio K, Okamura T, Morita K, Ishigaki K, Suzukawa K, Kanaya K, Kondo K, Yamasoba T, Furukawa A, Kitahara N, Shoda H, Shibuya M, Okamoto A, Yamamoto K.
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Journal Title
J Immunol.
Volume: 191
Pages: 2351-2359
DOI
Peer Reviewed
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