2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24390256
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
原 博満 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20392079)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | インフルエンザ / 結核 / 自然免疫 / 骨髄系ITAM受容体 / CARD9 |
Research Abstract |
1. 結核認識受容体の解析 我々が同定した2つ(IgRMB1、IgRMB2) の結核菌を認識する新規にITAM-coupled 受容体に関して解析を行った。IgRMB1とIgRMB2のリガンドは結核菌抽出物の脂溶性の画分に存在し、IgRMB1は結核菌細胞壁の成分である遊離ミコール酸やトレハロース-2-ミコール酸TDMを認識するこ とを見いだした。一方、IgRMB2のリガンドとなる成分は少なくとも2つ存在することが判った。その内、1つに関しては質量解析、NMR解析によりこれま未同定の新規リン脂質である事を見いだした。様々なミコール酸含有脂質やミコール酸誘導体を用いて、IgRMB1が認識するリガンド構造を検討した結果、IgRMB1によるミコール酸の認識には分岐アルキル鎖と水酸基が必要であることが判った。また、マウスの腹腔マクロファージをin vitroのおいてミコール酸で刺激すると、サイトカン産生は殆ど誘導されないが、十分なケモカイン産生が誘導されることが判り、このケモカイン応答はIIgRMB1欠損マウス由来のマクロファージではほぼ完全に消失する事が判った。従って、IgRMB1が結核菌のミコール酸を認識する自然免疫受容体である事が明らかとなった。 2. インフルエンザ認識受容体の解析 我々が同定したインフルエンザウイルスを認識する新規にITAM-coupled 受容体であるIgRF1に関して解析を行った。IgRF1のリガンドとなるインフルエンザ成分の探索を行った所、IgRF1はインフルエンザウイルスのHAを直接認識している可能性が示唆された。また、IgRF1欠損マウスを用いたA/PR/8/34株感染実験を 行った結果、IgRF1欠損マウスは生存率が有意に改善し、肺組織の病理所見の改善および炎症サイトカイン産生の低下がみられた。従って、IgRF1を介した炎症応答は感染病態を悪化させると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結核認識受容体の研究に関しては、IgRMB1のリガンドとなる成分がミコール酸であることを同定し、その認識部位をある程度決定することができ、さらにIgRMB1KOマウス由来の細胞を解析する事により、この受容体が自然免疫によるミコール酸の認識と応答に必須の役割を演じていることも明らかにすることができた。この成果に関しては既に複数のが学術集会にて発表し、現在、論文の投稿の準備を進めている。IgRMB2のリガンドに関しては、一般に知られている主要な結核菌成分ではなかったもものの、2つのリガンドのうち一つに関してはシリカゲルカラムによる精製と質量分析およびNMR解析による構造解析により分子構造を同定するに至った。 インフルエンザ認識受容体の研究に関しては、IgRF1にリガンドとして認識とされるインフルエンザウイルスの成分の一つを同定したとともに、IgRF1欠損マウスを用いたインフルエンザ肺感染実験を複数回実施し、その結果、IgRF1マウスでは、コントロールマウスに比べ肺の炎症が軽減し症状が良くなることを新たに見いだした。この実験により、IgRF1を介した免疫応答のインフルエンザ感染における役割を示唆する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 結核認識受容体の解析 IgRMB1の解析:前年度までの解析により、IgRMB1が結核菌細胞壁の主成分であるミコール酸を認識することを明らかにした。結核菌の細胞壁にはミコール酸単体と共に様々なミコール酸含有糖脂質が存在し、これらの存在比は免疫応答に深く関わると報告されているため、本年度は、結核菌が産生しうる様々なミコール酸含有脂質に 対するIgRMB1の反応性の比較を、リポーター細胞あるいはIgRMB1欠損細胞/マウスを用いて行う。また、化学合成した各種改変ミコール酸を用いてIgRMB1が認識する最小構造を決定する。また、IgRMB1欠損マウスを用いた結核菌感染実験を行い、結核感染防御および病態形成における役割を明らかにする。 IgRMB2の解析:前年度までの研究において、結核菌の脂溶性画分に含まれるIgRMB2の2つのリガンドのうち1つは、これまでに報告の無いリン脂質であることが明らかにした。そこで本年度は、もう一方のリガンド候補の分子構造の決定を試みるとともに、IgRMB2欠損細胞/マウスを用いて、IgRMB2によるこれら認識を介した結核感染防御応答および病態形成における役割を明らかにする。 2. インフルエンザ認識受容体の解析 前年度までの研究により、IgRF1はインフルエンザウイルスのHAを直接認識している可能性が示唆された。そこで本年度は、HAが有するどの構造がIgRF1によっ て認識されるかの決定を試みる。また、前年度の研究においてIgRF1欠損マウスを用いたインフルエンザ感染実験を行った結果、IgRF1欠損マウスはマウスの生存率が有意に改善し、肺組織の病理所 見の改善および炎症サイトカイン産生の低下がみられた。従って本年度は、感染実験の再現性を確認するととも に、IgRF1欠損によって肺炎症が改善する原因を分子および細胞レベルで明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残金が今年度に使用する予定の試薬の購入費に少し満たなかったため、次年度の経費と合わせて購入することにしたため。 次年度の経費と合わせて、購入予定だった試薬の購入に使用する。
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Research Products
(6 results)