2013 Fiscal Year Annual Research Report
ランゲルハンス細胞が誘導する経皮液性免応答の制御機構
Project/Area Number |
24390277
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
永尾 圭介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40286521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 亮治 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70335256)
山上 淳 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80327618)
天谷 雅行 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90212563)
舩越 建 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80365353)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ランゲルハンス細胞 / 皮膚免疫 / 樹状細胞 / デスモグレイン / 自己免疫 / 免疫寛容 |
Research Abstract |
表皮唯一の樹状細胞・抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞(LC)のin vivoにおける機能は長年不明であったが、我々はLCが表皮タイトジャンクションから樹状突起を伸ばし、細菌由来毒素などの蛋白抗原に対して液性免疫応答を誘導することを明らかにしてきた。一方、LCの免疫寛容における役割も示唆されているが、明確なデータは未だ存在しない。この問題を明らかにするためには自己抗原とLCの役割を解析するのが適切と考えた。 本研究では表皮細胞接着因子であり、尋常性天疱瘡の自己抗原であるデスモグレイン3(Dsg3)を標的としたマウスの自己免疫疾患モデルを利用することとした。Dsg3のシステムは生理的に発現している自己抗原に対する反応であるため、自然な状態を作ることができる。 皮膚には現在のところ少なくとも3つの樹状細胞サブセットが存在するが、唯一表皮に存在するLCがDsg3と接触する機会がより多い。興味深いことに、表皮シートにてLCとDsg3を染色すると、Dsg3の断片がLC内に染色され、LCによるDsg3獲得が示唆された。これを裏付けるため、ケラチン5プロモーター下にDsg3-eGFPフュージョン蛋白をケラチノサイトに発現するマウス(Dsg3-eGFPマウス)を作成し、in vivoにおけるLCまたは真皮樹状細胞のDsg3-GFP取り込みを検討した。Dsg3-eGFPマウスでは表皮ケラチノサイトのみがeGFPを発現しているが、皮膚由来細胞をflow cytometryで解析したところ、LCのeGFP陽性が確認され、LCは周囲ケラチノサイトからDsg3-eGFPを取り込むことが確立された。LCによるDsg3獲得の免疫学的な機能解析を行うため、in vitro実験を行い、LCは抗原特異的にDsg3反応性CD4T細胞に抗原提示をしうることを明らかにした。また、培養液に抗MHC class II抗体を添加すると、CD4+ T細胞の増殖は阻止された。これらのことから、LCは周囲ケラチノサイトからDsg3を獲得し、MHC class IIの範疇にて抗原提示することが解った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はランゲルハンス細胞の自己抗原に対する免疫応答を明らかにすることであるが、目的の8割方達成しているものと思われる。ただし、当初液性免疫応答を会期予定であったが、ヘルパーT細胞ないし調節性T細胞の範疇で解析はすすんでおり、より重要で分子レベルにて理解を深められうる方向へ進んでいる。In vivoの実験系もデスモグレイン3に対する実験的な自己免疫皮膚炎であるExperimental autoimmune dermatitis (EAD)の系を確立し、ランゲルハンス細胞の非存在下でどのような反応になるかを解析出来れば本研究はほぼ完成する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に確立した系を利用し、下記の実験を予定している。 1)LCによるDsg3獲得の免疫学的な機能解析を行うため、in vitro実験系を利用する。野生型LC(周囲ケラチノサイトにDsg3あり)またはDsg3-/-マウス(周囲ケラチノサイトにDsg3なし)LCとDsg3特異的CD4+ T細胞を共培養し、T細胞の増殖能を評価した。野生型LCと共培養したDsg3特異的CD4+ T細胞は顕著な増殖を示した一方、Dsg3-/- LCと共培養したCD4+ T細胞はほとんど増殖をしなかった。また、H1の増殖は抗MHC II抗体で完全に抑制し得たことより、LCによるH1への抗原提示は抗原特異的で、MHC IIの範疇内で行われる。この新たに確立した系を用い、増殖したH1の表現型(effector vs regulatory T cell)を明らかにし、どのような機序でT細胞の増殖を促しているのかを明らかにしたい。 2)Dsg3に特異的なT細胞受容体を発現させたH1マウスの脾臓から採取したCD4陽性T細胞(Dsg3特異的)をRag2-/-マウスに移入することでマウスは皮膚炎を呈し、皮膚に浸潤したT細胞はケラチノサイトをアポトーシスに陥れる。我々はこのモデルをEADと称している。このシステムの優れたところは生理的な自己抗原に対して起きている自己免疫モデルであり、T細胞が関与するメカニズムがかなり明らかになっていることである。LCを恒久的に欠損するLangerin-DTAマウスをRag2-/-背景に交配し、LC欠損EADを作成した。また、ランゲルハンス細胞は存在するが、endocytic receptorであるランゲリンを欠損したマウスを作成しRag2-/-背景に交配した。今年度はLC欠損下もしくはランゲリン欠損下でEADがどのように変化するのかを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
効率的な物品の調達を行った結果、直接経費において8508円の余りが生じた。これは必要な試薬を購入するのに十分な額ではなく次年度使用とした。 抗体などの研究試薬に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)