2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗精神病薬が脳神経系DNAメチル化状態に与える影響の体系的解析
Project/Area Number |
24390279
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩本 和也 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (40342753)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲノム / エピゲノム / DNAメチル化 |
Research Abstract |
統合失調症の発症には遺伝要因と環境要因が密接に関与していると考えられているが、病因は明らかにされておらず、DNA メチル化などエピジェネティックな変異と精神疾患を関連付ける研究が急速に注目を集めている。しかし、患者試料を使用した場合の問題点の1 つに、投薬の影響評価がなされていないという点が挙げられる。本研究では、抗精神病薬投与後の遺伝子発現及びDNA メチル化変動について体系的な評価を行う。 昨年度までに、代表的な抗精神病薬であるハロペリドールとリスペリドンに焦点をあて、ヒト神経系細胞株を用いた培養実験を行い、DNAメチル化状態のプロファイル取得を行った。本年度は、クエチアピン、ペロスピロン、ブロナンセリンといった他の種類の抗精神病薬についても同様の培養実験を行い、Illumina社HumanMethylation 27Kまたは450Kプラットフォームを用いたDNAメチル化プロファイルの取得を行った。解析の結果、各抗精神病薬で大幅にDNAメチル化に対する影響が異なることが明らかになった。特にクエチアピン、ペロスピロン、ブロナンセリンについては、前年度に検討した2剤ほど顕著なメチル化変動を伴わず、変動の共通点も少なかった。また、ハロペリドールやリスペリドンが投与濃度にかかわらず高メチル化の方向にメチル化変動を起こす傾向を有していたが、クエチアピンでは特に増減の偏りなく変動が認められ、ペロスピロン、ブロナンセリンでは濃度依存的に高メチル化が認められた。メチル化変動が生じた遺伝子には神経伝達物質受容体などが含まれていることから、抗精神病薬の薬理作用に対する影響があることが示唆された。 今後は引き続き、DNAメチル化変化と薬理作用に関する機能解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、主要な抗精神病薬2剤に加え、比較対象となる他のクラスの抗精神病薬3剤でのメチル化プロファイル取得を行うことができた。抗精神病薬がDNAメチル化状態に与える影響は、国内外で未だ体系的に検討されておらず、新たな観点から薬剤の作用機序の理解につながると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで各薬剤について、個別にDNAメチル化状態に対する影響を検討してきたが、今後は様々な抗精神病薬について、および申請者らが以前におこなった気分安定薬に関するデータなどを加え、横断的にバイオインフォマティクス解析を進めていく。用いている材料が細胞培養株であるため、ヒトの脳試料での状態をどれだけ反映しているかに特に注意を払って解析を行う。
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