2014 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸伝達調節による難治性抑うつ状態の治療法開発に関する研究
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24390280
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
西川 徹 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00198441)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グルタミン酸伝達 / NMDA受容体 / D-セリン / 難治性抑うつ状態 / NMDA受容体グリシン調節部位 / 内側前頭葉皮質 / アミノ酸分析 / In vivoダイアリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
標準的な薬物療法に抵抗する難治性の抑うつ状態は、気分障害、脳器質性障害その他の精神疾患でしばしば認められ、患者の日常活動を著しく障害するだけでなく、自殺行動に結びつくことも多いことから、新しい治療法の開発が医学的・社会的急務となっている。本研究では、NMDA型グルタミン酸受容体遮断薬が、難治性抑うつ状態に対して即効的で持続する効果を発揮することや、抑うつ状態の動物モデルを改善することが報告されている点に注目し、 NMDA受容体機能を、本受容体の様々な調節部位やそれ以外の分子細胞システムを介して抑制することによって、難治性抑うつ状態を改善する、新規治療法を開発するための基礎的・臨床的研究を行う。 平成26年度は、新規治療法の標的となるNMDA受容体、および本受容体のアゴニストのGluや、コアゴニストのD-セリンの調節機構を明らかにする目的で、D-セリンの合成(serine racemase: SR)または取り込み・放出(Dsm-1)に関与するする遺伝子を操作したマウスの内側前頭葉皮質で、細胞外と組織中のGlu、D-セリン、ならびに関連するD・L型アミノ酸濃度の変化を調べた。SRを胎生期から欠損するマウスでは、組織中のD-セリンの著明な低下とL-セリンの軽度の上昇が見られ、in vivoダイアリシスで測定した細胞外のD-セリン濃度も著しく低下することが分かった。また、D-セリン前駆体のL-セリンやD-セリン分解産物のβ-hydroxypyruvateの負荷時にwild typeのマウスに見られる、組織中グルタミン酸濃度の上昇が、低下に変化することが示唆された。dsm-1遺伝子を前脳部選択的に欠損させたマウス(CaMKIIα発現細胞で欠失)では、細胞外液中Glu濃度の低下が観察された。以上の結果より、D-セリンとGluの代謝が密接に関係していることが示唆され、抑うつ状態におけるNMDA受容体機能亢進の病態を検討する有用な手がかりになると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NMDA受容体コアゴニストD-セリンの脳内濃度制御とNMDA 受容体機能の関係や、D-セリン代謝産物とD-セリン合成酵素との関係で新知見が得られ、新規治療法開発のための基礎研究進んでいるが、臨床研究におけるエントリーは、対象患者を単極性うつ病に限定していたため遅れていたことから、対象患者を拡大する措置を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れているイフェンプロディールを用いた臨床試験への患者エントリーを進める。このため、今年度平成26年度は、うつ病相のみを呈する患者だけでなく双極性障害患者の難治性うつ状態に投与できるように、倫理委員会に変更を申請し承認された。平成26年度中に初めてのエントリーがあり、今後も症例数を増やす予定である。基礎的研究では、NMDA受容体―D-セリンシステムについて、局在細胞・調節機構・病態・抗うつ効果に繋がる抑制法等の検討をさらに発展させる。
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Causes of Carryover |
実験条件の設定に困難な問題が発生し、その解決に時間を要したため、予定していた期間内に研究を完了できず、延長する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品 実験動物 300,000円、抗体その他300,000円、実験用試薬200,000円、謝金 200,000円
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Research Products
(49 results)
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[Journal Article] Association study of H2AFZ with schizophrenia in a Japanese case-control sample.2015
Author(s)
Jitoku D, Yamamoto N, Iwayama Y, Toyota T, Miyagi M, Enokida T, Tasaka T, Umino M, Umino A, Uezato A, Iwata Y, Suzuki K, Kikuchi M, Hashimoto T, Kanahara N, Kurumaji A, Yoshikawa T, Nishikawa T.
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Journal Title
J Neural Transm
Volume: 印刷中
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A Comparison of Pharmacotherapy of Inpatients with Major Depressive Disorders between Single Episode and Recurrent One.2014
Author(s)
Kurumaji A, Narushima K, Takeda M, Jitoku D, Kyono H, Hobo M, Mitsusada H, Nishida M, Atsuta H, Tamai S, Takagi S, Fujita M, Kawamata K, Okuzumi S, Hino K, Tsutsui K, Nishikawa T
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Journal Title
Clinical Neuropsychophramacology and Therapeutics
Volume: 3
Pages: 5-10
Peer Reviewed
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[Presentation] 女性と精神疾患2014
Author(s)
西川徹
Organizer
第29回日本女性医学学会学術集会
Place of Presentation
麹町、東京
Year and Date
2014-11-01 – 2014-11-01
Invited
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[Presentation] Genetic association and postmortem analyses of papst1, a D-serine modulator in schizophrenia and bipolar disorder2014
Author(s)
Uezato A, Shimazu D, Jitoku D, Iwayama Y, Toyota T, Yamada K, Yoshikawa T, Yamamoto N, Nishikawa T
Organizer
The 2nd International Conference of D-Amino Acid Research
Place of Presentation
Utsunomiya, Tochigi
Year and Date
2014-09-03 – 2014-09-03
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