2013 Fiscal Year Annual Research Report
陽子線のDNA損傷メカニズムと腫瘍免疫賦活効果を応用した新たながん治療法の研究
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24390287
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坪井 康次 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90188615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榮 武二 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60162278)
熊田 博明 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30354913)
盛武 敬 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (50450432)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん / 陽子線治療 / DNA損傷 / 化学療法 / 腫瘍免疫 |
Research Abstract |
1)悪性脳腫瘍細胞に対するCelecoxibのγ線増感作用: ヒト及びマウス膠芽腫細胞株(U87MG, U251MG, GL261)を常酸素あるいは低酸素状態で培養し、γ線照射とCOX2選択的阻害剤であるCelecoxibの併用効果を検討した。コロニー生存分析では、Celecoxibは、常酸素のみならず低酸素状態でも膠芽腫細胞のγ線感受性を有意に上昇させた。また、これらの併用によりアポトーシスよりもオートファジーの有意な増加を認め、この現象は特に低酸素下の膠芽腫細胞で強く見られた。 2)粒子線によるDNAクラスター損傷の解析: ヒト髄芽腫細胞ONS76にEGFP tagged XRCC1を導入した細胞株を樹立した。この細胞株に対して130keV X線、200MeV陽子線、290MeV炭素線を2Gy照射し、二重鎖切断(53BP1)と塩基損傷(OGG1)を免疫化学染色で検出した。その結果、炭素線においては他の線源より53BP1 foci、53BP1とXRCC1共局在が多く見られたが、これらの修復経過はX線や陽子線と同様であり、これらの修復にはクロマチン構造の関与が示唆された。 3)放射線照射による腫瘍免疫賦活効果の検討: マウス悪性脳腫瘍細胞GL261からKusabira-Orange蛍光蛋白質発現GL261細胞(GL261-mKO)を作製した。同系アルビノC57BL/6マウスの大腿皮下にGL261-mKOを移植し、10日目にX線を20Gy照射した。さらに24日後にGL261-mKOを脳内に移植してIVISにて腫瘍の増殖の有無を観察し、生存解析を行った。また、頭蓋内腫瘍が拒絶された例では、エリスポット法により脾細胞からのIFN-γの産生を検討した。その結果、大腿皮下腫瘍へのX線照射により、15匹中8匹で腫瘍が消失し、7匹では増大した。腫瘍が消失した8匹では頭蓋内へ移植した腫瘍が拒絶されたが、増大した7匹では頭蓋内でも腫瘍が形成された。X線照射により大腿皮下腫瘍が治癒すると、脳内の腫瘍に対しても免疫応答細胞死が誘導されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までに、選択的COX2阻害剤と放射線照射の併用効果をin vitroで解析し、常酸素、低酸素状態で膠芽腫細胞株に対して放射線増感効果を示すことができた。また、腫瘍細胞にX線、陽子線、炭素線を照射してDNAクラスター損傷の生成を共焦点顕微鏡で検出し比較することができた。さらに、腫瘍免疫賦活効果を見るためのマウス皮下および脳腫瘍モデルを作製し、蛍光イメージングシステムで照射後の腫瘍サイズを定量的に解析した。その結果、腫瘍に対する局所的照射により、条件が整えばアブスコパル効果が得られることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)腫瘍細胞に対するCelecoxibの放射線増感作用: これまでの研究成果に基づき、選択的COX2阻害剤であるCelecoxibなどの非ステロイド性消炎剤(NSAID)は、放射線増感効果とともに、Prostaglandin E2(PGE2)を阻害することから免疫賦活効果も期待できる。そこで、アルビノC57BL/6マウスの大腿皮下腫瘍(GL261)モデル及びC3H大腿皮下腫瘍(SCC7)モデルを対象として、皮下腫瘍へのX線照射とNSAIDを併用し、放射線増感効果とともに、腫瘍特異的免疫賦活効果をin vivoで検討する。 2)粒子線によるDNAクラスター損傷の解析: 前年度と同じ細胞を用いて、X線、陽子線、炭素線を照射し、細胞周期と、二重鎖切断(53BP1)及び塩基損傷(OGG1)の出現との関連を免疫細胞か学的に明らかにする。また引き続き、これらのDNA損傷の修復過程とクロマチン構造(euchromatinかheterochromatinかどうか)の関連を明らかにする。 3)マウス皮下腫瘍モデルにおける「局所放射線治療+在所ワクチン化療法」の安全性と有効性の検討: 前年度と同様のアルビノC57BL/6マウスの大腿皮下にGL261-mKOを移植したモデルを用いて、腫瘍局所にX線照射を行い、脳内へ移植した腫瘍へのアブスコパル効果の有無を検討する。さらにHydroxyapatiteあるいはMesoporous silicaを用いた新規免疫アジュバントの局所投与によりその効果が増強されるか否かを検討する。この在所ワクチン化療法による免疫賦活効果は、エリスポット法を用いて評価し、極大化したアブスコパル効果を得るため、各処置条件を、安全性を保てる範囲で変化させて検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた人件費が12ヶ月分から9ヶ月分となったために、その差額分を次年度使用額とした。 研究計画に沿って、消耗品あるいは人件費として使用する計画である。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] A phase I study on combined therapy with proton-beam radiotherapy and in situ tumor vaccination for locally advanced recurrent hepatocellular carcinoma.2013
Author(s)
Abei M, Okumura T, Fukuda K, Hashimoto T, Araki M, Ishige K, Hyodo I, Kanemoto A, Numajiri H, Mizumoto M, Sakae T, Sakurai H, Zenkoh J, Ariungerel G, Sogo Y, Ito A, Ohno T, Tsuboi K.
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Journal Title
Radiation oncology
Volume: 8
Pages: 239-248
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Clinical Proton beam induced DNA damage and its repair mechanism2013
Author(s)
Gerelchuluun A, Manabe E, Ishikawa T, Suzuki K, Hong Z, Sun L, Ito K, Manabe E, Zenkoh J, Sakae T, Moritake T, Asaithamby A, David JC, Tsuboi K.
Organizer
29th RBC-NIRS International Symposium
Place of Presentation
京都大学(京都府京都市)
Year and Date
20131128-20131129
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[Presentation] エックス線照射による腫瘍免疫応答的細胞死が脳内へ及ぼす影響
Author(s)
Zenkoh J, Gerelchuluun A, Hong Z, Suzuki K, Sun L, Ito K, Miwa Y, Tsuboi K.
Organizer
The 4th Internarional Society of Radiation Neurobiology Conference
Place of Presentation
Takasaki Gunma