2013 Fiscal Year Annual Research Report
DNA二重鎖切断の認識・修復の分子機構に基づく新規戦略による放射線増感剤の創製
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24390290
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 義久 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 准教授 (20302672)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線治療 / 放射線増感剤 / DNA二重鎖切断修復 / DNA損傷応答 / 蛋白質リン酸化 / DNA-PK / XRCC4 / DNA ligase IV |
Research Abstract |
本研究は DNA-PKによるXRCC4のリン酸化を介したタンパク質間相互作用の調節機構を明らかにすること、それを利用した新たな放射線増感剤開発の可能性を探ることを目的としている。平成25年度は、年度当初に(1)前年度に見出されたXRCC4結合分子の解析、(2)XRCC4変異体のうち、機能異常を示すものについての解析、(3)リン酸化部位周辺配列を模したペプチドの放射線感受性への影響の解析、(4)前年度の研究で見出された新たなリン酸化部位に関する解析を計画し、これを行った。加えて、平成25年度の前半において見出された知見に基づき、(5)XRCC4とLigIVとの相互作用の解析およびこれに基づく放射線増感の試みを行った。 (1)については、免疫沈降法で細胞内における結合の検証を試みた。合わせて(2)に関連して、XRCC4変異体との結合の有無を調べた。この結合分子に対する市販の抗体がXRCC4に交差反応を示すことが明らかになり、結合の検証には至っていないが、その過程で、この分子の存在量が放射線照射によって増加する可能性が示唆された。 (3)については、リン酸化部位を含むさまざまな長さのXRCC4部分断片をタグ付きで欠損細胞に導入した。その結果から、タンパク質の安定性に関わる領域についての情報が得られた。 (4)については、当初DNA-PKcsの関与が示唆されたものの、直接のリン酸化に関しては、本年度得られた結果は否定的であり、他のリン酸化酵素の関与の可能性が高いと考えられた。また、XRCC4のDNA修復以外の新たな機能の可能性が示唆された。さらに、既報のリン酸化部位のうち1つについて、DNA-PK依存的に放射線照射後にリン酸化が増加することが明らかになった。 (5)については、LigIVのXRCC4結合領域を発現させることにより放射線感受性が増強されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA-PKによるXRCC4のリン酸化については、独自に見出した4カ所に加え、新たな候補部位、既報の2カ所のうち1カ所を加えて解析し、当初予想をしなかった多くの知見が得られた。また、リン酸化部位周辺も含め、XRCC4全体にわたって変異体を追加作製し、機能解析した。その結果、XRCC4とLigIVの相互作用に重要な役割を担うアミノ酸残基を見出した。LigIVのXRCC4結合領域の発現と合わせて新たな放射線増感法の糸口となる知見と考えられる。一方、結合分子の解析については、市販の抗体で良好な特性を示すものが見つからず、やや難航している。全体的に見れば、当初計画を若干上回る成果が得られたと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたり、本研究の大局的目的の達成に向け、ペプチドを基盤とする放射線増感剤開発試験を行う。また、これまで得られた成果の論文発表や国際学会発表を積極的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
執行状況はほぼ予定通りであったが、試薬の割引などによって差額が生じた。本研究の目的に照らし、必要あるいは有用と思われる試薬類などを補充したが、それでも1万円以下の額が残った。 本研究の目的に照らし、必要あるいは有用と思われる試薬類の購入に充てる。
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Research Products
(16 results)