2014 Fiscal Year Annual Research Report
DNA二重鎖切断の認識・修復の分子機構に基づく新規戦略による放射線増感剤の創製
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24390290
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 義久 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 准教授 (20302672)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線 / 癌 / DNA二重鎖切断 / DNA修復 / 増感剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、XRCC4のC末端領域に注目し、DNA-PKによるXRCC4のリン酸化を介したタンパク質間相互作用の調節機構を明らかにすること、それを利用した新たな放射線増感剤開発の可能性を探ることを目的としている。平成25年度までの結果を受け、平成26年度は、C末端領域を介したタンパク質間相互作用の解析、およびXECT領域をベースとしたペプチド放射線増感剤の開発試験を予定していた。しかし、研究を進めて行く間に新たな知見が報告され、また、当グループにおいても予想していなかった新たな事実を見出した。これを受け、XRCC4のC末端領域の機能や調節機構を中心に研究を遂行し、以下の成果を得た。 1)放射線照射後に見られるXRCC4のリン酸化は主にDNA-PKによって行われるが、ATMも一部関与していることを見出した。 2)以前に報告されながら、その後の解析が行われていなかったリン酸化部位について解析を行い、鋭敏な放射線応答性を見出した。 3)C末端領域の中で326番目のアスパラギン(N326)をロイシン、アスパラギン酸、グルタミン、アラニンに置換するといずれも機能が低下すること、すなわちN326がDNA修復機能において重要であることを明らかにした。なお、昨年度の検討でN326をロイシンに置換した場合、核移行の異常が認められていたが、これは核外移行によるものであることが分かった。 4)C末端領域の270番から275番に位置する核移行シグナル様配列(RKRRQR)が実際に核移行シグナルであり、特に、K271をアルギニンに置換すると核移行機能が失われることを明らかにした。さらに、この核移行シグナルがDNA ligase IVの核局在にも必要であることを明らかにした。 5)DNA ligase IVとの結合およびXRCC4の四量体形成に関わる領域で特に重要な役割を持つ残基を見出した。DNA ligase IVとの結合と四量体形成は競合的であることから、ペプチドによる相互作用干渉の新たな標的候補と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度までの結果を受け、平成26年度は、C末端領域を介したタンパク質間相互作用の解析、およびC末端領域をベースとしたペプチド放射線増感剤の開発試験を予定していた。しかし、研究を進めて行く間に新たな知見が報告され、また、当グループにおいても予想していなかった新たな事実を見出した。これを受け、XRCC4のC末端領域の機能や調節機構を中心に研究を遂行した。その成果は平成26年度中に2報の論文として掲載され、1報の掲載が決定し、2報が近日投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の状況を踏まえ、補助事業期間を1年間延長し、平成27年度に増感剤開発試験などを行うこととした。さらに、平成27年度になっても、関連分野において重要な報告が相次いでいる。第一に、非相同末端結合によるDNA二重鎖切断修復に関わる新たな分子としてPAXX (Paralogue of XRCC4 and XLF)が発見された。PAXXは名前の通り、構造上XRCC4、XLFとの類似性が認められる。機能としては、XRCC4、XLFがDNA ligase IVの機能を補佐、調節すると考えられるのに対し、PAXXはKuと相互作用し、NHEJ複合体全体の安定性を上げる可能性が示唆されている。第二に、XRCC4に変異を有する患者が多数発見された。患者の主な症状として小頭症、発育不全などが認められているが、一方、免疫不全が認められないのは他のNHEJ分子欠損患者の症状やXRCC4欠損マウスの表現型と異なる。一部の患者ではナンセンス変異によりC末端領域の欠失が生じている。これらのタンパク質は安定性が低いことが発症の原因であろうとされているが、C末端領域の機能と病態との関連も考えられる。このような新たな知見も手がかりとして、平成27年度の研究を遂行したい。
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Causes of Carryover |
本研究で放射線増感剤の標的として注目しているXRCC4の機能や調節機構に関して全く新規な知見や従来の報告と異なる結果が、研究代表者および他グループによって見出された。本年度当初計画していた増感剤の試作、試験の前に検討すべき事項が生じたため、計画を見直し、増感剤の試作、試験は27年度に行うこととした。本年度は27年度に必要となる経費を勘案しつつ、XRCC4の機能や調節機構に注力して研究を遂行した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成24年度~26年度において得られたXRCC4の機能や調節機構に関する成果を踏まえ、放射線増感効果が期待できるXRCC4部分断片、ペプチドあるいはその修飾体を作製し、その効果を試験する。また、得られた成果を国際学会、国際学術誌において発表する。
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Research Products
(22 results)