2013 Fiscal Year Annual Research Report
脱細胞小口径血管の早期内皮化処理と長期開存性の達成
Project/Area Number |
24390307
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
中谷 武嗣 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (60155752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 哲二 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
藤里 俊哉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60270732)
馬原 淳 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (80416221)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脱細胞組織 / 小口径血管 / 内皮組織 / インテグリンα4β1 / 高開存性 / 再生医療 |
Research Abstract |
本研究では、我々が開発した早期内皮化特性を有する脱細胞化小口径人工血管の詳細な解析を小中実験動物を用いて進めた。欧米で注目されている脱細胞アログラフトは、優れた生体組織類似性を有する脱細胞組織であるが、小口径人工血管に関しては、血栓形成が原因で高い開存性を得ることはできない。これまで進めてきたミニブタを用いた小口径人工血管開存性試験では、その例数には自ずと制限があるために、詳細な解析は行えていない。そこで、ラット、ウサギなどの小中動物実験により、初期内皮化の詳細なメカニズム解析を行い、更に有効な血管開発に資することが重要である。 まず、最大の疑問である新生内皮の由来を詳細に調べることを進め、循環細胞が大きく寄与していることを明らかに出来た。さらに、中長期開存化へのチャレンジとして重要な情報となる、初期における、移植血管組織に対する生体応答、免疫応答、マトリックス分解挙動などについてもすすめた。当初の予想に反して、マトリックス分解速度が速いことが明らかとなった。ラットにおける生体反応は人とは大きく異なることが知られていることから、ウサギを用いた血管分解評価を進めりることとした。 本年度、ウサギを用いた実験を進めたが、ウサギの虚血に対する耐性は非常に低いことが明らかとなった。血管移植時の血流遮断時間は20~30分程度であるが、下肢に対する大きなダメージが残った。そこで、新たな実験系を立てることが必須となり、様々な手術条件を試行したところ、低体温下での移植により下肢壊死に対する大きな改善が得られることが明らかとなった。この実験計により次年度移行の研究を遂行することで、中動物における研究成果を得られるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットを用いた移植実験では、計画を上回る極めて良好な成績を収めることが出来た。一方で、血管壁の脆弱化を抑制する脱細胞化条件を確立したものの、ラット移植においては、初期においても血管壁の分解と強度低下が起こることが明らかとなった。中長期へ向けて好ましい事象ではないが、この事実を確認できたことは、今後の中長期開存性の確立には極めて意義あるものと考えている。 本年度、ウサギを用いた実験を進めたが、ウサギの虚血に対する耐性は非常に低く、血管移植時の血流遮断時間は20~30分程度であっても下肢に対する大きなダメージが残った。いろいろな手術条件を試行したところ、低体温下での移植により、その下肢壊死に対する大きな改善が得られることが明らかとなった。この実験系確立のために時間を要したことから中動物移植実験に遅れが生じていることは否めない。 前者では予測し得なかった新たな知見を含めて計画を上回る進捗状況であり、一方、後者では、実験系の確立から進捗状況が遅れ気味であると判断しており、総合的にはおおむね順調に進呈しているものと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の脱細胞血管の作製法である超高圧処理・細胞成分洗浄処理で小口径人工血管を脱細胞化すると、血管壁が脆弱となりその開存性に大きく影響することが明らかとなっていた。そこで本プロジェクトにより、可能な限りマイルドな条件で最小限の洗浄工程・酵素添加量による脱細胞条件を最適化した結果、Nativeと同程度の強度を有する血管の作成が可能となった。また、ラットを用いた本システムの早期内皮化も実証されて事から、極めて有効な手段であることは確実となった。 一方で、低分子修飾プローブにより内腔面を機能化しているか、この分子の脱細胞組織表面との安定性は必ずしも高くない可能性がある。そこで、さらに安定な内腔面の構築を目指して、内皮細胞系細胞結合性配列とコラーゲン様人工タンパク質(CLP)との融合人工タンパク質(REDV-CLP)を、大腸菌発現システムを利用して作製する計画である。また、実際には血管壁成分の主要成分であるエラスチンをターゲットした、エラスチン様人工タンパク質に内皮細胞系細胞結合性配列を融合させた(REDV-ELP)の調製も進める。これらを用いて内腔表面を安定修飾した脱細胞小口径血管の開存性評価は、従来から進めているラットモデルに加えて、昨年度ほぼ構築を完了したウサギ下行大動脈モデルにより実施する。なお、本実験においては、両システムともに1ヶ月までの初期化依存性を詳細に解析することを最終目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ウサギおよび疾患ウサギを用いた移植実験によるデータ取得を計画していたが、実験に対するウサギの耐性が低く、十分な例数を実施することが出来なかった。新たな実験系が確立されたことから本予算を利用して、次年度に計画のデータを取得する。 昨年度計画していた、ウサギおよび疾患ウサギを用いた、脱細胞小口径人工血管の初期内皮化追跡、および初期開存性向上の確認実験を実施する。
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Research Products
(8 results)