2013 Fiscal Year Annual Research Report
腹腔内化学療法におけるナノ粒子化抗癌剤の播種巣内浸透性を規定する諸因子の解明
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24390310
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石神 浩徳 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80372382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 丈二 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20251308)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腹膜播種 / drug delivery / 線維化 / 間葉性幹細胞 |
Research Abstract |
1.ヒト胃がん細胞MKN45をヌードマウスに移植し薬剤を腹腔内投与し、播種を定量する実験系で薬剤の効果を判定した。ナノミセル化パクリタキセル(NK105)はパクリタキセルよりも強い抗腫瘍効果を発揮した。また蛍光標識したパクリタキセル投与後の播種巣内での分布を蛍光顕微鏡で観察すると、辺縁部に集積し、その部位に存在する微小血管の障害を示す組織像が得られた。また、低酸素領域を検出するピモニダゾー染色でパクリタキセルの集積した辺縁部の周辺が強く染色された。この事実から、パクリタキセル腹腔内投与の抗腫瘍効果に血管新生阻害が関与している可能性が示唆された。 2.胃癌患者の腹水、腹腔洗浄液を回収し、細胞を白血球マーカーCD45,癌細胞に特異的なマーカーCD326に対するモノクローナル抗体で染色し、FACSを用いて、その個数を算定し、腹腔内遊離癌細胞の相対的頻度をCD326(+) 細胞/ CD45(+) 細胞の比率(tumor cell/leukocyte ratio:TLR)にて測定する方法をより多数の検体で施行した。 3.胃癌患者の腹水、腹腔洗浄液中の細胞中のCD14(+)細胞は、末梢血中のCD14(+)monocyteと比べ明らかに大型で、Arginase, CD206,CD163などのM2 macrophageの抗原に加えて、collagen1を強く発現していた1~2週間の培養で繊維芽細胞状に形態変化し、vimentin, alpha-SMAなどの間葉系マーカーを発現するようになった。また、この細胞は免疫抑制能を有する事も判明した。In vivoでこの細胞をヒト胃がん細胞MKN45と一緒にマウス腹腔内の接種したところ、腹膜播種の成立を増強し、組織観察の結果、本細胞が間質に分布し、コラーゲン線維を産生していると考えられた。さらに、本細胞を抑制する試薬、Dasatinibを投与すると、播種は有意に抑制され、dasatinib投与群における播種結節内の線維性間質成分は明らかに減少していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
In vivoにおける薬剤効果に関するデータはほぼ予定通りえることができ、ナノ製剤の腹腔内投与の臨床的有用性を確認することができた。その過程で、ヒト腹腔内間葉系細胞の働きについての新たな知見が得られ、これをターゲットとした新たな播種治療の可能性が浮かび上がってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.本結果に基づき、胃癌腹膜播種症例に対するNK105腹腔内投与の臨床応用に進みたいと考える。NK105は現在、再発乳癌に対する保険申請過程にあると聞いているが、可能ならば先進医療制度による臨床試験の実施を検討する。 2.ヒト腹腔内間葉系細胞の特性について、生理学的、免疫学的手法を用いてより深く検討し、腹膜播種におけるこの細胞の真の役割を特定する。さらに、本細胞をターゲットとした新たな播種治療の可能性を模索する。
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Research Products
(11 results)