2013 Fiscal Year Annual Research Report
軟骨細胞増殖/分化を制御する新たなメカニズムの同定と解析
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24390354
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
妻木 範行 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (50303938)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | chondrocyte / regeneration / cartilage / dedifferentiation |
Research Abstract |
軟骨細胞脱分化過程の詳細な解析を行った。軟骨細胞は単層培養で増やすと脱分化して軟骨の形質を失い、線維芽細胞様になると考えられている。しかしその証拠はない。培養開始時に少数だけ存在する線維芽細胞が優位に増殖した結果である可能性も完全には否定できない。軟骨細胞が脱分化して線維芽細胞様になることを示すために、Col11a2-EGFPトランスジェニックマウスの軟骨細胞を単層培養して数が増える様子をタイムラプス撮影した。軟骨細胞が培養期間の経過とともに軟骨細胞は分裂してGFP傾向を失う様子を観察できた。並行して継時的に回収したRNAを使い、real-time RT-PCRにて軟骨細胞マーカーであるII型コラーゲン遺伝子、アグリカン遺伝子が発現低下し、そして線維芽細胞マーカーであるI型コラーゲンα1鎖遺伝子、I型コラーゲンα2鎖遺伝子の発現が上昇したことを確認した。次にCol11a2-Creマウスと、Rosa26-stopfloxed-YFPマウス(floxed stop配列の後にYFP遺伝子を結合したDNAフラグメントをRosa26ローカスにノックインしたレポーターマウス)を交配させてCol11a2-Cre;Rosa26-stopfloxed-YFPマウスを作り、軟骨細胞を初代培養し、リニエージトレーシングを行った。培養後の脱分化した細胞は全てYFPを発現しており、それらの細胞は元々軟骨細胞であったことが確認できた。これらの結果から、軟骨細胞を培養して出来る線維芽細胞様の細胞は、元々は軟骨細胞であったことが明らかになった。また、軟骨細胞をマイトマイシンC処理して細胞分裂を止めて単層培養したところ、この過程で脱分化のプロセスが起きたため、脱分化が細胞分裂に依存しないと考えた。以上の結果は軟骨細胞の脱分化過程を抑制する、または脱分化した軟骨細胞を元の軟骨細胞へ戻す技術の開発への基盤的知見を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、軟骨細胞脱分化過程の詳細な解析を行った。Col11a2-EGFPトランスジェニックマウス由来軟骨細胞培養のタイムラプス撮影と、Col11a2-Cre; Rosa26-stopfloxed-YFPマウス由来軟骨細胞培養のリニエージトレーシングを行い、軟骨細胞培養後に出現する線維芽細胞様細胞が脱分化した軟骨細胞であり、培養開始時に元々存在する少量の線維芽細胞が優位に増殖したものではないことを示した。この結果を、Minegishi Y, Hosokawa K, Tsumaki N. Time-lapse observation of the dedifferentiation process in mouse chondrocytes using chondrocyte-specific reporters. Osteoarthritis Cartilage 2013; 21: 1968-1975. に報告した。また、XI型コラーゲン遺伝子のプロモーター・エンハンサー配列の活性は、軟骨細胞で認められ、脱分化すると認められなくなることを明らかにした。この知見は、XI型コラーゲン遺伝子のプロモーター・エンハンサー配列の活性は、ヒト皮膚線維芽細胞をダイレクト・リプログラミングによって軟骨細胞へ変換するときのレポーターとして使用したときに役だった。このダイレクトリプログラミングは、Outani H, Okada M, Yamashita A, Nakagawa K, Yoshikawa H, Tsumaki N. Direct induction of chondrogenic cells from human dermal fibroblast culture by defined factors. PLoS One 2013; 8: e77365. で報告した。また、H26年度に行う予定の、関節軟骨の分化解析とSIK3の関節軟骨機能解析に使用する材料の準備を行った。以上の経過より、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、硝子軟骨細胞の脱分化および肥大変性の機序を分子レベルで解析し、それらを阻止することで高品質の軟骨細胞を誘導/維持する方法の開発に貢献することである。本年度は、軟骨細胞が線維芽細胞様細胞へ変性・脱分化する過程をタイムラプス観察し、軟骨形質が失われていく過程を詳細に観察した。そして、細胞分裂が脱分化に必ずしも必須でないことを示した。これらの知見は、脱分化した軟骨細胞を元の軟骨細胞に戻す技術を開発するときの基盤になり得る。また、本年度はヒト皮膚線維芽細胞にキーとなる転写因子を導入することで、軟骨細胞に直接変換出来ることを示した。今後は、より、病態に近い状況での軟骨細胞変性の機序を解析することを試みる。そのために、関節軟骨細胞の病的状況下での分化やふるまいを、マウス変形性関節症モデルにおいて、CreER / loxPシステムを用いて関節軟骨細胞のリニエージトレーシングを行うことにより検討する。また、軟骨細胞の肥大化に係わる因子であるSIK3の関節軟骨における機能を調べるために、SIK3を成獣のマウス関節軟骨特異的に欠失したコンディショナルマウスを作製して解析する。
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