2012 Fiscal Year Annual Research Report
腎細胞癌における上皮間葉転換に着目した新規標的分子の探索
Project/Area Number |
24390374
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00213885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 修治 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20338180)
中川 健 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (50227740)
宮嶋 哲 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90245572)
浅沼 宏 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70245570)
長田 浩彦 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90265900)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腎細胞癌 / 分子標的治療 / 薬剤耐性 / CD44 |
Research Abstract |
転移性腎細胞癌に対する治療は分子標的治療が標準治療となった。血管新生阻害薬は腫瘍縮小効果に優れるが、現在での最重要課題の1つとして、薬剤の効果が持続せず、耐性となることがあげられる。この耐性が克服されれば、難治性である腎細胞癌の根治が期待できる。耐性のメカニズムを探る手段として、分子標的治療を施行したにもかかわらず、残存する癌細胞の特徴を探ることが、有用な手段であると考えた。前年度の成果として、残存する癌はより悪性度が高い肉腫様の変化を起こしており、上皮-間葉転換が示唆された。今年度はこの残存癌が癌幹細胞としての特徴を有しているかどうかを検討した。癌幹細胞の細胞表面マーカーとしてCD44が知られている。腎細胞癌の切除組織を利用して病期、悪性度との相関、転移巣での発現、血管新生阻害薬の使用後の発現について検討した。 115例の淡明型腎細胞癌の原発巣を検討したところ、CD44の発現は病期の進行および癌の悪性度と相関していることが判明した。CD44の発現の中央値を境に2群に分けたところ、高い症例では予後が不良であった。血管新生阻害薬の使用後の転移巣あるいは原発巣におけるCD44の発現は著明に増強していた。このことは血管新生阻害薬を使用したにもかかわらず残存する癌細胞に対して、CD44を標的とする治療の可能性を示唆する。CD44は細胞に元来発現されているものではなく、治療によって誘導された可能性も考えられる。腎細胞癌は悪性度が高いと炎症性サイトカインの産生が増す。腎癌細胞株に各種サイトカインを添加したところTNF-・によってCD44が誘導されることが明らかになった。血管新生阻害薬に耐性の癌には表面マーカーとしてCD44が重要であり、CD44、あるいはCD44を誘導するTNF-・を標的する治療が有望であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
耐性の機序の解明においてin vitroの実験を根拠に施行しても、実際のがん組織において証明されなければ、将来的な薬剤の開発の端緒になることは難しい。研究をがんの組織における検索から開始し、耐性を示す癌細胞の細胞表面マーカーとしてCD44を見いだした意義は大きい。今後治療薬の開発も視野における。薬剤耐性の機序の解明の候補分子を得たことは当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
CD44を標的とした治療方法の具体的な方法を検索するとともに、今年度の研究で検討課題となった低酸素がCD44を誘導する契機であった可能性などを研究していく。また、CD44にはisoformがあるため、がんの進展に特異的なisoformの探索も平行して行う。また、別の角度での研究として、もし、血管新生が完全に阻害されて、癌血管が根絶されれば、残存する癌細胞は生存できなかったものと考えられる。血管新生阻害薬投与にもかかわらず残存した腫瘍血管の特徴についても新たに検索していく。以上様々な角度から多層的に研究を展開させ、腎細胞癌の新規分子標的薬の開発につながる基礎研究を継続的に行っていきたい。
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