2014 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚-視覚音声処理の脳内機序とその病理・可塑的変化の解明
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24390386
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川瀬 哲明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (50169728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 彰剛 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20578968)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
中里 信和 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80207753)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 難聴 / 人工内耳 / 聴覚リハビリ / 脳磁図 / 視聴覚統合処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、音声(聴覚)刺激に対する顔画像(視覚刺激)の影響について、聴性誘発脳磁界のN100反応を指標に、a)音声と一致した発話顔画像(通常の読話条件)を提示した場合と音声と異なる語音の発話顔画像(マガーク刺激)を提示した場合でその影響が異なるか否か、ならびにb)聴覚―視覚刺激間の刺激の提示に時間ずれを与えたときにどのような影響が認められるか(視聴覚統合処理の時間窓)、に焦点をあて検討を加えた。 その結果1)音声に対する聴性誘発脳磁界反応N100mは、顔画像の提示により振幅の低下と潜時の短縮を認めること、2)N100mの振幅低下、潜時短縮は、左右いずれの半球でも認められるが、左半球優位の傾向を認めること、3)また、同反応は音声と一致した顔画像でも、異なる顔画像(マガーク刺激)でも同様に認められるが、マガーク刺激のほうが左右の半球差が大きい傾向があること、4)さらに、同反応を指標とした時間窓の検討では、視覚提示と聴覚提示の提示時間にdelayを生じさせると減弱すること、すなわち、心理音響学的に報告されている”時間窓”に相当する時間窓が存在すること5)またN100mで認められる視覚刺激提示の効果に関する時間窓は、心理音響学的に報告されている”時間窓“とほぼ類似の”長さ”を有するものであることが明らかとなった。 今回の研究では、視覚―聴覚統合処理の脳内メカニズムを明らかにすることを大きな目的の一つとしていたが、今年度得られた成果は、ヒトの音声聴取(特に、難聴耳や雑音下などの劣化音声聴取の環境)において重要な役割を有している聴覚―視覚統合による読話効果が、潜時100msという比較的早期(音韻処理のレベルと考えられている)の聴覚処理段階から認められることを示すもので、視聴覚統合脳内メカニズムの解明において重要な知見を提示するものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚―聴覚統合処理に関する脳内メカニズムについて、1)視聴覚統合の影響が潜時100msのN100m反応レベルで、左半球優位で観察されること、2)心理音響学的に示されて起きた視聴覚統合の時間窓と特性的にも同等の時間窓がN100mレベルで観察されること、という、これまでに未報告の新規性のある重要な知見を得ることができた。また、これらの成果は、平成26年度の日本聴覚医学会、日本音声言語医学会でも報告したが、現在は、 世界の一流誌への投稿にむけて英文論文を作成中であり、研究は、概ね順調に進んでいるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、本研究の最終年度であり、平成26年度までの研究に加え、さらに聴覚情報の劣化の影響を模擬難聴耳において検討を行い、さらにその後、実際の難聴者での検証を計画している。 さらに、本年度は本研究の最終年度であるので、年度末には、聴覚―視覚情報処理の脳内メカニズムとその病理についての成果を総括する予定である。
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Causes of Carryover |
1)今回研究の研究協力者(大学院生)の八幡が国際学会で発表予定であったが、健康上の理由で参加できなくなったこと、2)視覚―聴覚刺激の提示時間参影響を観察する刺激の作製に視聴覚刺激作成ソフトの購入を予定していたが、現有のソフトで代用できたため、購入する必要がなくなったことにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の研究成果の論文発表に際しての情報収集(外国人研究者との意見交換)と成果発表のため、当初の研究計画になかった国際学会(2017年、6月、米国Human Brain Mapping、ならびに2018年2月米国ARO(association for Research in Otolaryngology)) 出席のために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)