2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24390393
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
富田 浩史 岩手大学, 工学部, 教授 (40302088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 直敬 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (20392095)
菅野 江里子 岩手大学, 工学部, 特任准教授 (70375210)
田中 徹 東北大学, 大学院医工学研究科, 教授 (40417382)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生理学 / 遺伝子治療 / チャネルロドプシン / 誘発電位 |
Research Abstract |
平成24年度にカニクイザルをトレーニングすることによりヒトの視力検査と同等の検査が出来ることが判明したため、カニクイザルの片眼を薬剤を用いて変性させ、AAVベクターを用いて、遺伝子導入を行ったが、効率的に遺伝子を網膜細胞に導入することができなかったため、今年度は効果的な遺伝子導入法を検索した。また、それと同時に、ChR2を脳内に注入し、注入後、記録用電極、刺激用LEDを埋め込み、脳神経細胞を光によって興奮させることが出来るかを検証した。 遺伝子導入法の検索では、まず、AAVの血清型がカニクイザルに適したものであるかを検証するために、ヒト、カニクイザル、ラットの培養細胞を用いてAAVの感染効率を調べた。その結果、感染効率はヒト、サル、ラットの順に高く、網膜への遺伝子導入効率の低さはAAVの血清型の親和性によるものでないことが判明した。カニクイザルの硝子体は粘度が高く、硝子体が物理的障壁となっている可能性を考慮し、硝子体を酵素で融解、または、直接、AAVが網膜に接するように、AAVを網膜下投与した。その結果、硝子体融解により導入効率が高くなったもののラットに比べ遥かに低く、また、網膜下投与では高い導入効率を示したもののその範囲は投与部位に限局していた。これらの結果から、導入効率は、硝子体が物理的障壁となっていると考えられた。直接、脳にAAVを投与し、光刺激による脳皮質電位を測定したところ、光刺激に伴う脳活動が記録された。今後詳細に脳皮質電位を解析していく予定である。 一方、網膜への遺伝子導入に関して、カニクイザルで高い導入効率を得ることが難しいと判断し、他の動物種での網膜への遺伝子導入効率を調べた。ビーグル犬では硝子体内投与で遺伝子発現は見られなかったのに対し、マーモセットでは高い導入効率を示した。今後、マーモセットを用いて研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラットでは硝子体内へのAAV投与で、全神経節細胞数の約30%の細胞に遺伝子が導入されるのに対し、カニクイザルでは、同様の投与方法ではほとんど網膜細胞へ遺伝子を導入できないことが判明した。遺伝子導入効率の低さの原因を解明するのに時間を要し、本年度の目的を達成できなかった。しかしながら、脳へ直接遺伝子導入を行うことで、皮質電図が記録されたこと、ならびに、硝子体内投与で遺伝子導入効率の高い動物を選定できたことは、今後の我々の研究だけでなく、同様の研究を行う他の研究者への有用な情報となると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
硝子体融解や硝子体切除を行うことなく、マーモセットでは遺伝子導入効率が高いことが判明した。そのため、実験動物をカニクイザルからマーモセットに変更し、網膜神経節細胞への遺伝子導入を行うこととする。視細胞が変性した網膜の神経節細胞にChR2を発現させた場合に得られる視覚の詳細について不明である。現状では、神経節細胞特異的なプロモーターが判明していないため、AAVを用いた遺伝子導入では神経節細胞に加えて、網膜内層の神経細胞(アマクリン、水平細胞、双極細胞)に低頻度ながら導入されることが確認されており、このような網膜でどのような視覚が得られるかを検証することは重要である。そこで、非選択的なプロモーターであるCAGプロモーターに加えて、CaMKIIαプロモーターを用いて遺伝子導入を行い、得られる視覚機能を皮質電図記録に加えて、行動解析により評価する。行動解析による視力検査法として新たに縞視力測定による方法を用いる。縞視力測定はラットですでに行っており、呈示装置を含め手法は確立されている。具体的には、様々な空間周波数の縞模様を提示し、マーモセットの眼球運動を記録する。縞視力測定により、CAG、CaMKIIαプロモーターを用いて遺伝子導入した際の回復視機能の違いを簡便に調べることができると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
カニクイザル網膜への遺伝子導入効率が低く、遺伝子導入効率改善のための手法検討に時間を要したため、当初の実験計画より進捗が遅れたため。 カニクイザルでは遺伝子導入効率を改善することができなかったため、イヌ、マーモセットなど他の動物種で遺伝子導入効率を調べた結果、マーモセットで高い導入効率が得られたため、遅れた実験計画をマーモセットで遂行する予定である。具体的にはマーモセットの網膜に遺伝子導入を行い視覚機能の解析を行う。また、マーモセットに加えて、網膜色素変性症モデルウサギを用い、皮質脳波を記録する。マーモセットは1頭40万円、色素変性症モデルウサギも1羽35万円と高価であり、繰越額及び平成26年度配分額をこれらの動物の購入代金に充当する。
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Research Products
(10 results)