2014 Fiscal Year Annual Research Report
小児がん腫瘍幹細胞、循環腫瘍細胞ならびに微小転移細胞の細胞生物学的特性
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24390397
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
黒田 達夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60170130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
狩野 元宏 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00573403)
田口 智章 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20197247)
渕本 康史 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (40219077)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腫瘍幹細胞 / 循環腫瘍細胞 / 小児がん / 神経芽細胞腫 / 横紋筋肉腫 / 肝芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
既に確立された細胞株を用いた研究では、肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)、横紋筋肉腫細胞株(Rh30, KYM-1, RMS-YM, RD)、神経芽腫細胞株(LAN5)、ラブドイド腫瘍株(W4)について候補腫瘍幹細胞マーカー(CD13, CD44, CD44v, CD133)の発現をFACSにて評価した。CD44は全ての腫瘍株で発現が確認されたが、一部の成人癌で腫瘍幹細胞との密接な関係を指摘されるCD44vの発現は上記小児固形腫瘍細胞株ではみられなかった。 肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)ではFACSにてCD13の表出がそれぞれ約50%,10%に認められた。そのためHuH6株でCD13陽性細胞をソーティングし、SCID-NODマウスにenrichして移植した。bulk細胞では腫瘍を形成したのに対して1/10(1.0x104),1/100(1.0x103), 1/1000(1.0x102)のいずれのenrichに対しても16週経過しても腫瘍は形成されなかった。肝芽腫においてCD13陽性細胞に対するCD13阻害剤であるウベニクス(ベスタチン)の造腫瘍阻害効果をみる実験が進行中である。 肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)においてCDDPとトラニラストの腫瘍幹細胞増殖抑制効果を検討する研究では両株とも併用群で腫瘍細胞障害の増強傾向が認められたが、幹細胞マーカーCD44vやCD133の発現は半定量PCR、免疫化学定量ともにHepG2株で増加、HuH6株で低下し、細胞株により異なる機序が働くことが示唆された。 このほか今年度より新たに骨肉腫様細胞における基礎的検討を開始した。 臨床検体より循環腫瘍細胞(CTC)や微小残存腫瘍細胞(MRD)を採取し、株化する研究に関しては、進行神経芽細胞腫2例で検体を保存し、肝腫瘍4例でも腫瘍組織検体を保管したが、株化は成功していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存の細胞株を用いた基礎研究では、研究計画がほぼ達成され、新たな知見が得られている。今年度の研究では、化学療法後の腫瘍幹細胞マーカー発現が細胞株により大きく異なることが明らかにされ、個々の細胞株毎に異なる機序を想定して実験系を組む必要性が示唆された。このため当初計画されたような、複数細胞株を用いて同じ実験系で一挙に細胞動態を調べることは難しいものと判断された。このためマウスへの移植実験などについては、今年度は限定的に行われたのみであった。 一方、臨床検体から循環腫瘍細胞、骨髄や化学療法後の腫瘍組織における微小残存腫瘍を採取してソーティングし、株化する研究に関しては、進行病期の症例の数が少ないことと、倫理指針に従ったインフォームドコンセントが予想外に得られていないことから、今年度も大きな進展は見られていない。また、小児固形悪性腫瘍において成人がん幹細胞マーカーとされるものが画一的に幹細胞マーカーになっていないことが今年度の研究で明らかにされ、ソーティングの方法や細胞の解析については新たなマーカーの検討など、計画の修正を求められている。これも臨床検体からの腫瘍細胞の株化が達成できていない一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度となる次年度は、これまでの研究の総括と、将来的な研究への発展性を考慮し、研究計画の微調整を行う。国外でも米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院小児外科研究室との研究連携を模索しており、研究員の派遣などが可能になれば国内外の研究室と連携して、新たな手技も加えて小児固形悪性腫瘍幹細胞の同定を図る。 基本的な研究方針に変更はなく、臨床検体からのCTC、MRD細胞の株化手順の構築と、既存の小児固形悪性腫瘍細胞株を用いた、腫瘍幹細胞マーカーの発現、腫瘍幹細胞増殖および造腫瘍の制御の検討を研究の中心とする。 臨床検体からのCTCやMRDの採取、保管に関しては、小児がんの限られた発症数を考慮し、これまでに構築された採取・保管システムを検証・改良して、今後も検体の蓄積を継続する。新たな手技の導入も含めて、引き続いてこれらの細胞の株化や不死化を試みる。 既存の細胞株を用いた基礎的研究は、腫瘍細胞、組織における幹細胞マーカーの発現を中心に、化学療法、幹細胞増殖制御との関連を、引き続き各腫瘍の細胞株において、in vitroおよび今年度はin vivo環境も重視して検討してゆく。特にSCID-NODマウスにCD13陽性細胞を移植する研究は、腫瘍幹細胞移植モデルとして重要であり、enrich条件、細胞株の種類などを検討して腫瘍形成を図り、モデルの確立を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は疾患の希少性から2施設で検体の収集を図ったが、十分な数の臨床検体は得られなかった。このために、臨床検体を用いた研究に関わる試薬、物品などの費用の支出は予想を下回った。これは次年度以降に、臨床検体の解析および細胞株を用いた研究などに使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
臨床検体の収集を継続し、この中で適切な検体があれば、腫瘍細胞の株化や、その解析を行う予定である。また、組織検体についても、免疫組織学的解析を予定しており、試薬などの解析費用に支出を予定している。さらに既存の細胞株を用いた関連研究に必要な試薬、物品の購入費用の支出を予定している。
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[Journal Article] 小児がん診断後の二次がん発症に関する疫学研究 15病院における後ろ向きコホート(Secondary cancers after cancer diagnosis in childhood: A hospital-based retrospective cohort study in Japan)2014
Author(s)
石田 也寸志(愛媛県立中央病院 小児医療センター), 邱 冬梅, 前田 美穂, 藤本 純一郎, 気賀沢 寿人, 小林 良二, 佐藤 真穂, 岡村 純, 吉永 信治, 力石 健, 七野 浩之, 清谷 知賀子, 工藤 寿子, 浅見 恵子, 堀 浩樹, 川口 浩史, 稲田 浩子, 足立 壮一, 真部 淳, 黒田 達夫
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Journal Title
日本小児血液・がん学会雑誌
Volume: 51
Pages: 261
Peer Reviewed
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[Journal Article] 横紋筋肉腫治療後26年で発症した放射線誘発性軟骨肉腫の1例2014
Author(s)
宇高 徹(慶応義塾大学 医学部整形外科), 須佐 美知郎, 中山 ロバート, 渡部 逸央, 堀内 圭輔, 星野 健, 黒田 達夫, 佐々木 文, 向井 万起男, 戸山 芳昭, 森岡 秀夫
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Journal Title
臨床整形外科
Volume: 49
Pages: 723-728
Peer Reviewed
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