2013 Fiscal Year Annual Research Report
骨細胞を中心としたFGF23-klothoシステムによる骨基質石灰化の調節機構
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24390406
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
網塚 憲生 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30242431)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 骨細胞 / FGF23 / klotho / 石灰化 |
Research Abstract |
平成25年度では、「FGF23-klothoシステムが骨細胞に直接作用して骨基質石灰化を調節する機序の解明」として、FGF23/klothoシグナルあるいは石灰化関連因子が骨細胞に作用し、周囲の骨基質石灰化に影響を与える可能性について検索を進める。また、klotho遺伝子のプロモーター領域に変異が起きたkl/klマウスではなく、遺伝子工学的に削除したαklotho遺伝子欠損マウスについても同様に解析を進める計画を立てた。その結果、低リン・低カルシウム食を与えたkl/klマウスでも骨組織における石灰化異常は改善されることが無いこと、また、αklotho-/-マウスもkl/klマウスと同様の骨組織異常を示していた。我々は、klotho欠損状態(kl/klおよびαklotho-/-)で骨細胞が過剰のDMP-1やオステオカルシンを産生することで、周囲の石灰化ミネラルが骨小腔に蓄積することを明らかにしている。また、FGF23-klothoシグナルとの関連性を今後検討する必要があるものの、骨細胞による周囲の骨基質溶解の可能性についても検索を進めており、PTH投与によってプロトンポンプのd1サブユニットが骨細胞で産生されている事、および、原子間力顕微鏡にて解析すると、骨細胞周囲の粘弾性が低下する事を確認している。従って、骨細胞が周囲の骨基質石灰化に与える可能性は非常に高いと推察している。さらに、我々は、アレンドロネートが直接、骨細胞に作用して、骨細胞を委縮または骨小腔を拡大する現象を見出しており、現在、本研究の追加実験として検索を進めている。一方、DMP-1 promoter cassetteにFGF23cDNAを組み込んだ骨細胞特異的FGF23発現トランスジェニックマウスについては、平成27年度にかけて作成・解析予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、「FGF23-klothoシステムが骨細胞に直接作用して骨基質石灰化を調節する機序の解明」を研究のテーマとしてきた。その結果はBoneに掲載されており、FGF23-klotho軸の破綻によって、単に、血清カルシウム・リンが物理化学的に骨基質に沈着するどころか、骨基質の石灰化は著しく抑制されていることを見出した。そのメカニズムとして、骨基質の石灰化ミネラルの流出が生じてしまう可能性、さらに、骨細胞におけるDMP-1・オステオカルシンの異常産生が骨細胞ネットワーク機能を破綻させることで、周囲の骨基質ミネラルを流出する可能性を指摘している。このことは、FGF23/klotho軸が骨細胞機能に重要な役割を果たしていると推察される。また、骨細胞には、周囲の骨基質石灰化を調整する能力があるかも検索しなければならず、その一端として、PTH投与による骨細胞周囲の骨基質石灰化を検索している。その結果、プロトンポンプのd1サブユニットが骨細胞で産生されている事、電子顕微鏡で骨小腔が拡大する事、および、原子間力顕微鏡にて解析すると、骨細胞周囲の粘弾性が低下する事を確認している。また、平成25年度の後半から今後にかけての追加実験となるが、我々は、アレンドロネートが骨細胞に直接作用して、同様に、骨細胞の委縮や骨小腔の拡大を確認しており、平成27年度の研究に盛り込む予定である。さらに、同時期から開始しているDMP-1 promoter cassetteにFGF23cDNAを組み込んだ骨細胞特異的FGF23発現トランスジェニックマウスについては、平成27年度にかけて作成・解析予定である。従って、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画は、「骨細胞が周囲の石灰化基質ミネラルを調節する機序の解明」を予定している。従って、FGF23-klothoシグナルを中心としながらも、骨細胞が様々な環境や調節因子によって、骨細胞が周囲の骨基質をどのように改変してゆくのかを検索する予定である。その中で重要な課題となるのは、骨細胞が周囲の骨基質を溶解するメカニズムの解明であり、骨細胞性骨溶解については破骨細胞の関与が指摘されていることから、破骨細胞がしないマウスを用いて同様の検索を行う。また、平成25年度から進めているアレンドロネートにより、骨細胞が委縮する(または骨小腔の拡大)現象を確認しており、臨床的に問題となっているatypical femoral fracture(AFF)の原因として骨細胞の障害・または骨小腔の拡大を推察している。これらについて、Pit1, TNALP, ENPP1といった石灰化酵素群、MGP, DMP-1, osteocalcinといった石灰化に関連する蛋白、プロトンポンプのサブユニット(d1, d2, a3, a4など)の発現・微細局在を共焦点レーザー顕微鏡および透過型電子顕微鏡で解析するとともに、EDXやEPMAによる骨基質の石灰化結晶構造を解析する予定である。さらに、平成26年度の検索で重要なことは、骨細胞が伸ばす細胞突起がどのように分布しており、どういった領域の骨基質石灰化を調節するのかが重要な課題になる。これについては、現在、FIB-SEMを中心とした骨細胞ネットワークの立体構造解析を進めている。FGF23-klotho軸が骨細胞ネットワークで機能するかについては、DMP-1 promoter cassetteにFGF23cDNAを組み込んだ骨細胞特異的FGF23発現トランスジェニックマウスの所見が得られることを期待して進めている。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Altered distribution of bone matrix proteins and defective bone mineralization in klotho-deficient mice.2013
Author(s)
Sasaki M., Hasegawa T., Yamada T., Hongo H., Freitas PHL., Suzuki R., Yamamoto T., Tabata C., Toyosawa S., Yamamoto T., Oda K., Li M., Inoue N., Amizuka N.
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Journal Title
Bone.
Volume: 57
Pages: 206-219
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Histological examination on osteoblastic activities in the alveolar bone of transgenic mice with induced ablation of osteocytes.2013
Author(s)
Li M., Hasegawa T., Hongo H., Tatsumi S., Liu Z., Guo Y., Sasaki M., Tabata C., Yamamoto T., Ikeda K., Amizuka N.
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Journal Title
Histology and Histopathol.
Volume: 28
Pages: 327-335
Peer Reviewed
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