2013 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄痛覚系に対する交感神経のクロスト-クと新たな疼痛制御理論の提案
Project/Area Number |
24390423
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笹野 高嗣 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10125560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 憲明 東北大学, 大学病院, 講師 (70250800)
飯久保 正弘 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (80302157)
佐藤 しづ子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60225274)
市川 博之 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20193435)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯痛 / 疼痛マ-カ- / 疼痛制御 |
Research Abstract |
当該年度は、交付申請書に記載したように、中枢レベルで痛みを定量する方法を確立することを目的として実験を進めた。具体的には、下記に示す痛み関連分子の遺伝子発現を指標として、舌への急性痛刺激が三叉神経節に及ぼす影響について検討した。 その結果、以下の点を明らかにした。(1)capsaicin群のc-fos遺伝子発現は、30分後および60分後でcontrol群よりも有意に増加した(2)CGRP遺伝子発現は、capsaicin群で注入60分後にcontrol群と比べ有意に増加したが、vehicle群ではいずれの時間においてもcontrol群との間に有意差はみられなかった。(3)SP、NGFおよびBDNFの遺伝子発現は、いずれの時間においても、capsaicin群およびvehicle群ともにcontrol群との間に有意差はみられなかった。(4)LPA1遺伝子発現は、capsaicin群で注入30分後にcontrol群よりも有意に増加し、vehicle群との間にも有意差がみられたが、vehicle群ではいずれの時間群においてもcontrol群との間に有意差は見られなかった。(5)P2X4遺伝子発現は、注入60分後にcontrol群と比べてcapsaicin群では5.49倍、vehicle群では2.75倍に増加した。 以上の結果、舌への痛み刺激により、P2X4遺伝子発現はcontrol群の5.49倍(60分後)に増加し、この増加量は他の分子に比べ有意に大きかったことから、P2X4遺伝子は、c-Fosに代わる急性痛のマーカーとなる可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載したように、中枢レベルで痛みを定量する方法を確立することを目的として実験を進め、舌への痛み刺激により、P2X4遺伝子発現はcontrol群の5.49倍(60分後)に増加し、この増加量は他の分子に比べ有意に大きかったことから、P2X4遺伝子は、c-Fosに代わる急性痛のマーカーとなる可能性を示唆した。本研究成果は、慢性痛の発症メカニズムに関与するP2X4がc-Fosに代わる急性痛のマーカーとなる可能性を初めて示唆したものであり、痛みの分析・評価について、今後の研究に寄与することが多大と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本科学研究費をもとに痛みに関する実験を進めた中で、注目すべき課題が見つかった。すなわち、歯髄を電気刺激すると、中枢での変化は研究実績の項で述べたとおりであるが、抹消においては、刺激を受けた歯の周りの歯肉に広範囲に発赤が見られることを見出した。今後の研究の推進として、痛みの末梢機序として、刺激を受けた部位の周囲組織の血管拡張や血漿漏出など「神経原性炎症」に着目して研究を推進したいと考えている(未発表のため詳細は省略)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験が効率よく進み消耗品となる薬品(とくに高額の抗体類)が節約できた。また、学会発表のための旅費を計上していたが未使用に終わった。 学会発表や論文作成などに係る経費として最終年度である平成26年に使い切る予定である。
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Research Products
(1 results)