2013 Fiscal Year Annual Research Report
アラブ諸国における民主化運動の非アラブ・ムスリム社会への波及
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24401014
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
内藤 正典 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (10155640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 久枝 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (40207832)
嶋田 晴行 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (50568110)
見市 建 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (10457749)
見原 礼子 同志社大学, 高等研究教育機構, 准教授 (70580786)
DANISMAZ Idiris 同志社大学, 高等研究教育機構, 助教 (70631919)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アラブの春 / 中東民主化 / イスラーム / トルコ / 社会学 / 地域研究 |
Research Abstract |
平成25年度は主に以下の研究活動を行った。 ①トルコについては、現地調査を通じ、現政権に対する反政府運動が異なる二つの方向から提起されたことが注目される。第一は、ゲジ公園の再開発に反対する市民運動に端を発し、大都市各地で展開された反政府運動である。担い手は多様で、思想動向は反イスラーム主義を基調とするものの判然としない面もある。第二の反政府運動は、イスラーム主義市民運動である奉仕運動(Hizmet運動)によるもので、同じくイスラーム主義を掲げるエルドアン政権の汚職と腐敗を追及することから出発した。内政において批判を浴びることになったエルドアン首相の公正・発展党政権は、外交においては、イスラーム的公正を軸に正義を実践していることを引き続き強調した。とりわけエジプトでの軍事クーデタとムスリム同胞団への弾圧には激しい批判を展開し、ムスリムの手による民主化を擁護しようとしたが、この主張は多くのアラブ諸国から支持を得られず孤立する結果となった。 ②イランについては、主としてアラブの春の大きなインパクトとしてのシリア問題をめぐるイランの介入の問題と核開発交渉のリンケージ等について明らかにした。特に2013年6月のイラン大統領選挙前後のイランの民主化の動向を分析した。結果、シリア問題の混乱がイランの核交渉での交渉能力に少なからず影響を及ぼしたこと、また経済制裁の効果が出てきたことが、大統領選挙時には穏健派の大統領候補者への支持の拡大につながったことなどがわかった。 ③インドネシアについては、1998年の民主化後4度目の総選挙を控えた同国の情勢調査をとりわけイスラーム政治勢力に注目して行った。 ④アフガニスタンについては、引き続き現地調査が困難なことから、米国にて議会図書館での資料収集およびブルッキングス研究所、世界銀行等でアフガニスタン情勢について聞き取りを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、いわゆる「アラブの春」が非アラブ地域においてどのように展開するか、その際、いかなる変容を経験するかを基本的な問題意識として進められてきた。研究自体は、すべての分担者において順調に進捗しているのだが、当初の問い、すなわち「アラブの春」と言われた中東民主化プロセスそのものについては、進展がないどころか、民主化に逆行する方向が顕在化している。このことは、研究者である我々にとっても意外な面を含むものの、民主化が遅滞もしくは退行する現象は、すでに昨年度の段階ではっきりしていたため、平成25年度においては、もっぱら、「アラブの春」の退行がどのような影響を非アラブ圏諸国に及ぼすのかという点に焦点を当て、研究代表者、研究分担者それぞれの専門分野で研究を進めることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のような動向をふまえ、現在、アラブ諸国のみならず、非アラブ諸国においても、民主化からの退行現象が幅広くみられることに注目し、イスラーム的倫理と正義が内外の政治において機能しなくなっている原因の究明に集中することで最終年度の研究を完成させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①産前産後休暇の取得により、研究分担者である見原礼子氏のヨーロッパ出張を実施できなかったため。 ②諸般の事情により、連携研究者である横田貴之氏の本研究枠組みにおけるエジプト出張を実施できなかったため。 当該助成金は、上記2名の平成26年度の旅費に充てるほか、研究代表者および研究分担者が調査のためより長期の滞在を必要とする場合の旅費に充てる予定である。
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Research Products
(32 results)