2012 Fiscal Year Annual Research Report
中国とロシアにおける渤海(698~926年)の考古学的研究
Project/Area Number |
24401033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
小嶋 芳孝 金沢学院大学, 文学部, 教授 (10410367)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 渤海 / ロシア沿海地方 / ポシエト湾 / 中国東北地方 / 契丹 |
Research Abstract |
調査経過5月11日~13日に中国を訪問し、夏期調査の打合せを行った。6月2日・3日に、北海道大学で開催された研究集会に参加したロシア科学アカデミー極東支部歴史学考古学民族学研究所博物館のニキーチン館長と面会し、8月の調査について協議した。8月3日~10日に、ロシアでの調査を実施。参加者は、小嶋の他に中澤寛将(青森県教委主事)、酒寄雅志(國學院大學栃木短大教授)。沿海地方南部のハサン区にあるポシエト湾で海岸部の遺跡踏査を行った。8月21日~9月2日に、渤海上京城跡など中国東北地方の遣跡を踏査。参加者は小嶋の他に酒寄雅志(國學院大學栃木短大教授)、鈴木靖民(横浜市立博物館長)、田村晃一(青山学院大学名誉教授)。12月22日~27日に、小嶋がウラジオストクを訪問してニキーチン館長と調査報告書の作成や進捗状況について協議し、また3月調査の内容について打合せを行った。また、3月末で期限が切れる研究協力協定の再締結についても相談し、従前の協定内容を2015年3月まで延長することとして、双方が手続きを進めることとした。3月17目~25日にウラジオストクとアルセニエフを訪問し、沿海地方の渤海遺跡から出土した土器とガラス玉を調査。参加者は、小嶋の他に中村晋也(金沢学院大学准教授)、竹森杏奈(金沢学院大学学生)。 調査成果8月のロシア調査では、ポシエト湾に面したススロバ半島とクラブ半島、フルゲルマ島に渤海時代の遺跡が所在していることを確認できた。これらの遺跡は、ポシエト湾の奥に造営されているクラスキノ城跡を中心とした港湾施設群を構成していたと推定している。中国調査では、渤海上京城跡などの構造や立地環境などを確認できた。また、中国における渤海遺跡に関する資料の収集が出来た。3月のウラジオストクでの資料調査では、チエルニヤチノ遺跡から出土したガラス玉を中心に検討を行い、10世紀頃を境にガラス玉の製作技法がまき付け技法から鋳型技法に変化している可能性が高いことを明らかに出来た。アルセニエフでは周辺から出土した土器を検討し、10世紀頃から契丹系の回転施文がおこなわれるなど土器様相が変化していることを確認した。この調査で、土器とガラス玉が共に、渤海が滅亡した926年前後に製作技法などに変化が見られることを把握できた。契丹が影響を強めていく中で、渤海の領域における生産活動も技術的変化が生じていたことを推定できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成12年度に刊行を予定していた、『ロシア沿海地方の渤海遺跡の研究』がロシア側研究者のデータ整理が遅れて、年度内に刊行できなかった。3月にウラジオストクでニキーチン館長と協議して、2013年度中の刊行を目指して努力することとした。現在、遺跡データベースは文献一覧を除いて完成しており、また遺跡分布図も遺跡類が多いゼルカリナヤ川流域以外はほぼ完成している。
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Strategy for Future Research Activity |
ロシア科学アカデミー極東支部歴史学考古学民族学研究所と金沢学院大学の研究協力協定が3月末で期限を迎えたため、新協定締結について協議を進めてきた。3月にウラジオストクを訪問した際に新協定を締結する予定だったが、協定内容を更に検討する必要があると突然通告され、ニキーチン館長と協定条文の再検討を進めている。夏までには新協定を締結したいと考えている。2013年度は、ロシア沿海地方での調査成果をまとめた報告書を刊行し、また中国での調査は関係文献資料の収集や遺跡踏査を中心に進め、2013年度は遼寧省内での調査を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度に計画していた『ロシア沿海地方の渤海遺跡研究』の原稿執筆が遅れたため、予定を変更して2013年度に刊行をおこないたい。2013年度は、報告書刊行のための打合せ等でロシアを訪問し、あわせて資料調査などの補足調査をおこないたい。また、中国遼寧省所在の遺跡を踏査し、関係資料の調査をおこないたい。
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