2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国とロシアにおける渤海(698~926年)の考古学的研究
Project/Area Number |
24401033
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
小嶋 芳孝 金沢学院大学, 文学部, 教授 (10410367)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 渤海 / ロシア沿海地方 / 中国東北地方 |
Research Abstract |
平成25年度調査は、ロシア沿海地方での補足調査と中国遼寧省を中心とする渤海の境界領域の様相を把握することを目的としていた。ロシアでの調査は、平成25年3月末で期限が切れる協定書の延長について協議が整わず、当初予定していたロシアでの補足調査を実施することができなかった。中国での調査は、6月2日と3日に延辺朝鮮族自治州延吉市を訪問し、2012年9月に開館した延辺朝鮮自治州博物館を見学。竜頭山墓群の三彩俑や金銅製冠など初公開の資料があった。その後、延吉市内にある北大古城を訪ねた。北大古城は渤海の平地城で、戦前の調査で緑釉瓦などが出土している。住宅や商店・工場が建ち並んでいて遺跡を確認することはできなかったが、立地を確認することはできた。8月4日~11日にかけて、中国遼寧省と内蒙古自治区を訪問。この調査の目的は、渤海建国のきっかけとなった営州(現在の遼寧省朝陽市)訪問と、遼代遺跡から出土する渤海系瓦の調査である。朝陽は、698年に渤海初代王大祚栄が建国前に幽閉されていた営州に比定されている。朝陽市では市立博物館を見学。内蒙古自治区では、渤海系瓦当の出土が報告されている饒州古城・遼上京・祖州城を訪問し、博物館で祖州城から出土した瓦当を実見できた。9月20日・21日に、ロシア科学アカデミー極東支部歴史学考古学民族学研究所が主催した研究集会に参加するためウラジオストク市に出張し、「渤海における五京制の諸問題-旧国に関して」と題して報告した。報告書作成作業では、ロシアで調査した遺物の実測図を整理すると共にトレースをおこなった。また、中国の渤海遺跡に関する文献資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年3月末で期限が切れる協定書の延長について、ロシア科学アカデミー極東支部歴史学考古学民族学研究所から調査にかかる費用を調査着手前にロシア側の指定する銀行に振り込むよう協定文の変更の要求があった。当方は、このような措置は会計処理上できないことを説明し、新協定の締結ができない事態となった。結局、12月になってロシア側が当方の主張を受け入れて、従前通りの内容で新協定を締結することができた。以上の経過のため、当初予定していたロシアでの補足調査は実施することができなかった。また、ロシア沿海地方の遺跡データベスは地名表はほぼ完成しているが、遺跡地図の完成が遅れている。このため、平成25年度に予定していたロシア沿海地方における渤海遺跡の研究を掲載する報告書を刊行することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、報告書作成に向けてデータベースの完成を目指すと共に、原稿執筆・編集を進めたい。また、昨年実施できなかったロシアでの補足調査、中国東北地方における資料調査を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に予定していたロシア沿海地方の渤海遺跡に関する調査報告書が、作業の遅延のため刊行できなかった。また、3月に招聘を予定していた中国人研究者二名が、中国側の事情で来日できなかったこと等による。 平成26年度は、当初計画で予定していた中国の渤海遺跡に関する調査報告と平成25年度に刊行できなかった報告を併せて一括で報告書を刊行する。中国またはロシアから研究者を招へいして、研究集会を開催する。
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