2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国とロシアにおける渤海(698~926年)の考古学的研究
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24401033
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
小嶋 芳孝 金沢学院大学, 文学部, 教授 (10410367)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 渤海 / 靺鞨 / ユウ婁 / 半拉城の石仏 / ロシア / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の調査は、平成25年度までの調査の補足と報告書の刊行を目指して実施した。中国東北地方の調査では、当初予定を変更して黒竜江省北部のユウ婁・靺鞨の遺跡を訪ねて、渤海の北方境界領域の様相を検討した。8月1日~9日に訪問し、初期靺鞨文化の標識遺跡である同仁遺跡や、ユウ婁の遺跡とされている風林古城を訪ねた。黒竜江とウスリー河に挟まれた地域に、ユウ婁から靺鞨の遺跡が多数営まれていることを確認できた。 5月29日~6月1日と3月15日~18日の二回にわたり、台湾の国立故宮博物院に所蔵されている半拉城(吉林省琿春市)出土の渤海石仏20点を調査した。この資料は、戦後に日本政府が中華民国に返還した文化財の一部である。内訳は石仏13体、土製仏1体、金銅仏頭部1点、瓦当3点、平瓦1点、三彩龍頭瓦1点である。石仏は二仏并座像が多く、器高20センチ以下の小型品である。また、高さ9.5センチの彩色土製二仏并座像を確認した。3月17日には、故宮博物院で館員と学生を対象として渤海研究の概要を紹介する小規模な報告会をおこなった。 ロシアでは、9月7日~11日に、ウラジオストク市にあるロシア科学アカデミー極東支部歴史学考古学民族学研究所を訪問。調査報告書について打ち合わせを行い、あわせてプラホドニキ山城出土の鉄釜の実測を行った。 このほか、福井県立歴史博物館で1940年代に斎藤優氏が発掘した西古城と半拉城(いずれも中国吉林省)出土の瓦を調査し、胎土に相違が見られることを確認した。この結果、西古城と半拉城では別々の瓦窯が置かれていたことが推測できる。 また、2015年3月1日に、金沢市文化ホールで調査報告会「渤海の実像に迫る」を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現地調査はほぼ完了したが、昨年度予定していた報告書の刊行ができなかった。刊行が遅延した理由は、共同で調査してきたロシア科学アカデミー極東支部歴史学考古学民族学研究所の所員が、研究所の事情で原稿を完成させることが困難になり、報告書の構成に大幅な変更が生じたことによる。また、ロシア科学アカデミー極東支部から沿海地方出土のガラス玉を借用して科学分析を実施することを計画していたが、研究所から借用書を県庁ないし市役所と連名で提出するよう求められ、計画を断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、報告書の構成を変更して刊行を果たしたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度に調査報告書を刊行する予定だったが、ロシア科学アカデミー極東支部歴史学考古学民族学研究所の所員が研究所の事情で原稿を完成させることが困難になった。このため、報告書の構成・内容に大幅な変更を生じることになり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に、報告書を刊行する。次年度使用額は、印刷費・消耗品・発送費など報告書作成に関係する費用と、ロシアとの打ち合わせにともなう旅費などに充当したい。 (次年度使用額1,517,104円の内訳):印刷費1,270,000円・消耗品費32,274円・報告書発送費24,750円・報告書発送にかかる袋詰めアルバイト賃金10,080円・ウラジオストクへの旅費180,000円
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