2013 Fiscal Year Annual Research Report
ネオ・リベラリズムの進展とアジア化するオーストラリア社会に関する人文地理学的研究
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24401036
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Section | 海外学術 |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堤 純 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90281766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 道代 和歌山大学, 観光学部, 教授 (40368395)
葉 せいい 茨城大学, 人文学部, 教授 (30242332)
筒井 由起乃 追手門学院大学, 国際学部, 准教授 (10368186)
松井 圭介 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60302353)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オーストラリア / 多文化社会 / ネオ・リベラリズム / アジア化 / GIS |
Research Abstract |
本研究は研究期間の4年にわたり,オーストラリアを主たる事例地域とする現地調査を重視している。研究2年目の平成25年度には,現地調査による情報収集を精力的に行った。 平成25年8月下旬の約10日間には,メルボルンを拠点として現地の研究者(研究協力者)らとの間で研究の進め方,データの収集の仕方,研究成果の公表方法などについて詳細な打ち合わせを行うことができた。また,続く9月にはオーストラリア西部のパースに移動し,自然条件に厳しく規定されるオーストラリアの地域性に関する現地調査を行った。パースから南西部の一帯は,シドニーやメルボルンなどの立地する東海岸との類似点が多いことを改めて再認識すると同時に,パースから北部および北東部にかけての一帯の広大な砂漠地帯には,鉱山集落および重要なインフラとしての水やガスのパイプラインと幹線国道を除けば人工物は一切見られない極めて特殊かつ過酷な地域であることが明らかになった。しかし,これらの資源採掘がオーストラリア経済に与える影響,およびパースという都市の拠点性の増大に大きく寄与していることは明らかであり,統計データなどを合わせた詳細な分析が今後不可欠であることもわかった。また,平成26年2月には,農林漁業および観光を主産業とするタスマニア島においても現地調査を実施した。 今後は現地調査で収集したデータの解析を進め,次年度以降に予定している詳細な現地調査(事例調査)に資する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象期間後半の2年間(3~4年目)で行う詳細な調査対象地区を,予定通りに選定することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度,25年度に得られた成果をもとに,3年目に当たる平成26年度には詳細な現地調査に着手する。主としてオーストラリア南東部の諸州を重点的に調査する予定である。その際,ヴェトナム系,イタリア系,ギリシア系,中国系等の多文化社会の形成にとって特徴的な役割を果たした各コミュニティを対象に,ホスト社会との共存/住み分けの状況や,文化アイデンティティに関わる様々な問題について,詳細な聞き取り調査を実施する。 研究分担者の吉田は,過去2年間に実施したシドニーとメルボルンでの調査結果に基づき,シドニーの郊外を対象に,イタリア人コミュニティの実態についての本格的調査を実施する。研究分担者の葉は,過去2年間に実施したシドニーとキャンベラでの調査結果に基づき,オーストラリアの大都市における中国人コミュニティの実態についての本格的調査を実施する。 研究分担者の筒井は,過去2年間に実施したアデレードとメルボルンでの調査結果に基づき,オーストラリアの大都市におけるヴェトナム人コミュニティの実態についての本格的調査を実施する。研究分担者の松井は,過去2年間に実施した調査結果に基づき,観光化の進展に伴うオーストラリア社会の変容についての本格的調査を実施する。 研究代表者の堤は,本科研費プロジェクトで購入した,センサス全てのデータへのアクセス権とGISデータの無制限ダウンロード機能が一体化したソフトウェアである「Table Builder」を活用して,分析を効率的に進める。 これら一連の調査や分析を進めることにより,平成26年度後半をメドに,日本地理学会や人文地理学会,国際地理学連合(IGU)などでの場において,本研究プロジェクトの中間成果を発表することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者の筒井が平成25年度後半の半年間にわたり育児休業を取得した。そのため,筒井への分担金をすべて繰り越し可能な「基金」での配分とした。筒井は平成26年度には研究に復帰することが決まっており,昨年度分と今年度分の予算を合算して使用することにより,研究を精力的に進める予定である。 研究代表者,他の分担者にも若干の残金が生じたが,これらはすべて今年度分と合算して現地調査に充てる予定である。
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