2013 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナムにおける公的医療保険の拡大とその影響-適切な制度設計にむけて
Project/Area Number |
24402018
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
島村 靖治 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (50541637)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 浩之 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (40621751)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 医療保険制度 / 医療経済学 / 社会保障 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度は9月にベトナム中部の都市フエで開催された国際シンポジウムにおいて"Social and Economic Aspects of Health Care at Primary Level in the Central Region of Vietnam"というタイトルで研究報告を行った(島村)。報告では、これまでの調査で把握することのできたベトナムにおけるプライマリー・ヘルスケア・サービス提供体制の概要を示し、同時に現行体制が抱える問題点について明らかにした。更に、ベトナム政府が目指す医療皆保険制度の導入が、そうした問題の解決につながるのかどうかについての議論も行った。加えて国内では、12月に行われた国際開発学会第24回全国大会において「ベトナムにおける公的医療保険の拡大とその影響‐適切な制度設計にむけて‐」と題し、ベトナムの医療保険制度の概要を解説、医療保険への加入と医療施設選択との相関関係についての研究発表を行った(島村)。本研究では、ベトナム統計局が公表している大規模家計調査データを用い、医療保険に加入している人々がどのような医療施設を利用する傾向があるかを分析している。分析結果からは、医療保険に加入している人々は、村レベルの小さな病院ではなく、郡レベルの比較的大きな病院で診察を受ける傾向があることが明らかになった。しかし、具体的にどのような疾病・疾患に対する医療サービスの利用が増加しているかについては詳細な情報を持ち合わせていないため分析を行うことができていない。この点については、現在、行っている独自調査の実施を待つ必要がある。なお、ベトナムにおける公的医療保険制度の概要についてはワーキングペーパー"Public Health Insurance in Vietnam towards Universal Coverage: Identifying the challenges, issues, and problems in its design and organizational practices"を執筆、査読つき学会誌へ投稿している(松島・山田)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体の達成度に遅れが生じている主な理由は、現地における家計・医療施設調査実施の遅れによるものである。現地調査実施の遅延は、調査にあたっての事前準備に想定を上回る日数を要したことが主な原因である。特に、我々の独自調査は医療施設へのインタビュー調査や診療履歴情報の収集を含んでいるため、郡レベルでの保健システムを管轄する行政組織の理解および協力を得ることが不可欠であった。そして、その折衝をカウンターパートであるフエ医科薬科大学の研究チームに依頼していたが、彼らにとっても予想を上回る日数を必要としたことが調査の実施を遅らせる結果につながった。
|
Strategy for Future Research Activity |
現地調査の実施時期に遅延はあったものの、第1回目の調査については平成26年1月にThua Thien Hue省における調査を完了。残る2省(Quang Tri, Khanh Hoa)についても、それぞれ平成26年4月および8月に調査を予定している。また、Thua Thien Hue省での調査により得られた情報を精査し、問題のあった箇所については修正していきたいと考えている。特に、郡病院における診療履歴情報は極めて膨大な情報であるため、その取扱いに苦慮している。一方で、こうした情報は外部からはアクセスすることが困難な、極めて秘匿性の高い情報である。個人情報の保護という観点からも、注意して取り扱っていきたい。なお、研究代表者は平成26年2月28日から5月18日の期間フエに滞在し、Quang Tri省における現地調査をモニタリングすることになっている。これ以上の遅延が生じないよう助言や働きかけをしていきたい。そして、調査の実施と並行して、これまでに得られたセカンダリーデータを用いて分析および論文の執筆を進めていく計画である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、現地調査の実施が遅れたためである。本研究はベトナム、フエ医科薬科大学と協力して実施しており、平成25年8月、医療施設、家計調査のための質問票の作成までを計画通り実施。しかし、平成25年9月以降、実際の調査の実施ための諸手続きがフエ大学および地方行政側の事情により遅延、平成25年度年度末時点において3省で実施予定の調査のうち、1省での調査しか完了していない。そのため、当初実施予定であった平成25年度の調査完了から平成27年度へと計画が後ろ倒しになった。それに伴い、調査にかかる費用の支払いも1年遅れての実施となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
Thua Thien Hue省における現地調査の実施時期に遅延はあったものの、残る2省での準備は順調に進んでいる。具体的には、平成26年4月および8月に調査の実施を予定している。そして、調査実施をモニタリングするため、研究代表者が現地に3ヶ月程滞在する計画を立てている。調査終了後は、データ入力等の作業が残るが、契約書に明記したすべての項目の履行を確認した後、遅延なく調査費用の払い込みを行いたい。なお、送金先はカウンターパートであるフエ医科薬科大学である。
|
Research Products
(3 results)