2015 Fiscal Year Annual Research Report
Expansion of Health Insurance Coverage and Its Effects in Vietnam
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24402018
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
島村 靖治 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (50541637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 浩之 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (40621751)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医療保険 / 医療経済学 / 社会保障制度 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、既存データを利用した分析については、省毎の保険加入率の変化の違いを利用したマクロスケールでの分析を更に進めた。具体的には、統計局や保健省など異なる政府機関が公開している統計データを用い、2006年から2012年の間の保険加入率の増加が医療サービスと需要と供給の双方のどのような変化を引き起こしたのかを分析した。そして、分析結果は医療経済学会第10回研究会などで発表を行い、フィードバックを受けつつ更なる改訂作業を続けている。次に、平成26年に中部ベトナムで実施した独自の家計調査および医療施設調査のデータを用いた研究については、データの整理を行うと共に分析を開始している。そして、分析結果を論文としてまとめ、国際セミナー等で研究発表も開始した。独自データを用いた研究テーマは多岐に渡るが、平成27年9月には病気になった人が医療施設を選択する際にどのようなファクターが最初に訪れる医療施設を決める要因になっているのかを分析した研究成果をフエ医科薬科大学で行われた国際セミナーで発表した。また、平成28年3月には、患者の医療施設選択行動のなかでも、近隣の村落病院を素通りし、他の政府系大病院や民間医療施設を訪問してしまう行動に焦点を当てた分析結果を発表している。こうした「素通り」行動を行っている人々の約半数は近隣の村落病院で十分な治療を受けることが可能だと考えられており、「素通り」行動は患者本人にとって余計な金銭的負担となるだけでなく、政府系の大病院での混雑の原因ともなっている。研究成果の発表を通じ、こうした問題に対する解決策の提言を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅延の原因は平成25年に実施予定であった第1回家計・医療施設調査が、カウンターパートであるフエ医科薬科大学の都合により丸1年その実施が遅れたことにある。独自の調査を実施するためには省政府の許可が必要であり、そのための交渉に時間を要したとの説明を受けている。そのため、独自の家計・医療施設調査データを用いた分析がすべて遅延する結果となった。しかしながら、平成26年2月にはThua Thien Hue省での調査を完了。続いて、6月にはQuang Tri省での調査、 9月にはKhanh Hoa省での調査を完了した。結果として、3省の50の村落医療施設での調査データが集められ、また合計約1500家計からの調査データも収集することができた。現在は、ペースをあげて独自調査データを用いた分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ベトナム政府が公表している統計データおよび国際NGOと協力して収集したデータを使った分析については予定通に進んでおり、いくつかの論文は既に査読つき国際学術誌に投稿し、その査読結果を待っている。他方、第1回目の独自の家計・医療施設調査データの分析については、できるだけペースを上げて分析を進めていく必要がある。患者の医療施設選択行動に関する分析だけでなく、医療保険への加入と医療サービスの利用との関係、医療保険に対する支払い意欲、母子保健サービスの利用、健康診断の利用についての分析、そして医療従事者の勤労意欲や仕事への満足度についての分析を進めていく予定である。なお、こうした第1回家計・医療施設調査データを用いた分析と平行して、平成28年実施予定の第2回家計・医療施設調査の準備も進めていく。我々の分析は現地での疾病・疾患の発生率をその背景としている。そのため、疾病・疾患の発生率の季節を考慮し、平成28年6月までにQuang Tri省、9月までにKhanh Hoa省での調査を完了する計画を立てている。そして、平成29年2月までに Thua Thien Hue省における第2回家計・医療施設調査を完了し、分析結果をまとめる。
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Causes of Carryover |
平成25年に実施予定であった第1回家計・医療施設調査が、カウンターパートであるフエ医科薬科大学の都合により丸1年その実施が遅れた。そのため、当初、平成27年に実施予定であった第2回家計・医療施設調査の実施も平成28年に延期せざるを得なくなったことが大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度より繰り越された予算は平成28年年度実施予定の第2回家計・医療施設調査のために利用する計画である。我々の研究は現地での疾病・疾患の発生率をその背景としている。そのため、疾病・疾患の発生率の季節を考慮し、平成28年6月までにQuang Tri省、9月までにKhanh Hoa省での調査を完了する計画を立てている。そして、平成29年2月までに Thua Thien Hue省における第2回家計・医療施設調査を完了する計画である。
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Research Products
(5 results)