2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24402020
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Section | 海外学術 |
Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
園部 哲史 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70254133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 啓二郎 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (50145653)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アフリカ / エチオピア / 産業発展 / 経営 / カイゼン / 普及 / 企業調査 |
Research Abstract |
アフリカの産業発展が大きく遅れている原因として、企業経営者が意外なほど経営の常識を知らないという問題が重要なのではないかという仮説を立て、世界銀行と国際協力機構の協力を得て社会実験を行ってきた。折からエチオピア政府は、日本的な経営として知られるカイゼンの全国的な普及運動を開始し、他の国々もその行方に関心を抱いている。本研究では、エチオピアで企業データを収集し、カイゼン普及のペースを左右する要因を洗い出す。特に、政府が国際協力機構の協力のもとに始めたカイゼントレーナーの養成や、カイゼン普及のためのキャンペーン、同業者組合における研修、メディアの報道、経営者間の口コミ等の情報経路のうち、何が知識の普及に強い効果を持ち、いかなるタイプの経営者がどのような経路の情報を信頼するかという点に注目して詳しい分析を行い、効果的な普及運動の設計を可能にすることが、本研究の目的である。 技術の普及のプロセスに関する理論的、実証的な研究にはかなりの歴史があり、多くのことが知られている。たとえば、普及の歩みは初めは非常に遅いが次第に加速して、普及率が十分に高まると再び減速するといったことや、新技術に対してどれほどの価値を見出すかは、企業や個人の間で大きなバラツキがあること等が知られているほか、どのような企業や個人がより高い価値を見出しより早く採用する傾向があるかについても、ある程度のことがわかっている。だがこれらの研究は、個々の技術や製品タイプの普及を対象としていて、カイゼンのように社会のさまざまな分野で利用され得る汎用性の広い知識やスキルの普及プロセスは、ほとんど研究されてこなかった。その点で本研究は新しい。さらに最近の行動経済学の成果を活用して、カイゼンを採用するタイミングの早い遅いを決める要因や情報の経路の分析を行うことから、新しい成果が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アジアでの経験から、アフリカにおいてもカイゼンが製造業のみならずサービス分野でも生産性や安全性を高めることが十分に予想される。エチオピアではカイゼンの普及を近代化運動の中心として位置づけているので、それは社会的な現象であり、個別の技術とは異なるプロセスで普及が進んでいくかもしれない。こうしたことから本研究では、製造業企業とともにサービス産業の企業の調査も行っている。 ただしエチオピアでは、製造業分野で先にカイゼンへの関心が高まったので、まず初年度である平成24年度には製造業企業200社の調査を先行して行い、サービス産業の企業200社を対象にした調査は平成25年度に行った。後述するように26年度には24年度と同一の製造業企業を訪ねて情報を集めてパネルデータを構築する予定である。サービス産業についてもいずれはパネルデータを構築するためのフォローアップ調査を行いたい。 平成25年度は、24年度の末に収集した製造業企業のデータを整理し、計量経済学的な分析を行い、いくつかの興味深い結果を得た。それらをまとめて論文を作成し始めたところである。年度の後半は先述のサービス産業の企業調査の質問票の作成、現地の調査員のトレーニング、調査の実施にエネルギーを集中した。研究は予定に従って、おおむね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では同一の製造業企業から時間を経て繰り返しデータを集めて、パネルデータを構築することをかねてから計画していた。その計画に沿って最終年度に当たる平成26年度には、平成24年度に調査した製造業企業200社を対象として、フォローアップ調査を行う。この調査では、カイゼンの実施状況、営業成績、生産販売活動の規模、立地、投資の状況や、所有者・経営者の職歴や学歴等、平成24年度のベースライン調査と同様の項目を網羅して情報を集める。 とくにカイゼンに関する情報をどこから得ているのか、逆に自らがカイゼンについて知っている情報をどこへ流すのか、カイゼンを実施して企業がどのように変化したかを丹念に調べたい。また、調査対象企業200社の中には、おそらく転業や廃業した企業もあると予想されるので、その関係者からできるだけ直接的に事情を聴きだしたい。 この研究では、経営者のリスク態度や時間選好といった、かつては観察が難しいとされていた要因についても、最近の行動経済学の成果を利用して情報を集めている。これらを含めてさまざまな要因がカイゼン導入の意思決定に及ぼす影響を、今後ますます詳しく調べていく予定である。 こうした企業調査の準備や実施に加えて、過去2年間の成果をまとめた論文が国際的に定評のあるジャーナルに掲載されるように努力するとともに、エチオピアでのワークショップの開催、その他の機会での論文発表、新しく収集したデータの分析などを積極的に進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた現地調査のための外国旅費が想定より安価だったため、研究費の残額が生じた。 平成26年度に行う予定の現地調査費の内容をより充実させるための費用として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)