2013 Fiscal Year Annual Research Report
マングローブ再生林のCO2固定能モデルと有機炭素供給力の定量評価に関する研究
Project/Area Number |
24405002
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
野瀬 昭博 佐賀大学, 農学部, 教授 (80045137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 紹輝 佐賀大学, 農学部, 教授 (90253517)
沖元 洋介 佐賀大学, 農学部, 特定研究員 (70598812)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マングローブ / CO2固定 / 生長予測モデル / 地球温暖化 / 森林管理モデル / 間伐 / 毎木調査 / 地域経済 |
Research Abstract |
今年度は森林管理モデルの開発を進める目的で、間伐効果の解明に重点を置き、インドネシア・スマトラ島南東部ランプン州東部マルガサリの20年齢オオバヒルギ再生林で調査した。 基本的調査と間伐処理:3つの調査地に半径7mの円形プロットを3こずつ計9つ設置し、プロット内の立木全ての本数と胸高直径(DBH)を測定し、全ての立木にタグを取付け、継続調査できる永久調査プロットとした。間伐前のバイオマス量と生育密度は、163 t/ ha(44.4 tC/ ha)と5,500木/haで1.5m間隔以下の高密度であったが、間伐後の生育密度はA、B区で2,555、3,053木/haへ減少し、A区では約2m間隔の密度まで低下した。 間伐による群落内光環境の変化:間伐前の光減衰率は97.8%であったが、間伐後はA区81.4%、B区84.4%と低下した。 間伐材の材体積及び経済性評価:幹の間伐材積量はA区52.9 m3/ha、B区20.3 m3/haであった。間伐材の乾物重は、それぞれA区62.5 t/ha(17.0 tC/ha)、B区24.0 t/ha(6.55 tC/ ha)と評価された。現地では、薪炭材のマングローブ材の価格は80,000 IDR/t(約800円)、製品化された木炭材は2,500 Rp/kg(約25円)で販売される。今後は地域経済の活性化に利用できる森林管理モデルの開発を進めたい。 オオバヒルギ再生林の光合成能力:間伐前の林内に7mの調査タワーを建て、キャノピー上層での光合成速度の光反応と温度反応を測定した。光合成の光反応で得た最大光合成速度(Pmax)は14.8mol/m/s、温度反応のPmaxは葉温29.4℃で16.8mol/m/sと適温域は30℃前後と推察された。 ヒマワリ・モデル試験:密度効果に草丈が影響することを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、(1)マングローブ再生林の炭素固定能を評価するCO2 固定予測モデルの確立、(2)間伐による個体数管理の影響を解明し、間伐によるマングローブ再生林の健全な育成やCO2 固定の効率化等を図る森林管理モデルを作成、(3)沿岸生態系への有機炭素供給力を評価できる手法を開発し、マングローブ再生林の生態学的な役割を定量評価することである。 平成24年度は、平成19・20年度JSPS二国間交流事業で調査した1~5年齢のフタバナヒルギ林において5年を経過した同一林での調査を行い、マングローブ個体の成長モデルをほぼ確定し、1x1mの密度で植林されたフタバナヒルギ林では8年目から成長の停滞が始まり10年目には最大成長に達し、原生林でみられる最終バイオマスを達成するためには適切な間伐が必要なことが明らかになった。この点では、当初の目的の(1)と、(2)の50%を達成したと評価できる。 間伐による個体数管理の影響については、同一林での間伐試験の提案に現地関係者の同意が得られず、森林管理モデルの開発ができない状態になった。しかし、平成25年度にはランプン州マルガサリにおいてフタバナヒルギに類似した生育特性を持ち東南アジアの代表的な植林種であるオオバヒルギの生育調査を実施することができ、20年齢のオオバヒルギ林で間伐の効果を検証する試験区を設定することができた。従って、当初の目的を達成するのに必要な状況を確保することができたと評価している。 以上のように本研究の目的を達成することは十分可能であるものの、同一林での調査の継続ができなくなった点を考慮し、概ね良好という評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、(1)マングローブ再生林の炭素固定能を評価するCO2 固定予測モデルの確立、(2)間伐による個体数管理の影響を解明し、間伐によるマングローブ再生林の健全な育成やCO2 固定の効率化等を図る森林管理モデルを作成、(3)沿岸生態系への有機炭素供給力を評価できる手法を開発し、マングローブ再生林の生態学的な役割を定量評価することである。 平成24年度にマングローブ個体の成長モデルをほぼ確定し、H25年度には、フタバナヒルギに類似した生育特性を持ち東南アジアの代表的な植林種であるオオバヒルギの生育調査を実施することができ、20年齢のオオバヒルギ林で間伐の効果を検証する試験区を設定することができた。今後は、昨年度に作成した50%及び75%間伐区において間伐の効果を生産構造と光合成・呼吸特性から調査し、CO2 固定の効率化等を図る森林管理モデルを作成する。 また、我々が係ったインドネシアのマングローブ植林地では、マングローブ植林地の皆伐を禁止する現地政府の意向が徹底し、調査のための間伐を行うことにも現地の理解が得にくい状況であることが明らかになった。この点は、ベトナム等の他地域の植林地に比べすぐれた点でもあるが、適正な森林管理への理解を阻む要因ともなっている。再生林の育成と地域資源の持続的且つ効率的な利用を目的とした森林管理のもとにマングローブ植林を活用した地球温暖化対策を図るには、この点に関する地域への啓蒙を積極的に行うことも必要であり、そのような取り組みも機会を見つけて実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、熱帯アジアにおけるマングローブ林の管理モデルを開発する際に重要な間伐が生産力の改善に及ぼす影響を定量的に評価できる2種類の間伐区(75%、50%間伐)を設定することができた。このような準備が整ったことから、平成26年度では、間伐による密度調整がマングローブ林のCO2固定能に及ぼす影響を調査するために、キャノピー上部で作業できるタワーを3脚建設し、CO2固定能のための光合成測定及び光環境の改善に伴う光合成機能の変化についての蛍光分析による解析と、地下部の掘り取り調査を含め群落の生産力を評価する生産構造の解明を環境条件が大きく異なる雨季(8月)と乾季(2月)に実施する。当初に計画した予算の範囲で本事業の目的を達成するために、本年度の予算を節減し次年度へ繰越すこととした。 マングローブ林のキャノピー上部(約8m)での光合成調査を可能にするタワーを3脚、建設する。マングローブの生産力の定量的評価には地下部の評価が欠かせないことから掘り取り調査と呼吸特性を含めた生産構造に関する調査を雨季(9月)に実施する。乾季(2月)には、間伐による光条件の変更が陰葉性の特性を有するオオバヒルギの光合成機能に及ぼす影響を解明することに焦点を当てた光合成特性の調査を実施する。
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[Presentation] Unused woody resources in the coastal community, obtained from2014
Author(s)
Y. Okimoto, A. Nose, D. Murdiyarso, A. Kustanti, R.A. Suwignyo, S.D. Sasmito
Organizer
“Increasing the Resilience of Mangrove-Aquaculture Socio-Ecological Systems in Southeast Asia”, Regional Conference. CIFOR Campus, Bogor, Indonesia.
Place of Presentation
CIFOR Campus, Bogor, Indonesia.
Year and Date
20140217-20140220