2013 Fiscal Year Annual Research Report
社会構造の地理変異から究明するアリ類におけるカスト特殊化の進化と意義
Project/Area Number |
24405010
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 教授 (50260683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 徹 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (00332594)
江口 克之 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30523419)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会構造 / 地理変異 / 繁殖雌形態 |
Research Abstract |
2013年度はタイの3か所と香港、マレーシアの1か所でGnamptogenys属のアリ類を探索しコロニーを採集した。主な結果は以下の通り。(1)香港のG. bicolor個体群は、すべて体サイズがやや大型の働きアリが繁殖しているコロニーで構成されていた。タイ北部チェンマイのドイステップでは1コロニーだけ発見され、複数の脱翅女王が繁殖していたが、チェンマイからほど近いドイチェンダオでは、いずれもやや大型の働きアリが繁殖しているコロニーだった。タイ東部でも本種を探索したが、発見することが出来なかった。インドネシアジャワ島東部でみられるような働きアリよりもはるかに巨大な無翅女王が繁殖するコロニーは、いずれの地域でも発見することは出来なかった。(2)インドネシア産もふくめて、タイの各地や香港、ベトナムなどで採集されたG. bicolorとその他の種のCOI領域の配列を解析したところ、G. bicolorはインドネシア産も含めて単系統群を構成し、同種とみなせることが判明した。また、形態から予測していた通り、G. bicolorは、G.menadensisと姉妹群を形成することが判明した。(3)有翅女王がタイ南部とタイ北部で採集したコロニーから得られた。基本的形態はかわらないが、タイ南部のものは、社会寄生種と思えるほど小型化した女王であった。無翅繁殖雌のみならず有翅雌の形態差も地域間で大きな相違があるようであったが、雄の体サイズは顕著な相違がなかった。(4)タイ産のG. bicolorを用いて働きアリと幼虫の一部をコロニーから隔離して飼育すると、やや大型の働きアリが生産される傾向が認められたが、ジャワ島東部で生産される巨大な無翅女王が生産されることはなかった。また、働きアリのうち大型個体が卵巣を発達させる傾向があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Gnamptogenys属の各種についての知見が集積してきた。またG. bicolorについては新たな個体群の調査をすることができ、さまざまな視点からの比較が可能になりつつあるため、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
系統解析:各地での調査を一層継続し、各地でGnamptogenys 属のコロニーを採集し社会構造やカストの形態的特殊化に関する種間と種内の地理変異の状況を明らかにする。また形態と分子による系統解析を行い種間の系統関係を明らかにする。昨年度の本属の各種を対象にした解析結果から、香港からインドネシアまで分布しているG. bicolorはすべて同種とみなすことが出来ると判明したので、今年度は本種の種内変異に注目して分子系統地理学的研究を実施する。 形態変異の解析:これまで蓄積してきた各種の標本を用いて、働きアリ・無翅女王・有翅女王・雄の外部形態変異の詳細な観察と測定を継続する。特にコロニー内のサイズ変異が著しく、なおかつ地理的な変異もあるG. bicolorとG. menadensisについては詳細な形態計測と解析を行う。 女王生産の誘導:室内でG. bicolorのコロニーを用いて女王生産の誘導を試みているが安定した生産には至っていないので、今年度も誘導実験をこころみ、特に無翅女王と働きアリの発生過程について進化発生学的研究を実施する/ 行動特性比較:G. bicolorとG. menadensisを中心に繁殖雌の行動特性を詳細に観察し脱翅女王、無翅女王、大型働きアリ間で比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は25年度内にタイでの調査を共同で実施している研究者を海外から招聘予定であったが、諸般の都合で招聘できなかったため次年度使用額が生じた。 今年度中に招聘する際の旅費として、使用する予定である。
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Research Products
(1 results)