2012 Fiscal Year Annual Research Report
野生ハツカネズミの歴史的拡散の時空間把握と局所適応遺伝子の探索
Project/Area Number |
24405013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 仁 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (40179239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 惇 福山大学, 生命工学部, 講師 (80399162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ハツカネズミ / 日本人の起源 / 有史以前農業の展開 / ミトコンドリアDNA / cytochrome b gene / control region |
Research Abstract |
野生ハツカネズミ(Mus musoulus)約300個体におけるミトコンドリアDNAのcytochrome b遺伝子(1140bp)およびコントロール領域(約800bp)の解析を行った。その結果、5つの古系統が存在し、そのうち3つはヒトの有史以前のユーラシアの展開とともに拡散したことが認められた。非拡散系統のうちの1つがネパールにあり、Mus musoulusの広域拡散以前の自然分布域にネパールが含まれていたことが示唆され、自然分布域の推定に重要な情報提供を行うことができた。ユーラシア大陸への有史以前の拡散については、中国北部には北ユーラシア系統(Mus musculus musuculus ; MUS)がこれまで想定されていたよりも古い時代(例えば2万年前)に移入があったことが示唆された。南アジア系統(Mus musculus castaneus ; CAS)の東南アジア、東アジアの展開はそれよりも新しく、およそ9000年ほど前と推定された。日本列島には、有史以前におよそ4500年前ほどに南中国(珠川沿岸域)よりCASが移入し、比較的最近(例えば2000年ほど前)、朝鮮半島よりMUSが移入したことが初めて示唆され、日本産野生ハツカネズミの起源地に関する明確な場所を提示することに成功した。さらに、日本列島のCASは東北海道および東北地方において、それぞれの地域内でさらにハプロタイプの分化が認められ、有史以前の古い時代にこれらの地域に移入があったことを示す有力な証拠を得ることができた。以上のように、今年度の研究において、日本列島に有史以前の人類の移入と農業の展開に関する貴重な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生ハツカネズミのサンプル収集は国内、海外ともに順調に行われ、特にオーストラリアにおいては、白班を持つ集団の特定や、これまで西ヨーロッパ由来系統のみが報告されている中で、南アジア系統の存在を知ることができた。上述の研究実績の概要にも記したように、多くの新規の学術的知見を得ることができた。この研究内容で国際誌への論文投稿も行い、受理直前の段階に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、1)ハツカネズミのそもそもの自然分布域における遺伝的空間分化について核遺伝子の変異の解析を行い、論文投稿を行う、そして2)有史以前に移入した日本産野生ハツカネズミの2つの系統の起源と移入時期の推定を行い、論文投稿をめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
剥製標本の毛色変異とMclrおよびAsipの2つの遺伝子の変異の解析を行い、野生のハツカネズミにみられる毛色変異の責任変異の探索と、毛色において空間的分化が引き起こされた要因について推察する。すなわち、特定された責任変異周辺の染色体領域の遺伝的多様性の解析を行い、自然選択の関与の有無について検討する。なお、実績報告書に未使用額が記載されているが、これは年度末の使用により会計データベースに反映されなかったためである。
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Research Products
(5 results)