2015 Fiscal Year Annual Research Report
栽培ガキの起源種解明のための東アジアに分布するカキ属植物の探索とその多様性解析
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24405024
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米森 敬三 龍谷大学, 農学部, 教授 (10111949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 真哉 近畿大学, 農学部, 准教授 (20330243)
佐藤 明彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所, 上席研究員 (30355440)
北島 宣 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70135549)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 園芸学 / 植物 / 分類学 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東アジアの熱帯・亜熱帯地域に生息するカキ属植物を探索・調査し、これまでの研究から栽培ガキの起源に関与したと考えているD. glandulosa、D. lotus、D. oleifera および研究代表者らが中国の雲南省とベトナムのLong Son省で発見した野毛柿および Hong Cocと呼ばれている栽培ガキに非常に類似した種を中心に、これらの種の分布域とその多様性を調査するとともに、東アジアに分布するカキ属植物の形態的特性や分子生物学的解析から栽培ガキの起源種を考察することを目的としている。 この目的のため、ベトナムの北部山岳地域に分布するカキ属植物の調査を実施してきたが、これまで採取したカキ属植物はカキ(D. kaki)グループとD. oleiferaグループに大別された。カキグループに属するものは導入された栽培ガキであり、また、Hong Cocと呼ばれていた種もD. oleiferaである可能性が高く、D. glandulosaや野毛柿と近縁の種は発見できなかった。そこで本年度はベトナムでの調査を縮小し、タイ北部山岳地域と野毛柿が分布する中国雲南省を中心として、果実の調査できる期間での探索を予定していた。しかし、8月下旬に中国側共同研究者と調査計画を検討したが、調査地域の特定が困難であるとの結論を得ると同時に、日本側研究者と中国側研究者の日程調整ができなかった。また、タイ側共同研究者との調査地域と日程の調整のため、9月上旬にタイに出張する予定であったが、タイ側共同研究者の突然の急性白血病発症のため、出張そのものを中止せざるを得なくなった。このため、昨年度は予定していた調査を中止し、これまでに採取したいくつかの試料の分析を再度実施し、これまでの解析結果を再確認した。さらに、将来の遺伝資源として、現在日本に存在するカキ属植物の収集・保存に向けた取組を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで実施してきた調査結果をまとめるにあたって、最終確認のために必要であると考えていた中国雲南省地域およびタイ北部山岳地域でのカキ属植物の再調査を実施することができなかった。すなわち、中国雲南省の調査は中国側共同研究者との調査計画の検討段階で、調査地域の特定が困難であることが判明したことに加え、日本側研究者と中国側研究者の調査日程の調整が上手くいかなかった。さらに、タイ北部山岳地域の調査については、タイ側共同研究者が突然急性白血病を発症し、調査地域やその日程の検討そのものを実施できなかった。このように、昨年度は計画していた調査を中止せざるを得ない状況となった。ただ、これまで、採取したカキ属植物の類縁関係を再確認できたこと、また、日本に存在する遺伝資源としてのカキ属植物の収集・保存に向けた取組を実施できた意義は大きい。これらの結果を総合的に鑑みて、全体としては「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの中国での中国側共同研究者との検討から考えて、雲南省で新たな地域を特定し、その探索調査を計画することには少し無理があり、実際的ではないと考えられる。ただ、タイの北部山岳地域の調査は、タイ側共同研究者の健康が現在はかなり回復しているようであり、共同研究者の様子をもう少し見守る必要はあるが、秋には北部山岳地域でのカキ属植物の調査が実施できるのではないかと考えられる。このため、次年度は最終の取りまとめ年度ということもあり、カキ属植物の調査はタイ北部山岳地域での探索のみにとどめ、これまでの結果を総括的にまとめ、これまでの研究成果を論文として投稿することにもっとも重点を置くことにする。 また、タイのカセサート大学で収集・保存されているカキ属植物および日本に存在しているカキ属植物にも重点を置き、これまでの類縁関係の解析にこれらの種を加え、より網羅的なカキ属植物の系統分類を考察する。さらに、これまで収集したカキ属植物や日本に存在するカキ属植物の将来の重要な遺伝資源としての利用の可能性を考察すると共に、その保存・維持のための施設を圃場に構築することを検討する。
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Causes of Carryover |
前述のように、予定していた中国雲南省およびタイ北部山岳地域でのカキ属植物の探索・調査を断念せざるを得なかった。このため、それらの調査に予定していた経費を使用しなかった。さらに、これらの調査によって採取することになると考えていた試料の分析等に予定していた経費も使用できなかった。このため、これらの未使用の経費によって次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、延期したタイ北部山岳地域でのカキ属植物の調査および調査によって採取する試料の分析に必要な経費として使用する。さらに、次年度が本研究課題の最終年度となるので、これまでの結果を総括的にまとめ、論文として公表するための経費として使用する。また、これまで収集したカキ属植物や日本に存在するカキ属植物に関して、将来の重要な遺伝資源としての利用の可能性を考慮し、その保存・維持のための施設としてのビニールハウスの設置経費として使用する。
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