2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24405030
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 助教 (90511238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 微生物機能 / 金属ナノ粒子 / 極限環境微生物 |
Research Abstract |
本研究では、異化的金属代謝能を有する微生物 Shewanella livingstonensis Ac10 の金属呼吸の分子基盤の解明と新奇の金属ナノ粒子合成微生物の探索と微生物による金属ナノ粒子合成系の開発を通して、金属ナノ材料の精密合成への微生物機能の応用を目指している。中国内モンゴル自治区草原保護区よりど土壌を採取し、希釈度の異なる LB 寒天培地に播種した。4度で静置培養した結果得られたコロニーを採取し、MALDI-TOF MS および 16S rDNA 配列解析による系統解析を行った。4度で良好に生育する単離株群を液体培養し、菌体培養液に硝酸銀溶液を添加し、静置した。静置後の可視吸光スペクトルを解析し、銀ナノ粒子に由来する 400 nm 付近に特異的な吸収を有する菌株を探索することで銀ナノ粒子合成能を有する菌株を取得した。本菌株は、Pseudomonas 属に属する菌株であることがわかった。透過型電子顕微鏡を用いて本菌由来の銀ナノ粒子の形状を解析した結果、14.8±4.9 nm の銀ナノ粒子を形成していることが明らかとなった。同様に塩化金溶液を添加することで、本菌は金ナノ粒子を形成していた。以上の結果から、本菌は銀、および金の酸化物存在下でこれらを還元し、均一にナノサイズ加工された金属ナノ粒子を形成する仕組みを有していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では驚くべき多様性を有する微生物の機能を積極的に活用することを目的とし、精密かつ簡便な合成法の開発は期待される金属ナノ材料の合成に微生物を応用することを目指している。H24 年度では中国内モンゴル自治区の草原地域より銀および金ナノ粒子を形成能を有する新規の低温適応性 Pseudomonas 属細菌を単離することに成功した。特に本菌は、20 nm 以下に均一にナノサイズ加工された銀ナノ粒子を合成したことから、本菌には厳密に銀ナノ粒子をサイズ制御する機構を有していることを示唆している。金属ナノ粒子の触媒活性や反応活性は、それらのサイズや形状に依存することから、粒径や形状が厳密に制御された合成系の確立が求められるが、本菌株をこの条件を満たしていると考えられ、初年度の実験計画を概ね達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、均一にサイズ加工された金属ナノ粒子を合成する新規の低温適応性細菌を獲得することができた。今後は、本菌の金属ナノ粒子合成の温度や pH、金属種の選択性など合成条件の検討、および至適化について検討する。均一かつ効率的にナノ粒子を合成する条件を確立した後に、ナノ粒子合成時に誘導生産されるタンパク質群について解析する。硝酸銀もしくは塩化金添加時に生産量が増加するタンパク質群を解析するために、SDS-PAGE および二次元電気泳動を行う。金属イオン誘導的に生産量が増加するタンパク質は、N 末端アミノ酸配列の解析とインバース PCR によって当該タンパク質をコードする遺伝子領域を決定する。これらの実験系から、本菌における金属ナノ粒子合成機構の解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、中国内モンゴル自治区草原地域より銀ナノ粒子合成能を有する新奇の低温適応性細菌の単離に成功した。一方で、銀ナノ粒子合成反応の温度や pH などの諸条件の至適化は十分でないことから、次年度に継続することとした。 平成25年度は、金属ナノ粒子合成能を有する低温適応性の Pseudomonas 属細菌について、金属ナノ粒子形成条件の至適化を行う。硝酸銀以外に、光触媒として利用される金ナノ粒子形成能についても合成条件の至適化を試みる。形成されるナノ粒子の大きさや形状を透過型電子顕微鏡で解析する。そのために必要な試薬の購入に、60万円見込んでいる。金属ナノ粒子合成用のガラス器具代として30万円、タンパク質解析用試薬に60万円、成果発表を行うための旅費として50万円、論文投稿量として30万円を見込んでいる。
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