2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24405030
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 助教 (90511238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 微生物機能 / 金属ナノ粒子 / 極限環境微生物 |
Research Abstract |
H24年度に中国内モンゴル自治区草原地域より見いだした銀ナノ粒子合成能を有する Psseudomonas 属細菌は、硝酸銀存在下で粒径約 20 nm にサイズ加工された銀ナノ粒子を合成する。本菌由来の銀ナノ粒子は、本菌の細胞膜表層で合成されることが示唆された。また、硝酸銀と同様に塩化金を添加した場合、金ナノ粒子も合成されることがわかった。本菌は、多様な触媒活性を有する銀、および金ナノ粒子を合成する仕組みを有していることが示された。一方で、多様な金属酸化物を用いた金属呼吸能を有する金属還元性細菌 Shewanella livingstonensis Ac10 の金属呼吸機構を解析した結果、本菌は三価鉄(クエン酸鉄)誘導的にリン酸選択的チャネルタンパク質 PhoE を生産することがわかっている。本菌の PhoE 欠損株はフマル酸を電子受容体としたときは野生株と同様に生育するが、クエン酸鉄存在下では顕著に生育能が低下することがわかった。PhoE の発現はクエン酸鉄存在下で転写レベルで誘導されるが、金属呼吸における PhoE の生理的役割は明らかでない。最終電子受容体を難溶性の三価鉄(酸化鉄)を用いたとき、PhoE の欠損は酸化鉄の還元には影響せず、培養に伴って四酸化鉄が生じることがわかった。以上の結果は、本菌の金属呼吸において PhoE は可溶性の三価鉄の還元に重要なチャンネルタンパク質であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では驚くべき多様性と環境適応性を示す微生物の機能を積極的に応用することを目的とし、微生物による金属ナノ粒子の合成系の確立を目指している。本年度は、本研究で採取された金属ナノ粒子合成性菌の獲得に成功し、本菌が光触媒に応用可能な銀、および金ナノ粒子を合成することを明らかにした。さらに、多様な金属を最終電子受容体とした金属呼吸能を有する Shewanella livingstonensis Ac10 の金属呼吸機構の解明に取り組んだ結果、本菌が機能未知チャンネルタンパク質である PhoE を介した可溶性の金属酸化物の還元機構を有していることを示した。PhoE を介した金属呼吸はこれまで報告がないことから、本菌は新規の呼吸系を有していることが示唆されている。以上の結果、本研究は当初の計画通り進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では銀および金ナノ粒子を合成する Pseudomonas 属細菌の獲得に成功している。今度、本菌に由来する金属ナノ粒子の触媒能、および詳細な構造解析を行うことで、微生物由来の金属ナノ粒子の有用性を解析する。ナノ粒子の解析には透過型電子顕微鏡による微細構造の解析、およびメチレンブルーの酸化能を指標とした触媒能の解析に取り組む。同時に、金属還元能を有する Shewanella livingstonensis Ac10 の金属呼吸機構の解析から、本菌には呼吸基質となる金属の溶存状態に応じた呼吸系の存在が示唆されたことから、他の Shewanella 属細菌について PhoE を介した呼吸系の存在について解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、中国内モンゴル自治区草原地域より採取された Pseudomonas 属細菌は硝酸銀、もしくは塩化金存在下でナノサイズ加工された銀粒子もしくは金粒子を合成することがわかった。本菌における金属ナノ粒子は細胞表層において金属酸化物の還元と粒子合成が進行していると予想されるが、その分子機構の詳細は明らかでない。さらに、本菌の金属ナノ粒子合成能における金属イオンの選択性についても未解析である。以上、金属ナノ粒子合成能の分子基盤の解明、および金属イオン選択性について次年度に継続することとした。 H25年度の実験結果に基づき、中国内モンゴル自治区より採取された金属ナノ粒子合成性細菌について、粒子合成機構の詳細を解析する。金属酸化物存在下で誘導生産されるタンパク質群の網羅的解析、およびそれらの遺伝子配列の解析に 150 万円(タンパク質解析 60 万円、遺伝子工学解析60 万円、嫌気用培養器具 30 万円)を見込んでいる。成果発表に要する学会参加費、旅費に 100 万円、論文投稿料に 40 万円を見込んでいる。
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Research Products
(2 results)