2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24405030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 助教 (90511238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 特殊環境微生物 / 金属呼吸 / 低温菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上の多様な環境より単離されている Shewanella 属細菌は、多様な金属を最終電子受容体とする金属呼吸能に秀でた微生物群として知られており、Shewanella 属細菌の金属呼吸の分子基盤に基づく微生物金属汚染の浄化やレアメタルの回収技術の開発が注目されている。南極海水より採取された低温適応細菌 Shewanella livingstonensis Ac10 は、他の Shewanella 属と同様に、金属呼吸に関与することが予想される cytochrome 関連タンパク質をコードする遺伝子群を多数有していることから、低温条件下において金属呼吸能を有する特殊環境微生物といえる。本菌は、三価鉄を含む培地で嫌気的に培養したとき、三価鉄誘導的にリン酸選択的チャンネル PhoE のホモログを誘導生産する。PhoE は大腸菌や Pseudomonas 属細菌において、リン酸欠乏時に誘導生産され、リン酸イオンを選択的に取り込むと予想される膜透過チャンネルタンパク質である。S. livingstonensis Ac10 の phoE 遺伝子破壊株は、フマル酸を最終電子受容体とした嫌気培養では、野生株と同様に生育したのに対して、可溶性の三価鉄(クエン酸鉄)を含む培地において、phoE 遺伝子破壊株 は野生株に比べて生育速度と、三価鉄の還元によって生じる二価鉄の生成量が顕著に低下していた。一方で、リン酸濃度の異なる培地で嫌気的に培養したとき、phoE 遺伝子の欠損は本菌の生育には影響しなかった。以上の結果から、本菌の PhoE はリン酸イオンの取り込みではなく、嫌気条件下における金属呼吸に関わる物質輸送に関与する膜透過を担うチャンネルタンパク質として機能することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では地球上の多様な環境に適応している Shewanella 属細菌の金属呼吸に伴う金属イオンの溶存状態の変化に着目し、微生物をつかった機能性金属材料合成への応用を目指すものである。本研究の基盤技術である微生物の金属呼吸において、菌体外環境からの呼吸基質の取り込みは、微生物呼吸の律速段階であるといえる。本年度、本研究によって酸化的誘導的に生産される外膜チャンネルタンパク質は、従来のリン酸イオンの取り込みとは異なる生理機能を担っており、PhoE を介して水溶性の金属酸化物を積極的に取り込み、本菌のペリプラズム領域、もしくは細胞質で三価鉄の還元反応が進行する可能性が示唆された。本研究で示された PhoE を介した金属イオンの外膜透過機構は、本菌を利用した金属還元系の構築、および多様な金属イオンで構成される金属ナノ粒子の形成を効率的に進行させるために重要な知見であり、本研究は当初の計画通り順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、従来リン酸イオン選択的チャンネルとして同定されていた PhoE が、嫌気条件下で水溶性金属酸化物の取り込みを担うことが示唆された。PhoE を介した金属イオンの取り込みに関して金属イオンの基質特異性について解析する。本タンパク質と特異的に認識する抗体を作製するために、組換え型 PhoE タンパク質を大腸菌を宿主としたタンパク質高生産系から調製し、精製タンパク質を獲得する。得られた精製タンパク質を抗原とし、ラットもしくはウサギをもちいて抗 PhoE 抗体を調製する。クエン酸鉄の他、不溶性の三価鉄(III) や三価コバルトなど酸化型金属を添加した培地で S. livingstonensis Ac10 を嫌気的に培養し、ウェスタンブロット解析により PhoE の生産レベルを解析する。 PhoE は、Shewanella 属を含めて多様な微生物種において高度に保存されているタンパク質である。本研究から、金属呼吸能を有する Shewanella 属細菌においては 、PhoE が嫌気条件下での可溶性金属イオンの取り込みを担うチャンネルタンパク質であることが示唆されている。他の微生物の金属呼吸における PhoE の生理機能を明らかにするために、金属呼吸能に秀でた S. oneidensis MR-1 における PhoE の生理機能解析に取り組む。S. oneidensis MR-1 について phoE 遺伝子破壊株を作製し、金属呼吸能を解析する。以上の解析を通して、PhoE を介した金属輸送機構をあきらかにし、タンパク質工学的な機能強化を図ることで本菌を利用した金属ナノ粒子形成の効率化を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究において、クエン酸鉄存在下で嫌気的に培養した菌体の構造を電子顕微鏡解析した結果、細胞表層より直径 50-100 nm の小胞およびチューブ状の膜構造が形成されるという新たな知見を発見した。グラム陰性細菌が生産する菌体外膜小胞は新たな微生物機能として注目されており、細胞接着やバイオフィルム形成といった菌体間コミュニケーションを担う分子として注目されており、ワクチン開発への応用が進められている現象である。本研究において、嫌気培養条件下で形成される膜小胞は、本研究で目指す微生物による機能性金属ナノ粒子合成の開発を遂行する上で重要な知見であり、本現象の本質を見極めることが重要であると判断されたため、本研究を次年度に延長することに至った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの分子遺伝学的手法による金属呼吸時に誘導生産される膜チャンネルタンパク質の解析に加えて、本菌が形成する菌体外膜小胞の解析を行う。特に小胞によって輸送されるタンパク質群を探索・同定する。これら小胞含有タンパク質と金属呼吸との関連をあきらかにする。加えて、近縁種における菌体外膜小胞の形成について、電子顕微鏡観察を行い、Shewanella 属の金属呼吸における菌体外膜小胞形成の生理的意義を解析する。
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Research Products
(1 results)