2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500001
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 章 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (20332471)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 標本化定理 / 再生核 / 再生核ヒルベルト空間 |
Research Abstract |
標本化定理が、現代社会を支えるディジタル信号処理の礎となる理論であることは論を俟たない。本研究の目的は、信号の標本化という過程を数学的に考察する際に核心を担う再生核ヒルベルト空間を駆使することによって、標本化定理及びその周辺を網羅的に議論することにある。具体的な目標は、A) 再生核ヒルベルト空間が標本化定理を有するために、対応する再生核が満たすべき条件を明らかにする、B) 実際に標本化定理を有する再生核ヒルベルト空間を網羅的に調査する、C) 様々な実問題に適した再生核ヒルベルト空間を調査し標本化定理を構築する、の三点である。 まずは、A) に関する成果について述べる。所与の関数空間が標本化定理を有するためには、当該関数空間の可分性が必要となる。しかるに、応用を想定した場合、所与の再生核ヒルベルト空間が可分となるために、対応する再生核が満たすべき条件が重要となる。これに対し、本研究で、再生核に関するある種の連続性が当該可分性を担保することを解明した。現在、この結果の公表の準備を進めている。 次に、B) 及び C) に関する成果について述べる。実用上有用な関数空間の一つとして、帯域通過型の信号からなる関数空間がある。これについて過去様々な研究がなされているものの、間違いを含む結果や解釈が困難な結果などが散見される。これに対し、当該関数空間が再生核ヒルベルト空間をなすことを証明するとともに、当該空間に対し、非常に見通しのより標本化定理を構築することに成功した。この成果は、信号処理分野で有数の国際会議に採録された。また、必ずしも完全に信号を再構成できない場合の一般論についても考察し、不変な計量を有する部分集合を有する再生核ヒルベルト空間の族においては、より小さい空間を想定した上で信号を再構成した方が再構成誤差が小さくなることを解明した。この成果についても国際会議にて公表している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標のうち最も重要なものは「再生核ヒルベルト空間が標本化定理を有するために、当該再生核ヒルベルト空間に一意に対応する再生核が満たすべき条件を解明する」ことである。本課題は非常にチャンレンジグなものであり、研究開始当初から、場合によっては二年を費やす計画であった。現状、この課題の完遂には至っていないが、研究実績の項目で述べた通り、最低限考慮すべき、再生核ヒルベルト空間の可分性については概ね解明され、また、そこで得た様々な知見が、本課題の完遂に有用なものであると確信している。また、当初は後半に取り組む予定であった、具体的な再生核ヒルベルト空間の標本化定理、あるいはその周辺に関する理論的結果も得ていることから、総合的に見て、概ね順調に推移していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究目的の中で最も重要な項目である「標本化定理を有する再生核ヒルベルト空間が満たすべき条件を解明する」という課題について更なる進展を目指す。平成24年度の活動によって、当該課題において最低限満たすべき、再生核ヒルベルト空間の可分性については明らかになったものの、実用を想定した場合には、例えばシャノンの標本化定理に見られるように、正の有限確定値の標本化間隔を有する標本化定理を構成することが肝要である。先に述べた再生核ヒルベルト空間の可分性に関する文献の調査結果、及び、本研究で新たに得た結果が、当該課題の解決に有望であると考えられるため、これらの知見を駆使し、また、更なる情報収集を行なうことによって、最も重要な当該課題の完遂を目指す。併せて、実用を想定した具体的な標本化定理の構築も行なう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に残額が発生しているが、これは、参加した国際会議の参加費が当初想定した金額よりも安価であったことによる。 平成25年度の研究費の主なものとしては、1)成果発表を想定したノート型PCの購入、及び、2) 情報収集のための国際会議の参加費用(旅費を含む)、3) 成果発表のための国際会議の参加費用(旅費を含む)である。 1) について、当初は成果発表のみを想定していたが、昨今の計算機の価格低下もあり、また、場所を選ばずに研究に利用できるという利便性も考慮し、計算資源として利用できるものを購入する予定である。 2) の情報収集のための国際会議としては、標本化理論に特化した著名な国際会議である、International Conference on Sampling Theory and Applications への参加を予定している。 3) の成果発表のための国際会議としては、IEEE が主催する、ICASSP2013 という国際会議への参加を予定しており、そこで、今回の研究課題に関する成果を公表する予定である。
|