2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 章 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (20332471)
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Keywords | 標本化定理 / 再生核 / 再生核ヒルベルト空間 / 線形系逆問題 |
Research Abstract |
本研究の目的は、信号の標本化というプロセスを数学的に考察する際に非常に重要な道具立てとなる再生核ヒルベルト空間の理論を駆使することによって、標本化定理及びその周辺を網羅的に議論することにある。具体的な目標は、A)再生核ヒルベルト空間が標本化定理を有するために、対応する再生核が満たすべき条件を明らかにする、B) 実際に標本化定理を有する再生核ヒルベルト空間を網羅的に調査すること、C) 様々な実問題で扱う信号に適した再生核ヒルベルト空間を調査し、実際に標本化定理を構築すること、の三点である。 まずは、A) に関する成果について述べる。所与の関数空間が標本化定理を有するためには、当該関数空間が可分であることが必要となる。しかるに、特に応用を想定した場合、所与の再生核ヒルベルト空間が可分となるために、当該再生核ヒルベルト空間に一意に対応する再生核が満たすべき条件が重要となる。昨年度の段階で、再生核がその対角において連続性を有することが可分性の十分条件であることを示唆する結果が得られていた。今年度は、当該知見を更に精査し学術論文としてまとめ、第28回信号処理シンポジウムにて公表した。 B) 及び C) に関しては、昨年度の段階で計画を前倒しし、帯域通過型の関数全体からなる再生核ヒルベルト空間における標本化定理や、必ずしも完全再構成できない標本点集合から最適な再構成を行なう枠組について理論的な成果を得ることができたため、今年度は本目的に対する主だった成果はない。一方、本研究課題における周辺理論整備の一貫として、当該課題と密接な関係を有する線形系逆問題に関する成果を得た。具体的には、1)複数観測からの推定問題に対し、最小分散凸結合推定という新たな枠組を構築、2)ウィーナー基準による復元問題において、これまでは考察されていなかった、信号に対する制約を考慮できる枠組の構築、等の成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標のうち最も重要なものは「再生核ヒルベルト空間が標本化定理を有するために、当該再生核ヒルベルト空間に一意に対応する再生核が満たすべき条件を解明する」ことである。研究実績の概要の項目で述べた通り、当該問題において最低限考慮すべき、再生核ヒルベルト空間の可分性について解明し、成果発表も終えている。一方、理想的には、当該問題に対する「必要十分条件」を解明することが望まれるが、理論解析の過程において、未だ解明されていない深遠な数学的問題の解決が必要であることが判明したため、本研究期間中に完全に解明することは困難であるとの認識に至った。また、研究実績の概要で述べたとおり、種々の具体的な再生核ヒルベルト空間に対する標本化定理についても先行して成果が得られているため、総合的に、概ね順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度の項目で述べたとおり、主要な目的のうち「再生核ヒルベルト空間が標本化定理を有するために、当該再生核ヒルベルト空間に一意に対応する再生核が満たすべき条件を解明する」という問題に関しては、再生核ヒルベルト空間に対する可分性の十分条件の解明という、昨年度までの成果をもって一区切りとし、最終年度では具体的な再生核ヒルベルト空間における標本化定理の構築、及び、その周辺の理論整備に充当する。より具体的には、標本化定理のみならず、機械学習問題等への応用も視野に入れ、近年注目を集めている複数の再生核にかかる関数推定問題の理論的な解析を行なう。
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