2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形制約をもつ整数計画問題に対する理論保証付き近似解法の開発
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24500002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩浦 昭義 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (10296882)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 整数計画問題 / 非線形計画問題 / 近似アルゴリズム / 離散凸関数 / 組合せ最適化 |
Research Abstract |
本研究では,非線形な不等式制約の下で非線形関数を最大化するという整数計画問題を扱う.この問題は極めて一般的な形をしており,多数の応用例が存在する.この問題に対しては様々な近似解法が提案されているが,解の精度および計算時間という重要なファクターに対して理論的な保証を与えているものは殆ど存在しない.本研究の目的は,解の精度および計算時間に関する理論的な保証を与える近似解法を開発することである.本研究を通じて,非線形整数計画問題に対する新たなアルゴリズム技法を提案するとともに,理論面のみならず,実用面でも有用な解法を提供する. 本研究を進めるにあたって,まず過去の研究成果について再検討を行った.具体的には,M凸関数の連続関数への拡張の際に必要な,凸閉包と呼ばれる関数の計算について再調査を行い,新たな知見を得ることができた.これらの結果については2012年8月と10月の国際会議にて一部の結果を発表している. また,本研究で扱う問題の目的関数や制約に現れる関数であるM凹関数の重要な部分クラスである,マトロイド階数関数の重み和について調査を行った.階数関数の重み和は一般にはM凹関数とはならないが,これがM凹関数になるための十分条件を得ることができた.さらに,重み付き階数関数がこの十分条件を示すことを示した.この結果については2012年に論文誌Japan Journal of Industrial and Applied Mathematicsにて発表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では「連続緩和アプローチ」に基づくアルゴリズムの開発を進める.このアプローチでは,①元の問題を解ききやすい連続最適化問題に緩和し,②緩和した問題の最適解(実数ベクトル)を求め,③得られた実数ベクトルを整数ベクトルに変換する,という手順により近似解を求める.このアプローチの成功に向けての課題と解決方法は以下の通りである. ステップ①において,緩和問題として適切な連続最適化問題を選ぶ必要がある.この選択によって,最終的に得られるアルゴリズムの解の品質と計算時間が大きく左右される.本研究では,「M凹関数は普通の凹関数に拡張可能」という離散凸解析の成果を踏まえて,凸制約付き凹関数最大化問題として,緩和問題を定める.こちらのステップについては,ほぼ予定通りに研究が進んでいる. ステップ②において,緩和問題を解く効率的なアルゴリズムを構築する.本研究で扱う緩和問題は陰的(implicit)に与えられており,多項式時間で解くことは容易ではない.これを解決する一つの案として,楕円体法の利用を検討する.楕円体法は,複雑な形の最適化問題に対する多項式時間アルゴリズムを構築する際にしばしば使われてきた一般的な解法であり,申請者の過去の研究でも用いられている.楕円体法においては,「分離問題」 と呼ばれる子問題の効率的なアルゴリズムを構築することが重要であるが,M凹関数の組合せ構造を上手に利用して,分離問題の解法構築を試みる.このステップについては,特殊ケースについては解決できたが,一般的な場合についてはさらなる検討が必要である. ステップ③において,得られた実数解を「高品質」の整数ベクトルに変換する方法を検討する必要がある.これには,緩和問題の多面体的構造を調査する必要がある.このステップについては研究があまり進んでおらず,次年度以降のさらなる研究を要する.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,「連続緩和アプローチ」に基づくアルゴリズム開発の研究を進める.とくに先で述べたように,予定通りに進んでいない部分については,重点的に研究を行う予定である. しかし,このアプローチによって所望のアルゴリズムを得ることが困難な場合には,もう一つのアプローチである,「ラグランジュ緩和を用いたアプローチ」に基づきアルゴリズム開発を進める.ラグランジュ緩和とは,元の問題(NLIP-MC)の不等式制約を除去する代わりに,解が不等式条件に違反している場合にはペナルティとして,違反の程度に応じて目的関数の値を減少させる,という緩和手法である.ペナルティの値はあるパラメータにより決定されるが,このパラメータを適切に設定することにより,元の問題の良い近 似解が入手できる. ラグランジュ緩和アプローチでは,パラメータの設定方法が重要である.パラメータを大きすぎる値に設定すると,得られる解は実行可能解ではあるものの最適解からほど遠くなり,一方,小さすぎる値にすると,得られる解は最適解に近いものの実行可能ではなくなる.本研究では,パラメータ値をより良いものへと繰り返し更新しながら,ラグランジュ緩和問題を繰り返し解き,より良い近似解を求めるという手法について検討する.また,パラメータ値を改善してもラグランジュ緩和問題から得られる解の品質が改善されない場合には,異なるパラメータ値に対するラグランジュ緩和問題の解を求めた後,それらを上手に合成して良い近似解を作る手法についても検討する. この研究を進める上で,研究協力者からの協力を求める.また,上記の研究の遂行のために,国内外の学会やワークショップ等に参加し,関連分野での最新研究成果を調査するとともに,他の研究者との情報交換を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様に,国内外で開催される様々な学会・シンポジウムに参加し,情報収集に務める.とくに,ハンガリーにて開催予定の離散最適化にシンポジウムに参加し,研究推進に有用な情報を入手する予定である.また,国内外の研究協力者および関連分野の研究者を訪問し議論を行うことは,本研究課題である非線形離散最適化問題の近似アルゴリズム開発の成功に欠かせないため,できる限り実施する. また,離散最適化手法及びアルゴリズム理論に関する最新の研究成果について調査するために必須の情報源として,「離散最適化およびアルゴリズム関連図書」を購入する予定である. 上で述べたように,本研究の遂行においては様々な学会やシンポジウムに参加する必要性があるが,その際には参加費を支払うケースが一般的であるので,そのために経費を計上する.
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Research Products
(4 results)