2015 Fiscal Year Research-status Report
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24500003
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中西 正樹 山形大学, 教育文化学部, 准教授 (40324967)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子計算 / 量子オートマトン / 量子回路シミュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
量子計算モデルの能力の解析に関する研究として,量子カウンタオートマトンを対象とし,決定性計算の条件の下で量子モデルの優位性を示す結果を得た.また,量子カウンタオートマトン向けのアルゴリズムから着想を得たアイディアをもとに,従来は古典カウンタオートマトンモデルでは有界誤りで計算できないと予想されていた関数が,実際には計算可能であることを示した. 量子コンピュータのシミュレータとしてハードウェアを用いたシミュレータを開発し,詳細な性能を実験により解析した.このシミュレータは大きな実装面積を要するマルチプレクサの代わりに,高速に動作するレジスタの並べ替え器を用いることで省面積化を行い,その結果,空いたスペースに多くの演算器を搭載することによって並列度を上げ,高速化を図っている. また,本シミュレータのメモリアクセスオーバーヘッドの多寡はシミュレートする量子回路の局所性に依存する.したがって,あらかじめシミュレーション対象となる量子回路を変換し,元の回路と等価でかつ局所性の高い回路にすることができればシミュレーションを高速化できる.本研究では,この量子回路変換手法の開発も行った.この変換は,対象とするシミュレータアーキテクチャによって問題設定に若干の差異が生じる.本研究では(1)ハードウェアシミュレータ,(2)多段キャッシュを持つソフトウェアシミュレータ の2つのシミュレータアーキテクチャに対して実験を行い,高速化に成功している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,量子計算機を量子オートマトンとしてモデル化した上で,その能力を理論的に解析する研究.および,量子計算機のシミュレータを開発して実験的に能力を解析する研究の両アプローチによる成果をあげているため,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
量子回路シミュレータの開発を行った際,高速化のためのゲート処理順序最適化に関する知見が得られ,それをもとにした最適化手法を提案したが,さらなる高速化のための改良やチューニングが必要である.今後は,この改良に取り組むとともに,量子計算モデルを利用した理論的な解析も引き続き行う予定である.
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Causes of Carryover |
本研究課題では研究目的の一部として量子回路シミュレータの開発を行った.その中でシミュレータの高速化のためのゲート処理順序の最適化に関する知見が得られ,それをもとにした最適化手法を提案した.この際,当初予定していたよりも効率的に研究を進めた結果,直接経費を節約することができた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最適化手法に関してはさらに詳細な実験とチューニングが必要であるため,これらに必要な実験機材の購入,および成果発表の旅費に使用する予定である.
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