2015 Fiscal Year Research-status Report
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24500005
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
岡本 健 筑波技術大学, 保健科学部, 准教授 (00349797)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 暗号 / 電子署名 / 相手認証 / 匿名認証 / ペアリング / CAPTCHA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、主にシステムの統合に着手した。 本研究において、これまでに得られた成果に対して総合的な評価を行い、必要に応じ、これまでに提案した匿名認証方式の改良を行った。提案システムの実用化は、実社会で求められるプライバシ保護の解決手段、またはその普及において重要であるため重点的に取り組んだ。 また、暗号の国際標準として使用されている暗号方式を組み合わせた匿名認証方式の実装を試み、各種の暗号ソフトウェアライブラリを用いて評価を行った。現在、携帯電話や無線LAN、モバイル端末の通信路暗号化において、ペアリングを用いた匿名認証の実現はまだなされていないため、これら運用面におけるシステムの構築についても検討した。楕円曲線ペアリング以外の双線形写像について既存方式に対する安全性について各種評価を行った。現在、匿名通信の研究が勢力的に行われており、毎年性能が向上していることから、現行モデルに対する楕円曲線の選択、パラメータの最適化、計算アルゴリズムの改良により、現状よりさらに性能向上を試みた。 上記の要素技術として利用するため、CAPTCHAについても引き続き研究を推し進めた。従来のCAPTCHAは、認証段階において人間の知覚に依存したため、利用者が視覚や聴覚に障害をもつ場合、認証できないという問題があった。本研究では文脈解釈問題を用いることで、これら知覚依存の問題を解決する方式を提案した。本研究ではこれらのアルゴリズムや手法を組み込んた匿名システムの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの取り組みにより、提案方式に対する定量的な評価を行なうことができた。この評価は、安全性や信頼性を評価するだけでなく、実用化を視野に入れた種々の検証を実施している。 匿名認証方式に関して、エンティティの匿名性を対象とした安全性評価という視点から、アルゴリズムの検証、さらにシステム全体のパフォーマンス向上を目指した最適化を検討した。次に楕円曲線上のペアリング演算で行われる個々のモジュールのパラメータ選定やメモリ削減の効率化、従来の高速化技術に対する理論解析、楕円曲線暗号の安全性解析を行った。次にIDベース暗号やキーワード検索暗号、ブロードキャスト暗号など、現代社会に適した有益な暗号システムに対し、これが匿名暗号として転用できるかの可能性について検討した。 また、CAPTCHAについて、自然文の文意や文脈を解釈する問題(文意文脈解釈問題)に着目し、マルコフ連鎖に基づいた認証アプローチにより、従来方式にあった知覚依存の問題点を解消した方式を提案した。提案方式は、階層化を用いた形態素のマルコフ連鎖モデルおよび、品詞・活用形によるマルコフ連鎖モデルを生成できる。検証者が作問に使用する文意文脈解釈問題には、共通話題テストとワードサラダ識別テストがあり、これにより文の出現率の評価や検索エンジンを用いた攻撃に対する安全性強化、人間による解答容易性を達成できた。これらのことを考慮し、上記のとおり達成度を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で培ってきた技術に対してシステムの統合に注力し、展示会へのデモ出典、国内外の学会・論文誌へと成果展開を行う。また、成果物に対して総合的な評価を行い、必要に応じてシステムの改良を行う。実ネットワークを用いたシステムの実現は、実社会で求められる匿名認証の解決手段、またはその普及のためにも重要であると考え、重点的に取り組む。 理想的には、匿名認証の理論的研究、アルゴリズム開発、プロトコル研究など、システム構築に関するすべての成果が得られてから統合化とりかかるべきであるが、時間的な制約もあるため、その前段階として平成28年の中旬頃から、この段階までに得られた成果をもとに実用システムの構築を段階的に行う。その結果、モジュールなど、各種のシステムに対する内部構造は多様化することが考えられるが、骨格となるフレームワークは、できる限り共通化することとし、各種のプログラム言語を用いたフレキシブルなソフトウェアシステムを実現する。可能ならば実装の専門家と研究協力者として、本研究に参加してもらい、プログラム化することも検討する。 また、暗号の国際標準化により使用されている各種のモジュールを組み合わせた匿名認証方式の実装を試み、各種暗号ソフトウェアライブラリを用いて評価を行う。なお、楕円曲線ペアリング以外の双線形写像が発見できれば、その高速化手法の検討も進める。
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Causes of Carryover |
研究で使用したいくつかの備品が当初の予定より安価に購入できたため。ただし、次年度使用額はわずかであり、実質的には当初予定通り使用できたと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度請求と合わせて、主に学会発表を目的とした旅費に充てる予定である。
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