2013 Fiscal Year Research-status Report
安定マッチング問題の合理的なモデル化とアルゴリズム開発
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24500013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 修一 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00303884)
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Keywords | 安定マッチング / Gale-Shapleyアルゴリズム / 耐戦略性 / NP困難性 / 貪欲アルゴリズム |
Research Abstract |
安定マッチング問題とは、例えば卒論生と研究室があり、卒論生は研究室に対する希望順位を、また研究室は卒論生に対する希望順位を持っており、その順位リストに基づいて「安定性」と呼ばれる性質を満たす配属(マッチング)を求める問題である。この問題は、研究室配属のみならず、病院への研修医配属や公立学校への生徒割り振りなど、多くの応用を持つ。本研究では、各応用に即したモデル化および、効率の良いアルゴリズム開発を目的としている。平成25年度は以下の結果を得た。 1. 安定マッチングを求める際に使われる(男性プロポーズ型)Gale-Shapleyアルゴリズムでは、男性は希望リストを操作することにより得をしないが、女性は得をする場合がある。最も基本的な戦略的操作は、希望リストのある位置以降を切り捨てるものである。その際、うまい場所で切ると最大の効果が得られるが、それよりも上位で切ってしまうと却って損をしてしまう。この最適な切り取り位置の期待値を、ランダムな入力に対して解析した。また、実験を行い、解析の結果と実験結果がほぼ一致することを確かめた。 2. 研修医配属において、配属決定後に研修医は配属先の病院を知らされるが、自分以外の希望リストは公開されていないため、配属先が正しいアルゴリズムの実行結果であることを確かめるすべがない。本研究では、この問題をモデル化した。即ち、研修医の希望リストとマッチングが与えられ、そのマッチングが安定となるような病院側の希望リストが存在するか否かを問う問題を考えた。病院の希望リストの種類数をkとした場合、k=1では多項式時間で解けるが、kが2以上の場合にはNP困難になることを示した。また、k=2の場合に対する貪欲アルゴリズムを4種類実装し、その正確性や計算速度を計算機実験によって比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画に書いた近似アルゴリズムやオンラインアルゴリズム的なアプローチとしては、本年度は進展しなかった。しかしながら、最近重要性を増してきている耐戦略性などのゲーム理論的なアプローチにおいて、上述したように一定の成果を得た。特に上記「2」の結果は、共同研究者の学生が情報処理学会において学会発表を行い、学生奨励賞を受賞した上推薦論文に選ばれた。 このように、方向性は異なるものの、質・量ともに1年間の研究成果としては十分なものが得られており、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画として挙げた(1)同順位と不完全リストを許す際の、最大サイズ安定マッチングを求める近似アルゴリズム、および(3)オンライン安定マッチングについて考える。 (1)一般の入力に対する現在最良の近似度は1.5であるが、片側のみに同順位を許す場合は、1.5をわずかに下回る近似度が得られている。このアプローチを強めることにより、更に良い近似度の達成を目指す。特に、同順位が希望リストの最後に現れるという制限を付けても近似度の下限は1.25であるため、上記のアプローチをこのように制限された入力集合に適用させて、近似度の上下限を一致させることを狙う。 (3)オンライン安定マッチング問題は過去に研究されている。過去のモデルでは、最適なオンラインアルゴリズムでも悪い(安定から程遠い)マッチングしか求めることが出来ないというものであった。近年オンライン問題の複雑度を測る新たな評価尺度として、アドバイス複雑さというものが盛んに研究されている。これは、アルゴリズムに何ビットのアドバイスを与えれば最適解を求められるかというものである。オンライン安定マッチング問題にアドバイス複雑さを適用させ、解析を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は足を痛めてしまい歩行が困難であった。そのため、本人が発表を行う場合など、どうしても出席しなければならない学会については出席したが、共著者が発表する学会や情報収集のために出席する予定であった学会等への出席は見合わせた。これが、次年度使用額が生じた最大の理由である。また、文献調査のために謝金を計上していたが、25年度は特に学生に依頼するべき文献調査は発生しなかったので、全く使用しなかった。これも次年度使用額が生じた理由である。 現在投稿中の雑誌論文が4つほどあり、この数は当初期待していたよりも多い。従って、これらが採録された場合には、掲載料や別刷購入費用が予定を上回るため、上記の未使用額をこれに充てる予定である。
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