2014 Fiscal Year Research-status Report
安定マッチング問題の合理的なモデル化とアルゴリズム開発
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24500013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 修一 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00303884)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 安定マッチング / Gale-Shapleyアルゴリズム / NP完全 / 研修医配属問題 / オンラインアルゴリズム / アドバイス複雑度 |
Outline of Annual Research Achievements |
安定マッチング問題は、提出されたリストに基づいて「安定性」という条件を満たすマッチング(配属)を求める問題であり、学生の研究室配属や研修医の病院配属など様々な応用がある。これらの各応用では安定マッチング問題がそのままの形で使われるわけではなく、使われる状況に応じて異なるモデル化がなされている。本研究は、そのようなさまざまなモデル化のもとで、効率の良いアルゴリズムの開発やアルゴリズムの限界の解明などを行う。平成26年度は以下の結果を得た。
1. 安定マッチング問題において、学生の希望リスト及びマッチングMが与えられた際に、Mを安定とするような病院の希望リストが存在するか否かを判定する問題を取り扱った。この問題は、学生が不安定マッチングを提示され騙される危険性をどこまで排除できるかという背景に基づく。病院の希望リストが任意の場合は必ず解が存在する。従って、病院の希望リストがk種類しか存在しないという制約を加えた。k=1の場合には多項式時間で解けることを示した。また、k=2の場合およびk≧3でk-頂点彩色問題がNP完全となるkの範囲にいて、問題がNP完全となることを示した。さらに、k=2の場合に対して数種類の貪欲アルゴリズムを提案し、それらを実装し計算時間や誤り率の観点から計算機実験を行なった。研究は概ね昨年度に行なっていたが、本年度は追加実験を行い、その結果をまとめて論文誌に投稿し、採録された。
2. オンライン問題の複雑さは、その問題を解くオンラインアルゴリズムの競合比によって評価されるのが主流であるが,近年アドバイス複雑度による新たな解析手法が提案され盛んに研究されている。これは、オンラインアルゴリズムが最適解を得るために必要とするアドバイスのビット数である。本研究ではオンライン安定マッチング問題に対するアドバイス複雑度の厳密な上下限を示した。ここでnは入力中の男性の数である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、2本の査読付き論文を出版した。1つは上記「1」の結果であり、研究は概ね昨年度中に出来ていたが、論文にするために必要な追加実験を行ない、内容をまとめて投稿し、出版に漕ぎ着けることが出来た。もう1つは上記「2」のオンライン安定マッチング問題に対する結果である。こちらは当初の研究計画で予定していた問題であり、今年度中に理想的な結果が得られ、論文化することが出来た。
また、これ以外にも、進行中の研究について結果が得られ、現在査読付き国際会議に投稿中である。
これらの理由から、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究課題の最終年度である。現在手掛けている以下の2つの研究テーマの完成を目指す。(なお、進行中であるため、具体的な記述は差し控える。)
(1) 最大サイズの安定マッチングを求める問題において、希望リストにある制限を加えた場合の近似度の上下限の一致を狙う。
(2) 希望リストの戦略的操作に対する計算複雑度について解析する。
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Causes of Carryover |
平成25年度の報告書に書いた通り、足の問題により平成25年度に海外出張を控えていたが、本年度も同じ状況で海外出張が出来なかった。また、国内出張も当初予定より少なかった。このため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述した足の問題は回復に向かっており、本年度は予定通りの海外出張ができる見込みである。4月に安定マッチングに関する研究集会がグラスゴーで、また、5月にはアルゴリズムと計算量理論に関する国際会議がパリで開催される予定で、どちらにも出席する予定である。また、前述したとおり現在2つの研究テーマを手掛けており、これらを国際会議に投稿する予定であるため、今年度は旅費が当初の予定よりも多く必要になる見込みである。25年度、26年度から繰り越された分を、この旅費に当てる予定である。
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