2013 Fiscal Year Research-status Report
能動的オブジェクトのストリーミング転送を行う並行計算系の理論に関する研究
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24500016
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村上 昌己 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60239499)
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Keywords | 並行計算 |
Research Abstract |
平成25年度においては、交付申請書に記載した研究実施計画の課題のうち、主に移動型並行計算の操作的意味論についての研究を行った。 まず前年度に引き続き bigraphの応用例として代表的な並行計算モデルであるアンビエント計算の操作的意味論について、昨年度提案したbighraphで定式化されたコンテクストをラベルとする遷移系の意味論の改良を行い、規則系の大幅な簡略化を行った。またその規則系をもとに合同性を満足する双模倣等価関係を定義し、プロセスの等価性の概念の整理に対する bigraphモデルの有効性を示した。この結果は「ソフトウエア工学の理論的側面 国際会議2013」において発表した。 またアンビエント計算を含む一般的な移動型計算のモデルとして、高階通信を含む計算系に対して、リアクションに基づく操作的意味論の定義を試みた。すなわち並行計算系をbigraphの特殊な形でああるものと見なせる二部有向グラフであらわし、グラフ自体を引数として通信することが可能な高階通信のモデルを提案した。このような計算系に対して、グラフ書換の公理系を構築し、操作的意味論を定義した。この結果は、「第3回 革新的計算技術に関する国際会議」にをいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度において操作的意味論の構築でやや遅れをとった影響で、平成25年度においてはその遅れた部分の補完に一定の時間を費やした。そのため操作的意味論の定義に続く等価性理論の研究が、部分的なモデルについては進捗したものの、一般的なモデル全体については、未完成な状態にある。今後、一般的なモデルの等価性理論に向けて、操作的意味論の遷移系に基づく様式への改良および、異なる部分的モデルに対する等価性理論の検討が残されている。このうち前者については、比較的短い期間で達成できる見通しである。また後者については、既に一部結果を得ており、全体としての遅れは大きくはないものと考える。しかしながら、申請書の時点で平成26年度に予定していた計画は、一部を変更する必要があるものとは考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であり、本研究の最も基幹となるストリーム型の高階通信モデルの操作的意味論を今年度完成することが、最も重要な目標と考えている。また、研究を進める段階で、いくつかの部分的な計算モデルに関するコンテクストラベル型の遷移系の重要性が明らかとなってきた。したがって、今年度は高階通信を含む計算モデルの操作的意味論の構築にあたって、コンテクストラベル型の遷移系に対する検討を予定より詳細に行う計画である。具体的には、非同期高階π計算およびそのストリーム通信への拡張を含むモデルに対して、コンテクストラベル型の遷移系を定義する。現時点では一階のπ計算のコンテクストラベル型遷移系の定義を完了しており、それを元に一般的なストリーム型高階通信のモデルについての操作的意味論に発展される予定である。 そのため計画の一部であるスコープを用いた等価性の検討、およびセキュリティへの応用については、実施を断念することも考えられるが、今後の進捗による。
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