2012 Fiscal Year Research-status Report
ナチュラルコンピューティングにおける非同期性に関する研究
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24500019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤原 暁宏 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10295008)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルゴリズム / ナチュラルコンピューティング |
Research Abstract |
近年,新しい計算パラダイムの1つとして注目を集めているナチュラルコンピューティングは,細胞等の各資源の活動を計算と考え,細胞間の情報伝達経路をネットワークと考えることにより,自然界の持つ自律的な処理の仕組みを用いて並列分散処理を行うという計算方式である. 本研究では,従来のナチュラルコンピューティングで無視されがちな生体系のもつ非同期性について計算能力の検証を行うとともに,非同期性を考慮したアルゴリズムの提案を行っている.また,並列処理を用いて非同期性を考慮した計算モデルのシミュレータの開発を行い,そのシミュレータを用いて提案アルゴリズムの正当性,及び,実効性の検証も行う予定である. 平成24年度は以下のような内容を中心に研究を行った. 1. 計算困難問題に対するアルゴリズムの提案:膜計算に関する既存の研究は同期式の動作を用いて考えられたものが多く,非同期性を考慮して提案されたアルゴリズムはほとんど存在しない.そこで本研究では,NP完全問題のような計算困難な問題に対して,非同期性を考慮した計算モデルにおいて実行可能なアルゴリズムの提案を行った. 2.非同期性を考慮した膜計算における基本演算アルゴリズムの提案:1つの数値データを複数の異なるオブジェクトを用いて2進数表現するデータ構造を提案するとともに,この提案データ構造を用いて表された数値データに対して,非同期性を考慮した膜計算モデル上で論理演算や算術演算といった基本的な演算を行うアルゴリズムの提案を行った. 3.1台の計算機上で動作する非同期性を考慮した膜計算シミュレータの開発:非同期性を考慮した膜計算に関して,アルゴリズムの実行をシミュレートするシミュレータの開発を行った.また,上記(1),(2)にて提案したアルゴリズムを本シミュレータ上にて動作させ,データ構造とアルゴリズムの正当性の検証を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算困難問題に対するアルゴリズムの提案に関しては,1本の学術論文,及び,2件の国際会議発表として研究内容の公表を行った.また, 非同期性を考慮した膜計算における基本演算アルゴリズムの提案についても,同様に1本の学術論文,及び,1件の国際会議発表として研究内容の公表を行った.加えて,非同期性を考慮した膜計算シミュレータの開発についても開発は終了しており,提案アルゴリズムの正当性の検証に用いられている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はは以下のような内容を中心に研究を行う予定である. 1.提案アルゴリズムの改良,及び,新しいアルゴリズムの提案:平成24年度において得られたアルゴリズムに対して,実際の細胞の制約条件を考慮し,オブジェクトの個数に関する評価尺度を加えて,アルゴリズムの効率の更なる改良を目指す.実際の細胞の制約条件については現在調査中であり,正確な制約条件は判明次第,提案アルゴリズムに反映させることを考えている.なお,アルゴリズムの計算量については,制約条件を考慮した改良を加えても悪化することがないよう注意する予定である.また,平成24年度で取り組む予定の問題以外にも,重要な問題は数多く存在するので,その他の問題に対してもアルゴリズムの提案を行う予定である. 2.計算機クラスタ上で動作する並列膜計算シミュレータの開発:膜計算では取り扱うデータ量が膨大であるため,1台の計算機を用いるシミュレータでは小規模なシミュレーションしか実行することができない.そこで,平成24年度に構築したプロトタイプのシミュレータを元に,計算機クラスタによる並列処理環境に対して並列膜計算シミュレータの実装を行なう.シミュレータの機能として,1台の場合のシミュレータの機能に加えて,並列化による処理の効率化の度合いや実行時間の変化等を検証可能とする予定である. 3.ナチュラルコンピューティングにおけるその他の計算モデルにおける非同期性の考察:ナチュラルコンピューティングにおいて膜計算以外に注目を集めている計算モデルとして,生物の神経細胞であるニューロンの活動をモデル化したスパイキングニューラルPシステムがある.本研究では,このスパイキングニューラルPシステムついても非同期性をはじめとする実際の神経細胞の動作を考慮して計算モデルの提案を行うとともに,計算困難な問題や基本的な演算についてアルゴリズムの提案を行うことを目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)