2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
関川 浩 東海大学, 理学部, 准教授 (00396178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白柳 潔 東邦大学, 理学部, 教授 (80396176)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多項式 / 連立代数方程式 / 誤差 / 近似 / 数値数式融合計算 / 零点 / 根 |
Research Abstract |
代数問題について、着目している性質(実根の数など)が、係数などの誤差が十分に小さければ曖昧性なく確定する場合を安定な場合、そうでない場合を不安定な場合と呼ぶことにする。研究実施計画において設定した課題1は、与えられた問題が安定か否かを見極め、安定な場合は安定性解析(摂動限界、すなわち、どこまで係数を動かしても着目している性質が保たれるかを求めること)の問題を、不安定な場合は問題に適切な解釈を与えて、解答が確定する新しい問題を設定することであった。 本年度は、代数問題として式と変数の数が等しい場合の連立代数方程式を取り上げ研究を行なった。この場合、ほとんどすべての係数の取り方に対し解は有限個となり、解の数に注目した場合、安定となるので、課題1では安定性解析の問題が設定される。これについてはすでに平成23年度に予備的な研究を開始し、元の問題がより簡単な問題に帰着できることを示したが、課題2、すなわち、帰着した問題を解くアルゴリズムを与えること、は未達成であった。本年度の一番目の成果は、帰着した問題に対する課題2の解決である。具体的には、帰着した問題を有理関数の最小化の問題として書き直し、最適化の手法を用いて解けることを示したことである。 このほか、二番目の成果として、安定性解析に関する以下の結果も得た。一変数実係数多項式fと実区間I(fはI に重複零点を持たない)に対し、無限大ノルムで測ってfに一番近くIに重複零点を持つ一変数実係数多項式gを求める問題について、gは多項式時間で計算可能であることを示し、さらに、この結果の応用として、一変数実係数多項式fと実区間I(f はIに重複零点を持たない)に対し、I内にある零点の数を保つような摂動限界の評価法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
式と変数の数が等しい場合の連立代数方程式は、解の数に注目すると安定な問題となる。本年度の予定は、この問題に対する安定性解析について研究することであった。 この問題についてはすでに平成23年度に予備的な研究を開始し部分的な結果を得ており、その結果を進展させることが平成24年度の目標であったが、未解決として残されていた部分を計算するアルゴリズムを提案することができた。ただし、アルゴリズムを実装しての実験には至っていない。 上記に加え、一変数実係数多項式に対し、実重複零点を持たないという性質に着目してその安定性解析を行ない、応用として、一変数実係数多項式に対し、実零点の数に着目した場合の安定性解析も行なった。 以上より、達成度はおおむね予定通りといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成24年度にアルゴリズムを提案した、式と変数の数が等しい場合の連立代数方程式の安定性解析について、アルゴリズムを実装して計算機実験を行なうとともに、課題3に挙げた、安定化理論などを用いてアルゴリズムを効率化することを目指す。 式と変数の数が等しい場合の連立代数方程式の安定性解析は、平成23年度に行なった予備研究により、解を持たない連立代数方程式の安定性解析に帰着できることが判明している。これをグレブナ基底のことばでいえば、グレブナ基底が{1}であるときのグレブナ基底の安定性の問題、すなわち、多項式の係数をどれくらい変動させるとグレブナ基底が{1}ではなくなるか、その限界を求める問題になる。これの特別な場合が一変数多項式の近似GCD(最大公約多項式)の問題となるので、この問題は一種の近似グレブナ基底の問題とみなすことができる。この関連性に注目して、誤差のある連立代数方程式を解く、という観点から近似グレブナ基底をどのように定義し計算すべきかについて考察を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
白柳に平成24年度から平成25年度への繰越が生じた理由は以下の通りである。国内研究集会Risa/Asir Conference(神戸大学)に参加する予定であったが、所属機関の行事や本務(卒業式や教務の仕事)と重なり、参加できなかった。また、フランスで開催された国際会議 (International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation) には参加し研究発表を行ったが、実際にかかった旅費が計上していた予算額よりも少なかった。以上により、計110,007円の繰越金が生じた。 平成25年度に使用する研究費のうち、主だったものは以下の予定である。 まず、平成24年度に得た研究成果を、ボストン(米国)で6月に開催される、数式処理の分野における最重要国際会議であるACM主催のInternational Symposium on Symbolic and Algebraic Computation 2013にて発表するための外国旅費として使用する。 また、情報収集、研究者との議論、平成25年度名に得た成果の発表などのため、国内で開催される学会、研究会に参加するための旅費として使用する。 さらに、研究代表者は平成25年度より所属機関が変わったため、研究設備および研究資料について一部不足しているものもあり、研究費を使用して調達する。
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