2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
仲川 勇二 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60141925)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 米国 / 国際情報交換 ニュージーランド |
Research Abstract |
米国の一流の研究者が生涯に一度は掲載を夢見る INFORMS Management Science誌に、7年がかりで5回の書き換えを行った仲川らの原稿が採択された。このジャーナルは、全体としてジャーナルランクA+で評価が最も高いジャーナルであるが、分野により評価が若干異なる。最適化の分野では一貫して最も評価の高い位置にあり、日本人の論文の掲載は今回が45年ぶりで2度目である。今回採択された論文では、仲川が独自開発したエントロピーを用いた問題の困難度測定法と、この測定法を利用した問題分割法を提案し、IBMのCPLEX、Baron, Bonmin, LindoGlobal, Couenne等の世界的に著名なソルバーと比較し、仲川の解法が顕著に優れていることを示した。この論文作成には多くの時間を費やしたが、このエントロピーを用いた最適化法は仲川の研究全般の基礎に当たる研究で、この掲載を契機として今後の研究を加速度的に発展させられるものと期待される。 リスクを考慮した意思決定への応用に関しては、関西大学経済政治研究所の『研究双書』および『セミナー年報2012』において研究成果を公表した。これらの論文では、個人、企業、社会におけるリスク分散とそれを支援する離散最適化の技術について議論した。また、投資とギャンブルの違いについて明確にすることで、企業と社会における投資リスクについてリスク管理を非線形ナップザック問題の応用として定式化した。多目的最適化に関しては、4目的以上の場合に対する研究成果も関西大学総合情報学部紀要「情報研究」において公表し、意思決定者が希望する領域のパレート最適解を効率的に求める技術を、消費者側の利害を考慮した生産者側のリスク管理システムの構築に応用するための理論的準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一万人以上の会員数を抱え、オペレーションズ・リサーチとマネージメントサイエンスに関する学会としては世界最大のINFORMS (The Institute for Operations Research and the Management Sciences) において、この学会を代表する論文誌 Management Science に仲川らの論文が採択されたことは顕著な成果である。これは、仲川が35年間かけて独自に研究開発した最適化理論とその理論に基づいた解法ソフトウエアが世界で高い評価を受けたことになり、今後の研究開発及び仲川が開発した解法ソフトウエアの実用化にも大きな影響を与えるものと期待される。この最適化理論と解法ソフトウエアの社会科学等への応用や実用化も当初の予定どおりに着実に進展している。また、海外の共同研究者との共同研究も今回の成果に見られるように、若干の困難はあるものの全般的には順調に進んでいる。テネシー大学Edirisinghe教授とは、今回のManagement Science以外に多目的最適化の関係でOperations Research誌への投稿を目指している。ミシシッピー大学Rego教授とは今回のManagement Science以外に仲川の離散最適化法を非凸二次計画に応用した研究で再度Management Science を目指している。カンタベリー大学 ジェームス上級講師とは、仲川の研究全般で協力していただいている。
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Strategy for Future Research Activity |
離散最適化の理論的な研究とソフトウエアの改良に引き続き取り組むとともに、非凸二次計画問題の解法開発にも取り組む。非凸二次計画問題の交差項を一次近似すると分離形離散最適化問題になる。この時の近似誤差は標的問題として近傍の実行解を列挙することで軽減できることが分かっている。また、多目的最適化に関連した研究を推進する。実社会での意思決定においては、互いに競合する複数の評価基準(利益とリスク等)を考慮せざるを得ない局面が多い。このような場合は、本来単一目的の最適化よりも多目的最適化問題として取り扱う必要がある。多目的最適化は、経済学のゲーム理論や金融工学、さらには社会科学全般や工学等広範囲の応用分野があり、重要な研究分野である。しかし、厳密にパレート最適解を求めようとする取り組みは極めて少ない。仲川が開発したHOPEを発展させ、多目的離散最適化において厳密解法の実用化を現実のものとするための研究を推進する。HOPEは、既に500変数規模のパレート最適解を厳密に列挙することや、複数制約の問題や非線形の問題も厳密にパレート最適解を見つけることに成功している(電子情報通信学会論文誌、2011)。 リスクを考慮した意思決定への応用 に関しては、意思決定者が希望する領域内のパレート最適解を、効率的に求めることができる多目的最適化技術をリスク管理システムに応用を目指す。金融工学、統計学、経営学への応用に関しては、インデックスプラスアルファ作成技術の実用化を目指す。また、離散最適化技法の経営学分野への応用を推進する。マーケティング分野への応用に関しては、標的解法を核技術である離散最適化技法のマーケティング分野への応用を推進し、実用化の可能性についても探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外の研究者との共同研究を行っている。テネシー大学Edirisinghe教授とは、今回のManagement Science以外に多目的最適化の関係の研究でOperations Research誌への投稿を目指している。ミシシッピー大学Rego教授とは今回のManagement Science以外に仲川の離散最適化法を非凸二次計画に応用した研究で再度Management Science を目指している。カンタベリー大学 ジェームス上級講師とは、仲川の研究全般で協力していただいている。また、台湾中山大学 祭教授(Management Scienceに掲載経験のある研究者)との新たな共同研究(多目的最適化の社会科学への応用)も準備している。これらの共同研究を成功させるために、仲川が海外へ行くかあるいは海外の研究者を招へいすることでスムーズな共同研究の推進をはかる。その際の旅費や国際会議等への発表や参加のための旅費として主として研究費を使用する。昨年度途中にEdirisinghe教授を招へいすることが決まったので、その旅費の不足分を補うために昨年度の研究費を繰り越した。よって繰越金額は上記の招へい者旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)