2013 Fiscal Year Research-status Report
クラウドソフトウェアのための関心事分離に基づくプロダクトライン構築方式
Project/Area Number |
24500049
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
野呂 昌満 南山大学, 情報理工学部, 教授 (40189452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沢田 篤史 南山大学, 情報理工学部, 教授 (40273841)
張 漢明 南山大学, 情報理工学部, 准教授 (90329756)
加藤 大地 南山大学, 情報理工学部, 助教 (80631861)
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Keywords | ソフトウェアアーキテクチャ / アスペクト指向技術 / プロダクトライン / クラウド / SOA / モデル検査 |
Research Abstract |
クラウドソフトウェアのためのプロダクトライン構築方法論を具体化するにあたり,SOAアプリケーションプラットフォームのプロダクトラインを構成した.SOAアプリケーションプラットフォームは,メッセージ変換やサービスレジストリなどのSOAシステムを動作させるための基盤となる機能を提供する.本研究では,特定製品のミドルウェアや特定技術に依存しない,アプリケーションプラットフォームの開発環境の基盤を確立した.研究成果として,「横断的関心事の抽出とプロダクトラインアーキテクチャ」「変動点の分析と仕様モデルの定義」「仕様モデルとアーキテクチャの対応付け」「フレームワークの定義」があげられる.また,網羅性と同時性に着目した検証手法を提案した. 「横断的関心事の抽出とプロダクトラインアーキテクチャ」では,SOAシステムにおける標準アーキテクチャと品質に関する国際基準として,Viwes & Beyond,S3 Architecture および ISO09126 を用いて横断的関心事を分析して,非機能特性と機能特性を考慮したプロダクトラインアーキテクチャを構築した.「変動点の分析と仕様モデルの定義」では,Bachmann らによるバリエーションポイントの分類に従って整理し,変動点と不動点が支配的分割に大域的にまたがる横断的な関心事であることを確認した.「仕様モデルとアーキテクチャの対応付け」では,仕様モデルの変動点としての関心事の候補値とアーキテクチャ上のコンポーネントの対応関係を整理し,仕様モデルとアーキテクチャのコンポーネントが多対多の関係であることを確認した.「フレームワークの定義」では,ホットスポットにミドルウェアを適合させるための再利用コンポーネント群を用意した.特定のホットスポットに対して統一仕様を定義して再利用コンポーネントと対応づけることにより,ミドルウェアの差異を吸収した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,クラウド上で稼働するソフトウェアのプロダクトラインを構築するための基盤となる,アプリケーションプラットフォームのプロダクトラインを構築した.本研究の目的を達成するためのプロダクトライン化の技術的な課題として「SOAシステムにおける横断的関心事の整理」「適切な視点と粒度の変動点と不動点の識別」「モデル間の追跡性」「ミドルウェア間の差異を吸収するメカニズム」が挙げられる.アプリケーションプラットフォームのプロダクトライン化を通して,上記の課題を解決するための基盤技術を確立した. ソフトウェアプロダクトラインを構築するためには,ソフトウェアプロダクトに対する可変性分析と追跡性管理が重要となる.すなわち,ソフトウェアを構成する部品を可変部,不変部に分類し,それらの要求仕様との間の意味関係を明確にする必要がある.今年度開発したアスペクト指向技術を適用した横断的関心事の分析法と,機能特性と非機能特性を考慮したプロダクトラインアーキテクチャの構築法が可変性分析と追跡性管理の基盤技術として有効であることを確認した.仕様上のモデルのコンポーネントとアーキテクチャ上のコンポーネントを分離して対応関係を明確にすることにより,特定技術に依存しないソフトウェアの構築技術を提示した.特定技術の差異を吸収してアーキテクチャに適合するためのフレームワークが,コア資産の追跡性に有効であることを確認した. また,部品単体での振る舞い,システム・サブシステムとして統合した場合の振る舞いについてその正当性をあらかじめ保証する必要がある.アーキテクチャの系統的な振る舞い検証を実現するために,CSP を用いて,網羅性と同時性を考慮した検証法を提示することにより,アーキテクチャ検証の基盤を確立した.
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Strategy for Future Research Activity |
SOAシステムのメッセージ機能やサービスレジストリなどの, SOA システムを動作させる基盤となる機能を提供するアプリケーションプラットフォームのプロダクトライン化を通して,ミドルウェアの差異を吸収し,特定の技術や製品から独立した SOA システムの構築を行った.様々な標準を組み合わせることにより,コア資産としてのアスペクト指向アーキテクチャと仕様モデル,およびこれらの関係を整理した.これにより,プロダクトに対する要求を入力としてプロダクトアーキテクチャを生成するための技術が明らかになった. 今後は,アーキテクチャ記述を柱にコア資産の整備を行う.プロダクトライン環境内のコア資産の構成要素として,支援技術を実現したソフトウェアツールと互いに追跡性を確保した仕様モデルとプロダクトラインアーキテクチャに着目する.これまでに定義したソフトウェアアーキテクチャと仕様モデルをオブジェクト指向の枠組みでモデル化する.オブジェクトモデリングにおいては操作がデータ内にカプセル化されることから,プロセスを内包したプロダクトモデルを構築できる.この仕組みを利用し,相互追跡プロセスをメタ操作として内包する仕様モデルとソフトウェアアーキテクチャの実現であるプロダクトモデルを設計・実現する.この方式で,クラウド上で稼働する SOA に基づくソフトウェアのためのアプリケーションプラットフォームをプロダクトライン化する.これにより,クラウド上のマルチプラットフォームで稼働するソフトウェアの動作基盤とする. 以上の仕組みを用いることで,クラウド環境で異なる実行時環境を必要とする複数サービスの連携が可能なことを実証する.比較的大きな規模のエンタープライズ系ソフトウェアを上述の方法で試作するアプリケーションプラットフォーム上で実装することで,提案する方法の妥当性ならびに実用性を実証する.
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